NPO法人本屋大賞実行委員会は4月7日、全国の書店員が“一番売りたい本”を選ぶ「2020年本屋大賞」の受賞者を発表。大賞に凪良ゆう氏の『流浪の月』(東京創元社)が選ばれた。2位は『ライオンのおやつ』(小川糸、ポプラ社)、3位は『線は、僕を描く』(砥上裕將、講談社)となった。
『流浪の月』は誘拐された少女と、誘拐した大学生の二人を軸にした物語。一人称を替えながらひとつの話を紡いでいく小説だ。投票した全国の書店員からは、真実と事実の違いが巧みに表現されている点への評価や、主人公の2人の生き方に共感する声が多数寄せられた。
代表的なコメントは以下の通り。
「周りには理解されないと分かっていながら、自分たちの関係と想いを築いていく様は、私以外にも共感する方は少なくないでしょう。愛の意味を考えたい」
「ネグレクト、DV、ストーカー、消せないネットの書き込み。現代の社会問題が浮き彫りになる。こんな小説を求めていたと実感する」
「今の世の中、いろいろな情報にあふれていて、与えられる情報をそのまま受け止めてしまいがち。当事者たちの想いを知らなければ、本当の想いを知っていることにはならないのだなと思わされた」
発表会は新型コロナウイルス拡大抑止のため中止となったが受賞者のコメントが配信され、凪良氏はビデオメッセージで「大賞受賞のお知らせをいただいたときは、驚きすぎて言葉が出ませんでした」と喜びを語った。さらに、「書店は出版業界の最前線でもあります。読者に常に接して、言葉を直接交わすことの多い書店員さんからのご支持をいただけたことはとても嬉しいです。期待をしっかりと受け止めて、応えていきたいと思います。最近は心配なニュースが多く、お家で過ごされている方も多いと思いますが、ぜひとも本を読んでいただければ」などとコメントした。
本屋大賞は、本と読者を最も知る立場にいる書店員が、売れる本を選び出版業界を現場から盛り上げていくといった考えのもと2004年にスタート。過去の大賞には『博士の愛した数式』(小川洋子、新潮社)、『夜のピクニック』(恩田陸、新潮社)、『東京タワー~オカンとボクと、時々、オトン~』(リリー・フランキー、扶桑社)など、受賞とともに話題となり、大きく部数を伸ばした。
今回の本屋大賞では、2018年12月1日から2019年11月30日に刊行された日本の小説が対象となった。一次投票には全国477書店より586人、二次投票には300書店より358人の投票があった。
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