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【週刊】中国から配信! 新型コロナ、マーケティングへの影響(3月3日更新)

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【関連記事】「中国から配信! 新型コロナ、マーケティングへの影響(2月25日更新)」はこちら

刻一刻と変わる、新型コロナウイルスにかかわる社会状況。
神谷製作所の神谷準一氏が、中国・上海にある同社の支社からの情報をもとに週刊で現在の新型コロナウイルスに関する情報環境、さらに日本でマーケティング実務に携わる人に役立つよう、その情報を読み解いてレポートします。

クリエイティブPRを手掛ける神谷製作所の上海支社「GoodNewsFactory Shanghai Co., Ltd.」では、新型コロナウイルスによって大きく中国の生活が変わる中、「中国における生活者の行動・習慣・価値観」の変化から、新しく生まれる社会のニーズを捉え、それに応えることが社会貢献のひとつであると考えています。

また国内で新型コロナウイルスによる感染者が増え続ける中で、「中国の変化や対策が日本においても役立つのではないか。いち早く中国での先例を、経済的な打撃を受けつつある日本のマーケティングでも役立ててもらえたら」という想いも込め、『社会サキヨミレポート:新型肺炎に関する中国国内動向とマーケティング活動への示唆』を作成し、 2020年2月3日より中国に所在する日系企業や、日本企業のマーケティング部に対し定期的にレポート配信を行っています。

本レポートは、中国における情報環境や市場動向・生活者ニーズに精通する「GoodNewsFactory Shanghai」のスタッフが現地で収集した情報をもとに、過去の類似事例のスタディから、1カ月先、2カ月先、さらには2020年通年での「生活の景色の変化」を予測したものです。本記事では、このレポートのサマリーをお届けします。

【KEY TOPICS】

〇 全人代、「3月開催」固定化の1985年以来初の延期(2/24)
〇 全国的に感染減少、6の省で緊急レベル引き下げ(2/21~24)
〇 国務院が健康状態/移動履歴でのリスク分類を通達(2/25)
〇 観光名所のうち低リスク施設の再開作業開始を通達(2/25)
〇 新規感染者数、中国以外が国内を上回る WHO発表(2/26)
〇 北京市・蘇州市など、日韓からの入国者隔離方針(2/26~27)
〇 地下鉄乗車履歴把握、上海市でも開始(2/28)
〇 6月上旬の「高考」は延期しないことを教育部が決定(2/28)

オンラインスクールの様子。教師と対話しながら授業を受けている。

市内のショッピングモールの入り口。 体温測定が義務付けられている。

徐々に人の往来は増加。 スーパーも欠品は減少の傾向。

地下鉄車両内に貼られたQRコード。乗車履歴(時間・車両)の記録が推奨されている。

地下鉄の入り口に設置されている「測温区」。「健康」が通行証となっている。

某ファーストフードチェーン店の様子。この店舗では「無人注文」だけが可能になっている。

左記の写真と同店舗では、消毒液と共に店舗APPでの「無接触注文」を推奨。
※全て上海市で2月29日に撮影(提供:GoodNewsFactory Shanghai)

〇中国各地で「緊急事態レベル」引き下げの動き。
感染「数」の関心は「日本」「韓国」「イタリア」に移り始める。

複数の省で感染者の新規発生数が減少し、「ピークを越した」という認識もされ始めた。一方で日本・韓国(+イタリア)での感染者増の報道が増えており、入国者に対しての14日間隔離方針も出されている。特に日本は「多くの支援をしてくれた国」として関心が高い。

〇リスク評価は「エリア単位」から「ヒト単位」に。
スマホ社会のテクノロジーを活用した「Health Scoring」が始まる。

2月17日の国務院通達では、リスクを地域単位で「高・中・低」と分けていたが、25日の通達では、移動履歴や健康状態で人ごとに分類・対処するように指示。主要都市で導入されている健康管理アプリで「健康証明」のQRコードを生活者に発行する(緑=安全)、地下鉄の乗車車両の記録を促すなど、データに基づいたリスク対策が進み始めた。

〇各領域/業種で「再開/正式稼働に向けたガイドライン」が策定。
国内動向の焦点は「経済活動/日常生活の正常化」の具体策となっている。
上海市での「オンラインスクール」への民間動画サイト活用も話題に。

「低リスク」国内観光地の再開指示、自動車関連業種への稼働支援、映画館の「隔席」着席での再開など、各業種の再開に向けて具体的な指示がなされ始めた。上海市が指定した8つのオンラインスクールプラットフォームに「Bilibili」が入っていることも関心を集めた。

【中期的な中国の意識変化・マーケティング予測】

〇「政府公認」でのオンラインスクールが一気に広がる兆し。
収束後は通常モードに戻るとはいえ、一部は「習慣」として残存する可能性。
その場合、「教育のEC化」が進展することも考えられる。

