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8割の消費者が「モノよりも体験にお金を使いたい」 — モメンタム「We Know Experiences 2.0」レポート

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消費者はブランドにポジティブな刺激と意味を求めている

モメンタム ジャパンは、モメンタム ワールドワイドが実施している「We Know Experiences 2.0」の日本版を発表した。同レポートは日本を含む世界3200人の消費者を対象に、消費者の行動を掘り下げ、消費者がブランドの何を重視しているかを解明することを目的に行われているもの。10月10日には、Momentum Worldwide Chairman/CEOのChris Weil(クリス・ワイル)氏も登壇しての調査結果報告会が開催された。

<主な調査結果>
・76%の回答者が「モノ」よりも「体験」にお金を使いたいと思っている。
・86%の回答者がブランドに、気分を良くしたり、気分を上げたりしてくれることを望んでいる。
・83%の回答者が、ブランドにストレスや不安感を緩和してくれることを望んでいる。
・70%の回答者が、今までに比べ、環境問題や社会問題に関わるようになっている。

報告会に登壇したクリス・ワイル氏は冒頭「私たちは、グローバル・エクスペリエンス・アドバタイジングエージェンシーを標榜してきたが、消費者の購入意思決定に際してエクスペリエンスが重要であるという認識が広まってきている。

CMOの人たちもエクスペリエンスの重要性を認識しているし、昨今ではエクスペリエンスが戦術のひとつから、マーケティングプランの中核を担う存在にまで重要度を増していると感じている。いま、CMOにとってマーケティングプランの中心はエクスペリエンスになっている」と話した。

さらに同氏は「エクスペリエンス・エコノミー」という新しい世界がつくられているとし、その要素として以下の6つを提示した。

・ユーザーセントリック
・常にパーソナライズ
・カルチャーとの連動
・思い出を創出
・オンラインオフラインで共有できる
・評価測定が可能

これに関連して「これまで消費者にとっての思い出を創出するようなエクスペリエンス施策はコストとリーチの観点から、見合わないと思われていた。しかし、体験がシェアできる環境になったことで、リーチのスケールが広がっている」とも説明した。

さらに消費者側の変化にも言及。クリス・ワイル氏は「消費者はより大きな役割を果たしてくれることをブランドに対して期待している」と話した。

2012年調査結果との比較。設問内容は同一ではないが、消費者がブランドに対してより多くのことを期待するようになっていることがわかる。

「これまでのブランドのコミュニケーションではメッセージを開発し、それを一方通行のコミュニケーションで投げかけるということを行ってきた。それが今では、消費者はブランドが『何を言うか』よりも『何をしているか?』、つまりは言葉ではなく行動を注視するようになってきており、それに合わせてブランドのコミュニケーションの在り方も変わりつつある。

ブランドの行動を感じてもらえるようなモーメントをつくらなければならないし、そこではエクスペリエンスが重要になってくる」(クリス・ワイル氏)。

報告会で発表された調査の一部。「政治、経済などの環境が不安定なこともあって、消費者は孤独を感じている。その中で、ブランドに新しい役割を求めている。自分にとって役立つ、有用であることはもちろん大事であるが、特に若年層はエモーショナルなつながりをブランドに対して求めていることがわかった」という。

モメンタム ジャパンの柳瀬健司氏(エクスペリエンス戦略局 ヘッド オブ インサイト&アナリティクス)からは、レポートの中でも特に日本に絞り込んだ調査結果の発表があった。

柳瀬氏は「モノからコトへの変化についてはすでにあらゆるところで言われているが、調べてみると2006年頃から『コト消費』という言葉が使われ始めていることが分かる。それが、ここ数年で体験へのシフトが加速度的に高まっている。日本でもグローバルと同様の傾向がみられる」と話した。

柳瀬氏のプレゼンテーションで紹介された調査結果。日本の調査対象者に絞り込んで分析した結果。日本でも消費者が体験に価値を見出していること、さらに特に若年層(写真内スライドの中央は34歳以下の結果)でその傾向が強いことが分かったという。

また他の国と比べて日本人は「新しいものが好き」という特性が強い一方、「冒険心」や「勇気」といった特性は弱い傾向があったという。

柳瀬氏は「日本人には新しいものが好きだけれど、いま一歩を踏み出す勇気がないという2面性がみられる。日本人の消費者の行動を後押しする役割として、テクノロジーの活用に期待が持てるし、実際『テクノロジーが新しい興味や機会に導いてくれる』と回答した人が74%いた。日本の消費者を対象にしたエクスペリエンスづくりでは、テクノロジーの活用が重要になってくるのではないか」と見解を提示した。

日本人には「新しいものが好き」な一方「冒険心は弱い」という2面性があることが分かったという。

元気をくれる、ストレスを取り除く…消費者が体験に求めること

報告会では終始、「ブランドメッセージをコントロールするのではなく、生活者の体験をコントロールする方向へとマーケティングがシフトしてきている」との論が展開された。それに伴い、CMOの役割も広告・コミュニケーションのマネジメントから体験全体のマネジメントへと、その範囲が広がっているという。

では、消費者が体験を重視するといった際、具体的にどのような体験を求めているのか。前述の柳瀬氏は、日本人が体験に求めることのトップ3を紹介。そのトップ3とは「元気をくれる(85.8%)」「ストレスを取り除いてくれる(83.4%)」「新しい可能性を発見する(77%)だったという。

プレゼンの最後に柳瀬氏は「ブランド体験の本質とはHumanityにあると思う。それでは、どうしたら体験に人間味を持たせることができるのか。人が対応するという方法論もあるが、テクノロジーを使うなど、人が対応する以外の体験の方法論もあるはず」と話した。

またモメンタム ワールドワイドのエレナ・クラウ氏(チーフ・ストラテジー・オフィサー)は「マーケターが一貫したブランドの大義・意義を消費者に伝えていくためには、エクスペリエンスをシステムとして考えなければいけない。マーケターはこれまで広告を中心に戦略を考えてきたので、メディアのセグメントで消費者を分類しようとしてきたが、一貫したエクスペリエンスづくりにおいては、このセグメントだけでは通用しない」と話し、同社がまとめた「エクスペリエンスの7つのアーキタイプ」を紹介。

「エクスペリエンスをつくる上では“何”を“誰”に“どのチャネル”で、さらに“どうやって”提供するかを考える必要がある。7つのアーキタイプを用いると、どのようなコンテンツをつくり、体験を提供すればよいかも見えてくる」と説明した。

さらに「エクスペリエンスは人がつくるものであるけれど、一貫性が大事。だからこそ、システムとして設計していくことが必要」と話した。