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社員エンゲージメント向上の鍵はこれだ! コロナ禍でも曲げない資生堂の「PEOPLE FIRST」

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新型コロナウイルスの感染拡大を契機にテレワークを導入した企業は多いでしょう。その結果、業務効率の面ではプラスに働く面もあった一方で、「出社」や「同僚との“何気ない”会話」などの機会喪失が、従業員エンゲージメントの低下を招いた、などの声が挙がっています。テレワーク下でも、それらリアル体験に取って代わる方法というのはあるのでしょうか。
月刊『広報会議』7月1日発売の8月号では、コロナ禍でも巧みなインターナルコミュニケーション施策で、従業員エンゲージメントを保ち続けた企業の広報担当者にインタビュー。今回はその一部を公開します。

資生堂は海外売上比率が50%を超えるなど、グローバル化を加速させている。「世界で勝てる日本発のグローバルビューティーカンパニー」を目指し、2019年には企業使命を新たに「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD」とした。そこで今後さらに、この企業使命のほか、DNAや理念の浸透は不可欠と考えた。そこで、インターナルコミュニケーションに力を入れている同社の取り組みを、グローバル広報部インターナルコミュニケーショングループの丸山鉄臣氏に聞いた。

タイムリーに情報発信

2016年開設の資生堂の社内ウェブサイト「WITH」のトップページ。

インターナルコミュニケーションの肝となるのが社内ウェブサイト「WITH」だ。2016年から、グローバル共通のプラットフォームとなった。「資生堂の全社員が経営戦略と世界中のニュースを共有できるプラットフォーム」をうたう同サイト。丸山氏ら同グループのメンバーが運用する。内容は、トップメッセージから、海外を含めたローカルイベントなど、コンテンツは多彩だ。

また、開始当初は閲覧率が伸び悩んだものの、打開策として、一部のコンテンツに動画やライブ配信を盛り込むようにした。結果、「WITH」へのアクセス数は伸びたという。「伝えるべきメッセージをもとに、動画やライブ、さらにはテキストなど最適な手法を選択しています」と丸山氏は語る。

では、ライブ配信に適したコンテンツとは一体何だろうか。一例として、各エリアのトップが日本に集結し、翌年の経営方針を発表する一大イベント「One Shiseido Summit」を挙げる。

「本イベントは限られたエグゼクティブしか参加できません。本年度、CEOプレゼンテーションから、ゲストスピーカー講演までライブ配信を実施。欧州では時差の関係で夜中の視聴に。それでもなおリアルタイムで観た社員は複数いて、視聴した社員らは『トップの考える経営方針をリアルタイムで観られるのは非常にモチベーションにつながる』と感想を述べていました。そういった能動的に情報を入手しようとするアーリーアダプターな社員は、将来、会社を背負って立つことになるかもしれません。そんな社員のモチベーションアップにつながる意味で、また変化が激しい現在においてライブ配信は経営を加速させる重要なコミュニケーションツールです」。

コロナで再確認される共感性

「STAY SAFE, STAY STORONG 同じ空の下」。世界中の社員から300枚近い写真が集まった。その中からいくつかを選んで、国内外向けのSNS、さらには「WITH」で発信した。

新型コロナウイルス感染症拡大の影響は、社会不安に加え、社員のエンゲージメントにも影響を及ぼす。

そんな状況だからこそ、同社社長の魚谷雅彦氏は「WITH」上で多くの発信を行った、と丸山氏は語る。

「CEOメッセージは以前から動画を活用。大半は社内に設けられたスタジオで撮影していましたが、緊急事態宣言発出後は、魚谷CEOも、撮影チームも在宅勤務。そんな状況下でも、ウェブ会議システムを使ってメッセージを収録し、発信しました」。

その内容は、困難な環境下こそ、「美」を通じて社会を元気にしていくことができる、世界を変える力があると信じている。全世界が「One Shiseido」となって難局を乗り越えよう、と社員を鼓舞する内容だ。

メッセージを発信し続けたこと、さらにその内容も、資生堂のDNAのひとつである「PEOPLE FIRST」と結びついている。

「魚谷CEOは普段から『現場』を大切にしています。社員一人ひとりの声を聞く姿勢を貫いています。メッセージの内容も販売の現場の第一線で働く社員にも伝わりやすい言葉を選ぶよう、心がけています。その根底にあるのはやはり『PEOPLE FIRST』。常に人が大事だということです。今回のコロナ禍でのメッセージもすべてこの姿勢に基づいたものです」。

さらに海外法人のCEOも同様に「PEOPLE FIRST」に根差した内容を発信し、資生堂ファミリー全体がこのDNAに基づいた行動をしており、全世界の社員に共有されている。こうした会社が目指すべき方向性や理念を、あらゆる機会で社員に浸透させるのに「WITH」は役立っているのだ。

一方、編集部がコンテンツを企画する上で留意したことも丸山氏にたずねると、「情報発信の際に、いかに共感の輪を広げられるかを心がけました」と話す。その具体例が以下の2つの記事だ。

ひとつが「STAY SAFE, STAYSTORONG 同じ空の下」プロジェクト。コロナを受け、「世界中の資生堂ファミリーが活動している場所は違っても、同じ空の下での想いはひとつだ」との趣旨のもと、それぞれの窓から見える空の写真を集めコロナ終息を願う、というインターナル企画。「WITH」で写真を募集し、期間は4 月20~26日と短いながらも世界中の社員から300枚近い写真とコメントが寄せられた。

もうひとつが、同社が肌に優しい手指消毒液の処方開発・製造、医療機関などへ提供するまでを伝え、そこに至るまでの関係者の声を取材した記事。人を中心とした社会への価値の提供、スピード感をもって障害を乗り越えていく社員の姿を伝えた。「少しでも貢献できて嬉しい」「やりがいを感じる」などの声も合わせて掲載。

「これら2つの記事を読んで、多くの社員から『やはり資生堂で働けて良かった』という趣旨の感想が多く寄せられました。また後者の記事は過去最高の『いいね』が押されました。自宅待機を余儀なくされている販売の現場の第一線の社員が工場に感謝と誇りのメッセージを送ったことも掲載し、さらに一体感の醸成につながったと感じます」。

化粧品メーカーの資生堂が手指消毒液を製造・提供する意義や、開発・生産の状況を伝え、関係者への取材を掲載した記事を「WITH」に投稿。

この他、7月1日発売の月刊『広報会議』8月号には、日立製作所、スクウェア・エニックス、ANAホールディングスの従業員エンゲージメントを高める社内コミュニケーションの事例を掲載しています。