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野球ファン減少でも“来場者数”は拡大! 人口縮小時代の成功モデル、パ・リーグのファンマーケティングに学ぶ

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地上波での試合中継で広域にファンを獲得するビジネスモデルではなく、地域密着によるスタジアムビジネスにシフトすることを主軸に、2004年から始まったパ・リーグの改革。埼玉西武ライオンズ、そして現在はパシフィックリーグマーケティングで10年以上にわたり、ファンを対象にしたマーケティング戦略を担ってきた佐々木将之氏は「ロイヤルティ マーケティングを長期にわたり実行できるかどうかは経営判断」と話します。
プロ野球ファンの人口が減少しても、試合来場者数を伸ばし続けてきたパ・リーグの成功の背後にあるロイヤルティ マーケティング戦略とは? そして現在、試合が開催できない状況の中で、いかにしてファンとつながりを持とうと考えているのか。チーターデジタルの加藤希尊氏が話を聞きます(本文中・敬称略)。

左)パシフィックリーグマーケティング(PLM)メディア事業本部 本部長 佐々木将之氏
埼玉西武ライオンズの経営改革において、マーケティング、事業責任者を歴任。プリンスホテルを経て、2018年よりPLMでデジタルマーケティング領域を管轄。
右)チーターデジタル 副社長 兼 CMO 加藤希尊氏
WPPグループ、セールスフォース・ドットコムを経て2019年11月より現職。2014年にマーケターのネットワークである「CMOCLUB GLOBAL」を設立。

コアファンにフォーカスする戦略で、ファンクラブ会員のチケット売上を3倍に拡大

加藤:私たちチーターデジタルは成熟化した市場に対応した、次世代のロイヤルティ マーケティングを提唱しています。スポーツのようなファンビジネスと相性が良く、これまでスポーツビジネスに携わる多くのマーケターの方々とディスカッションを重ねてきました。佐々木さんは、埼玉西武ライオンズ時代に、ファンにフォーカスする戦略で、ファンクラブ会員のチケット売上を約3倍に伸ばすなど、V字回復を実現した立役者であると聞いています。

佐々木:私は約10年にわたり、西武ライオンズ、そして現在のPLMでロイヤル顧客を対象としたマーケティングに携わってきました。その経験から、経営におけるロイヤル顧客の重要性を強く認識しています。

約10年にわたり、ロイヤルファンと向き合ってきたPLMの佐々木将之氏は「ロイヤルティ マーケティングは狩猟型ではなく、農耕型。時間をかけて土壌からつくっていくような努力が必要とされるので経営としての判断があってこそ実現できること」と話す。

加藤:前職と現在で役割に違いはありますか。

佐々木:球団に所属しているときは、球場にいかに集客できるかが重要でしたので、必然的に球場周辺の商圏に絞った戦略が中心となります。そこで会員組織であるファンクラブのコアファンを起点とした顧客戦略に力を入れていました。一方で今、PLMで取り組んでいるのは、パ・リーグファン全体の裾野を広げる戦略です。具体的には、パ・リーグ6球団の試合映像をオンライン配信する「パーソル パ・リーグTV」を中心としたデジタルメディアによるマーケティングを推進しています。

■パ・リーグ6球団の試合映像をオンライン配信「パーソル パ・リーグTV」

佐々木氏が担当する「パーソル パ・リーグTV」。ライトなファン層との接点づくりが役割だったが、試合が開催できない現在の環境下では、あらゆるパ・リーグのファンとつながり続ける、重要な接点として期待される。

ロイヤルファンに対する深い理解は、新たなファンとの接点づくりにも生かされる

加藤:西武ライオンズ時代に培ったロイヤル顧客に対する深い理解は、新たなファンとの接点づくりを担う、現在の仕事にも大いに生きているのではないでしょうか。

チーターデジタルでは0 Partyデータという、顧客の意図で提供される趣味・嗜好に関するデータの収集を推奨しています。この0 Partyデータを通じて、ロイヤル顧客を深く理解することができれば、ロイヤル化のジャーニーを導き出すことができる。さらに、その理解をもとに逆引きしていけば、新規の顧客獲得のアプローチも見えてくると考えているのです。

佐々木:確かに。ファンと直接接する中で、好きになってもらうきっかけは見えてきた部分がありますね。

加藤:パ・リーグではファンを理解するためのデータは、どのように取得されているのでしょうか。

佐々木:パ・リーグ6球団は、顧客データが自然に集まる仕組みができています。その核になるのがファンクラブとネットでのチケット販売で、ファンクラブに所属している方は、基本的な属性や行動履歴などを把握できていますし、チケット販売に際しても基本情報を入力いただくので、比較的ライトなファンの方のデータも取得ができています。

日本の人口減少に伴い、プロ野球ファンの人口も減少傾向にあるというが、その中でも試合来場者数を伸ばし続けてきたパ・リーグのロイヤルティ マーケティング戦略には「ポスト2020」のマーケティング戦略の大きなヒントがある、とチーターデジタルの加藤希尊氏。

