電通の働き方改革は、どこまで進んでいる? — 社員のバイタリティを高めるオフィスの取り組みに迫る

効率化の推進で失われかねない「クリエーティビティの発揮」という課題にどう向き合うのか?

「現在、社内のあらゆる部門で労働環境改革のプロジェクトが実験的に行われている。改革計画には、社員から集まった約2万5千の意見や提案、アイデアをもとに社外の専門家の意見も取り入れ、実現可能性や期待される効果に鑑み、数十の施策を盛り込んだ。社内では多くのプロジェクトを推進しており、これまでに50以上の施策を実行に移してきた」と話すのは、電通 コーポレートコミュニケーション局 局長の河南周作氏だ。

そうした様々な施策・実験のひとつが、バイタリティ・デザイン・プロジェクトから生まれた第3CRプランニング局のリニューアルで、「社員一人ひとりがいきいきと前向きに仕事や生活ができることを目指した」(河南氏)ものだ。業務効率化を基軸とする働き方改革と、クリエーティビティを発揮すべき仕事の業務内容、あるいはこれまでの働き方の間に、どのように融合点を見出せるのか。同社の労働環境改革が始まった頃から、業界内で注目をされてきたポイントだ。

このリニューアルを現場で統括したバイタリティ・デザイン・プロジェクトチームの同局シニア・プランニング・マネージャーの日比昭道氏は、前述の問いに対して「勤務時間の短縮や、作業効率優先の働き方によって、時間の余裕、心の余裕がなくなり、人と人との連携が希薄化し、漠然とした閉塞感や孤独感を抱く恐れはあるとチームで議論していた」と話す。

そこで、第3CRプランニング局を実験の場に選び、「オフィス実験」を実行。今年7月末、そのリニューアルが完了した。テーマは「バイタリティを高めるオフィスを創る」こと。日比氏によると、具体的には「①人と人とのリレーションが高まり、安心感を得られる場、②心と体が健康でいられる場、③アイデアを生み出せる場(インプット、創発、集中)、④電通で働くことへの誇りとモチベーションが高まる場、⑤ポジティブなエネルギーが生み出される場、の5つの実現を目指した」という。

「コンセプトをつくるブレストには、建築家の谷尻誠さんの他、医学博士の石川善樹さん、アスリートの為末大さんにも参加をしてもらい、建築・医学・モチベーションの観点から、目指すべきワークプレイスの理想像を固めていった」(日比氏)。

改装工事はゴールデンウイーク期間から始まった。また、これに合わせて局内30名ほどの社員が新しいオフィス空間づくりに参画した。「グリーンを選ぶ担当、『集中の間』の使い方を考える担当、局内コミュニケーションを行う担当、お菓子を選ぶ担当など・・・。ひとつひとつはそこまで大きな役割ではないかもしれないが、皆にオフィスづくりの参加意識をもっていただきたいと思って実施した」(日比氏)という。

「センタープレイス」には冷蔵庫やアイランドキッチンも設置。食を求心力に、人々が集まりナレッジをシェアできる環境を目指した。

コミュニケーションの活性化と合わせて、クリエーティビティを発揮するには集中できる環境が重要と考え、「集中の間」も設置。照明、音、椅子にこだわった空間。全体設計としてオフィスフロア内に静から動へのグラデーションをつくっている。

執務フロア横には、簡単な「カフェカウンター」を設置。ドリンクや菓子類を置いて、ブレイクタイムに局員同士がコミュニケーションを図れる空間を目指した。社員の健康増進効果を考え、あえてごみを捨てるために歩かなければいけない環境になるよう、ごみ箱の位置にも工夫がある。

日比氏は「社員のバイタリティを高めるオフィスの在り方は、時代の変遷とともに変わるべきもの。だから、これからも実験は行い続けるべきだと考えている」と、現在が完成形ではないとの考えを示す。

「集中の間は、集中して仕事ができるので、生産性と創造性が高まる。カフェコーナーやセンタープレイスでは人が自然と集まり、会話が始まって風通しが良くなったという声も上がっている。コミュニケーションが活性化したと感じている社員の割合が高くなってきたことは大きな収穫。センターでは、ナレッジシェアを始め、様々なイベントを実施しており、オフィスに活気が生まれてきたと感じている。実験結果は、現在取りまとめ中だが、課題があれば見直しつつ、全社のワークプレイスの計画に対して、新しい示唆を提供できればと思っている。」(日比氏)

河南氏も「改革にはハードとソフト両面の施策が必要で、それが両輪となって機能することが大切。様々な実験を行いながら、効果が認められる施策は維持・強化し、そうでないものについては廃止するなど、試行錯誤しながら改革を進めている。実態が伴う施策は社内コミュニケーションの活性化にもつながっており、改革が良い方向に進んでいることを実感している」と語った。

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