これまでは各学校単位で検討・実施されていたオンラインスクールが、政府主導での「全面的な対策」として進む見込み。「4月末」と言われ始めた「収束」後は、通常通りに学校に通うこととなっていくが、「オンラインで知識や技能を学ぶ」習慣・ニーズ、また、「オンラインで教える」ことに慣れた教師たちは、一部残存し、ビジネスが盛んになっていくことも予想される。

その場合、教師や講義内容が「評価」されるようになり、CRMのように「受講者の満足度をコントロールする」ことを目指すサービスや、「網紅老師」となってブランド/商品をプレースメントするようなビジネスも生まれていく予測も可能。

【Public Relations視点で注目の話題】

〇全人代の延期が正式発表、但し話題は「野生動物の売買禁止」に。

2月24日に北京で開催された「十三届全国人大常委会第十六次会議」にて、全人代の延期が正式に発表。これは、3月開催が固定化された1985年以来初の延期となる。一方で、この「延期」はすでに予見されていたため、同時に発表の「野生動物の売買禁止」が注目された。高級官僚などが裏ルートで食べているものと認識されており、ネットで賛成の声が相次ぐ。

〇「Bilibili」を上海市が公式オンラインスクールに認定、
3月2日から小中高生向けに講義開始。

2月26日、上海市が学校向けのオンラインスクールを3月2日から「全面的に開始」すると発表。8つのプラットフォームを選定しているが、その中でACG(アニメ、コミック、ゲーム)動画サイトと認識されている「Bilibili」も選定されていることが話題に。時間割も公開されており、毎朝の「国旗掲揚/国歌斉唱」も含まれている。

〇1月の天津帰還クルーズ船での初期対応が再注目。
「政府の偉大さを示す」と称賛の声。

1月に天津で起きていた「クルーズ船での新型肺炎感染懸念(湖北省出身者約100名を含む乗客乗員4806人のうち15名が発熱)」において、天津市政府が「24時間で全ての検査・対応を行い、感染ゼロを実現」したことが、2月27日に政府メディア「央視新聞」が大きく報じたことで1日に500万視聴と話題に。日本でのクルーズ船での感染拡大と比較して「社会主義国家の対応は統一されていてよかった」という評価が多く投稿されている。

〇新型肺炎感染の両親の子どもの陰性確定が社会から祝福される。

「新型肺炎の両親から生まれた子ども」として社会の注目を集めていた「小石榴」が、3度の検査の結果、陰性が確定。両親も肺炎から完治し、退院することに。政府メディアがこの乳児の生活を「ライブ配信」していたことから、全国的な注目を集めていた。

〇地下鉄でのQRコード登録が開始、プライバシー意識より不安感から活用が進む。

2月28日から、上海の地下鉄で、乗客の「QRコード登録」が開始。車両ごとに8つのQRコードが貼られており、乗客は自身のスマートフォンでそのコードをスキャンすることで、自身の乗車履歴の記録(=政府のシステムへの登録)が可能。これにより、もし同じ車両の乗客が新型肺炎を発症した場合に、通知を受けることが出来る。プライバシーを懸念する声は殆ど見られず、むしろ「安心」「もっとQRコードの数を増やしてほしい」「バスでも行ってほしい」という声が多い点が中国ならではと感じられる。

※本レポートの次回、公開は3月10日(火)を予定しています。

著者プロフィール

神谷製作所
代表取締役
神谷 準一

2004年博報堂PR戦略局、博報堂ケトルを経て、2016年クリエイティブPRの会社「神谷製作所」を設立。広告クリエイティブ×PRを掛け合わせたキャンペーンを得意とする。国内外の広告賞受賞多数。

 

清水 誉

慶応義塾大学法学部法律学科卒業、関西学院大学大学院経済学研究科前期博士課程修了。専門は東アジア経済、中国労働経済。1988年ブリヂストン入社、広州事務所代表、北京事務所代表、1999年博報堂入社、広東省広博報堂広告有限公司総経理を歴任。現在上海在住、GoodNewsFactoryShanghaiビジネスデベロップメントマネジャー。中国ビジネスのスペシャリスト。

 

Macy Ishii

2018年までの約10年間、広告会社のストラテジックプラニング職として様々な業種の企業のマーケティングを支援。うち5年間は上海に駐在し、リージョナルヘッドクオーターの立ち上げ/グループ会社の経営管理/支援を行うとともに、現地での生活者トレンドの研究組織の設立/推進を行う。2019年から神谷製作所中国事業顧問。

 

張 暁暁

中国生まれ、中国育ちの中国人。デジタルマーケティング会社で日系企業向けインバウンド/アウトバンド⽀援を行う中、より広い領域で広告を学びたいと言う思いから上海博報堂に転職し、中国系自動車メーカーや飲料メーカー、日系タイヤメーカーなどを担当。2018年11月から神谷製作所の一員に。日・中の言語とカルチャーを巧みに操るボーダレスPRディレクター。