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クリエイターが考える、withコロナ時代の交通・OOH — Vol.5 尾形真理子氏

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メトロアドエージェンシーと宣伝会議が企画・運営する「第4回Metro Ad Creative Award」の作品募集が10月12日に開始しました。2020年のコラムテーマは「withコロナ時代にクリエイターが考える 交通・OOHに贈る期待」。外出が制限され、人々の行動が大きく変化している今、どのようなコミュニケーションが求められているのでしょうか。
本リレーコラムには、「Metro Ad Creative Award」の審査員らが登場。交通・OOH広告を広く、街の魅力を創造するメディアとして捉え、最前線で活躍するクリエイターたちが自身を刺激する都市におけるクリエイティブについて語ります。
第5回は審査員の尾形真理子氏が担当します。

すべての景色は、広告のライバル。

スマホが普及するずいぶん昔のことですが、地上を走る電車より、地下鉄の方が広告出稿の値段が高いと聞いたことがあります。真偽のほどはわかりませんが、地下鉄は車窓から見える風景がないぶん、中吊りなどの広告に目を向けやすいという理由でした。その話を聞いて、なるほど納得と思いました。と、同時に、目に映るすべての景色は広告のライバルなんだな、と気づきました。そして広告もまた、人々に映る景色になのだ、と。

「今日、ここまで電車で来た人は?」

赤坂に勤務していたとき、学生さんへの面接で必ずわたしが聞いた質問です。ほぼ100%の人が電車を利用していましたが、「では、今日見た広告を教えてください」と続けると、ほとんどの人が「なにか見た気はするが覚えていない」と答えました。広告制作業を志望する学生さんですらそうなのです。そのたびに絶望したい気持ちになりましたが、それが現実でした。目には入っていても、見てはいない。

広告のない地下鉄。

自粛期間中の電車は、ひと車両に自分ひとりだけ、ということが何回もありました。異世界に迷い込んでしまったような心細さで車内を見回すと、広告出稿も激減していました。歯抜けの額面や中吊りに、あぁ、世界が変わってしまったのだとリアルな恐怖を感じました。見る人がいなければ、広告は成立しない。その当たり前のことを、コロナに突きつけられた気がしました。

見たくないものは、見なくていい。

メディアが多様化する一方で、わたしたちが接触するコンテンツもますます細分化されています。電車で隣の人のスマホをチラ見すると、本当に人それぞれだなと感じます。リモートワークがこの先も常態化すれば、皆が同じものを見る機会も減り、その傾向はさらに加速するでしょう。となれば、電車に乗ったら広告を見るのも楽しみのひとつ。そのぐらいの感覚になってもらわなければ広告に未来がありません。

コロナの動向が見えない今、誰の声に耳を傾けるのか?

その判断がますますシビアになっている気がします。準備の足りない発言、その場しのぎの発言、配慮に欠ける発言、そういったものに人々が耳を塞ぐのは、当然のことでしょう。逆をいえば、信用や好意を感じた人の言葉は、優先して聞いてもらえる。企業の姿勢を、取り組みを、コミュニケーションの仕方を、より敏感に嗅ぎ分けることを前提に、見てもらえる広告を作る。それは厳しくもあり、ちゃんと届く広告が作れるチャンスであると思うのです。

第4回「Metro Ad Creative Award」(応募締め切りは2021年1月15日13時)の詳細はこちらから。

尾形真理子氏
Tang コピーライター・クリエイティブディレクター

1978年、東京都生まれ。2001年に博報堂入社。資生堂、ルミネ、キリンビール、日産自動車など大手企業の広告コピーを手がける人気コピーライター。TCC賞、朝日広告賞グランプリほか、多くの広告賞を獲得。『試着室で思い出したら、本気の恋だと思う。』(幻冬舎)で小説デビュー。女性の繊細な心を表現したコピーに共感する女性ファンは多い。