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【高崎卓馬のクリエイティブ・クリニック】アイデアを手繰り寄せる技術

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アイデアはすでにそこにある

かなり昔ですが、「もしもサボテンにインテルが入ったら」というCMを作りました。このCMを作る時にどんな風に考えたのかをお話します。

インテルはプロセッサです。そのへんのお店には売っていません。だからどうしても印象の設計が難しい。存在価値を伝えたいというオリエン(願い)でしたから、僕はインテルを「知性」と置き換えることにしました。それがなければパソコンはただの箱です。そういう要素を因数分解して表現として再構築してつくることにしました。

そこから生まれたフレームが「もしも〇〇にインテルが入ったら」というものです。それからずっとこのキャンペーンが続く数年のあいだ、僕は目に入るあらゆるものにインテルをいれる空想をしまくりました。あれに入ったらどんな変化を起こすだろう。そしてその変化は想像以上のものでなくてはいけない。私は知的です、と自分で言ってしまうのと、知的な存在だなあ、と思われるのとでは天と地ほど違います。後者になるには、絶対「まさかそうなるとは思わなかったw」という感想を目指すべきです。

そうやって自分が思いつくべきものの輪郭を確かめていきました。その状態で答えがなかなか見つからず悶々と過ごしていたある日、喫茶店にあるサボテンに気がつきました。このサボテンにインテルが入ったら膨らみそうだな、膨らんだら棘が飛びそうだな、棘が飛んで誰かに刺さると面白いかもしれないと、バババっと思いつきました。棘が誰に刺さると面白いかな。サボテンが強盗を撃退しても、みんな笑わないだろうな。棘が刺さったら痛いだろうな。「あ、痛い!」って、「会いたい」って聞こえるなと、変なことを思いついたのです。

そうやってできたのが、好きな女の子に電話をしている男の子がなかなか「会いたい」と言えないので、インテルが入ったサボテンが棘を飛し「あ、痛い!(会いたい!)」と言わせるストーリーです。

これはつまり自分が何を思いつきたいのかを明確にできていた、というだけの話だったりします。そうでなければこんな荒唐無稽で複雑なものを思いつくことは僕にはできません。アイデアはすでに目の前にあるのです。それに気がつけるかどうかなのです。

アイデアを発見するコツを身につけるのに有効なおすすめの方法があります。それは「広告警察」と僕たちが呼んでいる遊びです。普通に生きていて目にする中吊り広告、テレビCM、パッケージ、本の装丁などを「なぜこの表現はこうなっているのか?」と考えて「自分ならこうするな」と頭のなかで修正していくのです。そしてダメな理由や直すとよくなる方法をどんどん言語化する。

コツは面白くて素敵なものではなく、なんだかなあと思うものを標的にすることです。ちょっと上から目線でやるのです。こうして自分のなかで表現に関する言語を増やしていくと、それはのちに自分の表現の引き出しにもなります。

次ページ 「海外CMは方法論の宝庫」へ続く