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日本のビジネスパーソンよ、仕事でもっと「ワクワクと学び」を(中原淳)

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毎年春になると、陰鬱なニュースが人事・人材開発の業界には流れる。日本企業につとめるビジネスパーソンの「仕事における熱意」や「貢献意欲」などが、世界で最下位にランクされ、しかも、それは年々低下している、というニュースの流通が、いわば「風物詩」になっているからだ。

しかも、話は「感情」だけではすまない。日本企業につとめるビジネスパーソンの平時の学習時間(自己啓発時間)は、世界でやはりワーストワン。我が国のビジネスパーソンは、世界でもっとも「仕事でワクワクと学び」を感じない人々らしい。

上田信行『プレイフル・シンキング 決定版 働く人と場を楽しくする思考法』宣伝会議
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本書「プレイフル・シンキング」は、その「真逆」を、快活に疾走する書籍だ。

著者の上田信行さんは、ドウェックの心理学、学習環境デザインの長年の実践知見をもとに「楽しさのなかにこそ、学びがあること」「ひとは他者からの助けや創造的コンフリクトを通じて、変わることができること」を論じている。

上田さんは、僕が学生の頃から私淑し、もっとも影響を受けてきた研究者のおひとりだ。

この本で主張されている内容は、平易に見えるかもしれない。しかし、そのすべてが過去数十年のアカデミックの知見を踏まえ、そこからインスピレーションを受けた上田さんが、自らつくりあげ、実践してきた内容である。

「プレイフル」という概念を働くすべてのひとびとが「OS」としてインストールできたとしたら、職場も、仕事も光り輝いて見えるだろう。

日本のビジネスパーソンのパッションと学びにまつわる「陰鬱なニュース」を、また来年、耳にしたくはない。ひとは熱意をもって仕事にあたり、だからこそ、変わることができる。上田さんの著書は、そのことを思い出させてくれる。

                                   

立教大学経営学部教授
中原淳(なかはら・じゅん)氏

立教大学大学院経営学研究科リーダーシップ開発コース主査、立教大学経営学部リーダーシップ研究所副所長などを兼任。博士(人間科学)。専門は人材開発論・組織開発論。北海道旭川市生まれ。東京大学教育学部卒業、大阪大学大学院 人間科学研究科、メディア教育開発センター(現・放送大学)、米国・マサチューセッツ工科大学客員研究員、東京大学講師・准教授等をへて、2017年-2019年まで立教大学経営学部ビジネスリーダーシッププログラム主査、2018年より立教大学教授(現職就任)。「大人の学びを科学する」をテーマに、企業・組織における人材開発・組織開発について研究している。
単著(専門書)に「職場学習論」(東京大学出版会)、「経営学習論」(東京大学出版会)。一般書に「研修開発入門」「駆け出しマネジャーの成長戦略」「アルバイトパート採用育成入門」など、他共編著多数。