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【高崎卓馬のクリエイティブ・クリニック】アイデアを手繰り寄せる技術

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【前回】
【高崎卓馬のクリエイティブ・クリニック】考え続ければ、企画はかならず面白くなる

時代の流れと共に広告手法は変化し、WEB動画やデジタルサイネージなど新しい表現方法が確立されていっています。そんな中、時代の急激な変化に対応できず、何が面白いものなのかわからなくなってしまったクリエイターたちが増加。高崎氏の単著『面白くならない企画はひとつもない 高崎卓馬のクリエイティブ・クリニック』では、そんな悩みを抱えた若手クリエイター、宣伝担当者たちの企画を丁寧に分析し、面白い企画の作り方、正しい悩み方などを解説しています。ここでは発刊を記念して行われた講演会を三回にわけてお届けします。第2回目の今回は、より具体的な企画のアプローチについて語っています。

カラダがいい企画に反応する習慣をつくる

僕は天才ではないので、感性にまかせて面白いものをつくれる自信がまったくありません。だからこの世界でいちばんこのことについて自分が考えた、という状態まで考えつづけるしかありませんでした。結果的にそこまで考え抜くと、どこか変わったものにはなるんです。クライアントも喜ぶ、タレントも喜ぶ、僕も嬉しい、でもなんか普通じゃない。結果的に他に似ていないオリジナリティあるものが生まれる。

面白くならない企画はひとつもない 高崎卓馬のクリエイティブ・クリニック 書影

「面白くならない企画はひとつもない 高崎卓馬のクリエイティブ・クリニック」

プロセスでいうと、まず紙に書きます。メモではなくある程度完成のイメージがつかめるものです。CMなら絵コンテです。そして他人の企画を見るように見つめて、その長所と短所を考えます。設定がうるさいなとか、コピーが弱いな、とか、印象が薄いな、とか。その次にその短所を打ち消す企画を考えます。そしてそれをまた紙にまとめる。それからその長所短所を考えて、短所を打ち消していく。

これを延々とくりかえします。若い頃はなかなか正解にたどり着けずに延々とこのループのなかにいました。でもある瞬間、いままで自分が作ってきたハードルのすべてをいっぺんに乗り越える企画が立ち現れるんです。これがかなりの快感を伴う。悩めば悩むほどそれは大きい。

この快感がとても重要なんです。このいい企画を思いついたときの身体の反応を何度も自分に覚えさせて、ひとつの尺度にしてしまえばいいのです。

逆にいうと、これがないときはまだそれほどの企画ではないと思うことにする。短い時間だけど腕に鳥肌がたつ。それは今、僕のなかのひとつの目安になっています。自分がコピーを思いついたとき、いいキャンペーンの骨格を思いついたとき、面白い取り組みを誰に相談したらいいかイメージが湧いたとき、会議で後輩がつぶやいた企画の芽が素晴らしかったとき、鳥肌がシャツのなかでたちます。

企画が思いつく瞬間を身体が覚えると、逆にその感覚をつくりにいけば企画が生まれやすくなったりもします。ここで考えるのをやめたほうがいい。今、苦しいけど全部やりきったほうがいい。あの喫茶店にいくと思いつきそうだ。ここでこんなに考えが進まないということはもっと手前で何か間違いがあるに違いない。そんな風に考えたりもしています。

僕は、脳は筋肉だと思っているので、動かしていると、可動域が広がるんですね。何を考えればいいか、を明確にしてあげて脳に覆いかぶさる得体のしれないストレスを排除してあげるとよく動くようになります。

次ページ 「アイデアはすでにそこにある」へ続く