記者からの質問への答え方は記事に沿った「ニューススタイル」で

share

【前回の記事】「日大選手の会見に学ぶ記者会見までの準備」はこちら

危機管理&メディア対応 新・ハンドブック』の著者で、国内外でメディアトレーニングの講師を務めてきた山口明雄氏が、初心者のための「危機管理広報のいろは」を解説する。

Q.
記者会見に向けた「準備」については前号までで理解しました。いざ、会見本番。大勢の記者やカメラを前に、どんな答え方をすると良いのでしょうか?

A.
話の中に「見出し」や「リード」を盛り込んで。特にリードの5W1Hは記事の核になる。

私のおすすめは「ニューススタイル」で話すことです。新聞記事やテレビニュースの典型的な文章構成の形式を話し方に応用するのです。

ほとんどのニュース記事は「見出し」「リード」「本文」の3つの部分で構成されています。「見出し」は、ひと言で記事の要点を述べるもの。時には複数の見出しがつきますが、それらをまとめて読むと、要点が明確に示されます。

例えば、2017年12月27日付日本経済新聞朝刊のJIS法改正に関する記事の見出しは「JIS法違反罰金100倍」「不正続発受け最大1 億円・管理不備も対象に・経産省方針」の2つ。これを文章としてまとめると、「経済産業省は不正続発を受け、JIS法違反の罰金を100倍に引き上げ、管理不備も罰則対象に加える方針」となります。

メディアに向かって話す時、何よりも大切なのは、話の「見出し」をつくって、そこから話し始めることです。これが読者・視聴者にとって最も分かりやすい話し方です。

5W1Hへの回答は網羅する

次に「リード」に当たる部分を話します。リードとは記事の最初の段落で、記事の内容を150~200字でまとめたものです。この部分では5 W1Hと呼ばれる6 つの疑問を網羅していることが多いのです。記者会見でもこのリードを模した冒頭スピーチをつくるといいでしょう。

以下は先の記事のリードに入っている要素をまとめたものです。5W1Hがすべて入っています。

最近、製造業の品質データ改ざんが相次いだ【WHEN=いつ】。不正防止強化のために【WHY=何のために】/工業標準化法(JIS法)の見直しが進んでいる【WHAT=何をする】。経済産業省【WHO=誰】は違反企業に科す罰金を今の100倍にあたる最大1億円に引き上げ【WHAT=何をする】/企業の管理体制の不備も罰則対象に加える【WHAT=何をする】。企業の意識改革を促し【HOW=どうやって】/日本【WHERE=どこ】のものづくりの信頼回復につなげる【WHAT=何をする】。

このように、5W1Hすべての疑問への回答を盛り込むことで、記者もニュースとして最低限必要な情報を得ることができます。つまり、冒頭スピーチの後の質疑応答では質問が少なくなるのです。

なお、記事本文は、「重要度順」で執筆されます。何が一番重要かというと、通常は【WHAT=何をする】の回答、すなわち「結論」です。次は【WHY=何のために】の回答、つまり「理由」です。その他の情報要素は記者の考え方次第で順序が決まります。

質疑応答でもニューススタイル

それでは、記者会見の質疑応答で記者の質問に答える際は、どのようにニューススタイルを盛り込めばよいのでしょうか。先の記事内容に関する記者会見が開かれたと仮定すると、以下のようになります。

記者:なぜ経済産業省は今、JIS法を改正し、罰則の強化を検討しているのですか?

回答者:日本の製造業の品質保証体制を強化するためです。

このケースでは、「なぜ?」と聞かれたので、「なぜ?」への回答が話の「見出し」となります。冒頭スピーチで5 W1 Hのすべてを話していた場合でも、ここで5 W1 Hの残りの部分をもう一度話すことは重要です。動画メディアの場合、この部分を切り取るだけで完結した回答を放送できるからです。また、2問目以降の質問にはキーメッセージを盛り込むことができます。記者:具体的には、どのような罰則強化を検討しているのですか?

回答者:違反企業に科す罰金を今の100倍の最大1億円に引き上げ、企業の管理体制の不備も罰則対象に加えることを検討しています(話の見出し)。一連の不正発覚事案は、企業の競争力を弱め、経済活力を損ねかねません。それだけではなく、対外経済関係にも悪影響を及ぼす可能性があります(キーメッセージ)。

記者会見が決まってからこれらの回答を慌ててつくるのは難しいもの。普段から自社が抱えるリスクに合わせて記者会見の場面を想定し、「見出し」や「リード」を考えるトレーニングをしてみましょう。

山口明雄(やまぐち・あきお)
アクセスイースト 代表取締役

東京外国語大学を卒業後、NHKに入局。日本マクドネル・ダグラスで広報・宣伝マネージャーを務めたのを皮切りに、ヒル・アンド・ノウルトン・ジャパンで日本支社長、オズマピーアールで取締役副社長を務める。現在はアクセスイーストで国内外の企業に広報サービスを提供している。2018年2月、『危機管理&メディア対応 新・ハンドブック』(宣伝会議刊)発売。

 

Follow Us