来場頻度、売上額? パシフィックリーグが考えるファンの定義

加藤:プロ野球では、ファンをどのように定義しているのでしょうか。

佐々木:ひとりの顧客が球場を貸し切って売上達成できれば良いかといえばそうではなく、年間を通じて球場を満員にすることで、熱狂的な空間を創出するという視点も求められます。来場頻度は少なくとも1回あたりの売上額で貢献してくださるファン、とにかく数多くの試合に来場してくださるファン、両方ともに貴重な顧客になります。そこで来場頻度と売上貢献という2つの指標を意識することが多いですね。

加藤:私たちは、顧客分析に際して「行動ロイヤルティ」「経済的ロイヤルティ」だけでなく「心理的ロイヤルティ」まで把握することが重要と考えています。

佐々木:ファンとの心理的なつながりの把握と共感の醸成は、スポーツビジネスのメインテーマです。

加藤:チーターデジタルではマーケターの方々の協力を得て、「心理的ロイヤルティ」を把握するためのフレームワークをつくっています。顧客データを分析すると、購入金額は高いのに、たとえばNPS®のスコアは低いといった顧客もいます。経済、行動の2軸だけだと、見せかけのロイヤルティに気づけない可能性もあるので、しっかりと「心理的ロイヤルティ」を把握することが大切です。

佐々木:ファンをより深く理解するためにも重要ですね。

■チーターデジタルが考えるロイヤリティを構成する3要素

これまでのRFM分析などでは、行動ロイヤルティ、経済ロイヤルティまでは測れても、心理的ロイヤルティまでは可視化がしづらかった。チーターデジタルでは0 Partyデータも活用することで、顧客の心理的ロイヤルティまでをも把握し、適切な関係性を維持することの必要性を提唱している。

プロ野球ファンの人口は減少しても、パ・リーグの試合来場者の数は増加

加藤:この連載では、人口減少をはじめとした市場環境の変化にどう向き合うかをテーマにしています。プロ野球では、影響はありますか。

佐々木:はい。プロ野球ファンの人口も減少傾向にあります。その半面で、パ・リーグの試合来場者の数は増え続けている。実は、その成長の背景にあるのがロイヤル顧客、ファンを重視した戦略です。

地上波での試合中継で広域にファンを獲得するビジネスモデルではなく、地域密着によるスタジアムビジネスにシフトすることを主軸に、2004年からパ・リーグ改革が始まりました。その肝は、ファンクラブ会員組織とチケットやグッズ販売などを統合したCRM戦略の推進。この戦略によりデータ取得が可能になり、ファンを深く理解することができるようになりました。

加藤:ロイヤル顧客を重視して成長を続けるパ・リーグの戦略は、「ポスト2020」のマーケティングのあり方の手本になりそうです。

佐々木:ロイヤルティ マーケティングを実施するか否かは経営判断になりますが、各球団で、長期的に実行できているのだと思います。

加藤:現在のパ・リーグの実績が、その判断の適切さを証明していますし、他の産業においても大いに参考になりそうです。

(本文中・敬称略)

対談を終えて

試合が開催できない状況下
デジタルを介した新たな情緒的価値づくりのアプローチに期待

約10年にわたり、ファンに向き合い続けてきた佐々木さんが、ご自身のことを「ロイヤルティ マーケター」と表していたのが印象的でした。また佐々木さんは、「ロイヤルティ マーケティングは狩猟型ではなく農耕型。時間をかけて、土壌からつくっていくような努力が必要だし、それをできる環境がパ・リーグにあったことは恵まれていた」とも話されていました。

この環境の背景には、パ・リーグ全体の改革という大きな決断があります。ロイヤル顧客を重視するか否かは、経営判断。いち早く、その判断を下せたパ・リーグの成長に、ロイヤル顧客を重視する戦略の有用性を確信しました。

現在、新型コロナウイルスの影響で試合が開催できない状況が続いています。オンラインでファンとの接点をつくることをミッションとする、佐々木さんの活動の重要度は高まりそうですし、その活動から、スポーツビジネスにおける、これまでにない新しい情緒的価値づくりのアプローチも見えてきそうです(加藤希尊)。

チーターデジタルとは?

1998年に米国で創業し現在、日本を含む世界13カ国、26拠点で事業を展開。2017年にExactTarget、Salesforceのエグゼクティブバイスプレジデントを歴任したサミール・カジ氏がグローバルCEOに就任し、新生チーターデジタルを結成。次世代の顧客エンゲージメントソリューション「Customer Engagement Suite」を開発し、すでにケロッグ、シティバンク、レッドブル、コカ・コーラなどで導入実績がある。「Customer Engagement Suite」は成熟化する市場環境に適応した、新しい思想を持つソリューションで、見込顧客の獲得からロイヤル化まですべての機能を内包する。日本においては2019年12月から新たな経営陣が参画し、2020年からソリューションの提供を開始した。

 



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