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岡山県の福祉企業が、7年間得られなかった広報成果を6ヶ月で得た 伝えたいメッセージがもれなく反映されたパブリシティ

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人が資産と言われる広告界。人材育成は、広告界に属する企業に共通する重要課題だ。社員のスキルを伸ばし、成長を続ける企業に人材育成の方針を聞く。

株式会社創心會は、岡山県を中心として看護・リハビリ・介護・保育などの在宅医療・福祉サービスを提供する、1996年に設立された企業だ。21年1月の取材時、従業員は676名、グループ全体では800名にのぼる。2021年1月には、県内のデイサービス22拠点、50事業所、利用人数の規模で月間は3,100名を超える、岡山県内のシェアナンバーワンの介護施設だという。

創心會 広報CSR部長 河﨑 崇史氏

以前の同社の広報は、人事広報部として、人事業務を主として、兼任で採用広報と営業支援の広報をするという体制であったという。

河崎氏のキャリアは介護職から始まった。2005年4月に同社にデイサービスの介護職員として入社。その後、介護福祉士資格を取得し介護の実務を重ね、新規施設の開設、介護事業 本部長へキャリアアップをしてきた。

そして2014年4月から、人事広報部に異動することになった。当時、採用や従業員に向けた教育を専門的に行うのは始めてであった。そのため慣れない広報活動に手探りで苦労したこともあったという。

「一般的に、弊社が行うようなケアサービス事業は、介護士等の職員を増やさないと事業が拡大しません。特に専門資格保持者の採用が重要となります。ですので、関連する養成校やハローワークに足を運ぶというアプローチをしていました。いかに自分の会社に興味を持ってもらえるのか、就活サイトの原稿や会社概要のパンフレット等を磨きリクルートに回っていました」と話す。

「正直な所、この頃は広報よりも広告宣伝の比重が高かったです。少しだけ、社内のデザイナーから、広報業務の引継ぎを受け、我流でプレスリリースをつくり、記者クラブや自治体の企画系の方を訪問することも行ってみました。しかし、関係構築はある程度できたものの、パブリシティとして取り上げていただくことは出来ていませんでした」という。

その後、2017年12月の組織変更で人事部は営業本部と統合。専門部門として広報CSR部が新設され、河崎氏が部門長となった。

このタイミングで「社長から『会社全体の経営方針として自社のブランディングを始めます。そのために広報とCSRが重要な役割になるので攻めの広報を頼みます』と言われました。しかし、広報活動のミッションを明確に策定することが難しく、新規事業開設に伴う広告・看板・デザイン・原稿執筆・WEB制作に業務が集中し、悩んでいました」という。

2019年4月には、「社長が外部のコンサルタントを活用して、ブランディング研修を社内で行い、自社のカルチャーブックを作成するという取り組みが始まりました。今振り返ると、この時期は社長が外部の方とつながって、どんどん露出のコンテンツを作ってゆく姿を追いかけていく形でした」という。

2019年7月に、社長から「『メディアへプレスリリースを配信する専門会社と契約したので、その担当者からメディアのコミュニケーションの仕方を学んでください』と指示を受けました。6ヵ月努力をしたもの、得られたのは、1件の地元の新聞への記事掲載でした。あわよくば大手・全国区のメディアに露出したいと思っていましたが、一切獲得できませんでした」と、悔しい思いをしたという。

2017年末を契機に、社長が広報やブランディングをいっそう重視するようになったのは理由があるという。「社長は、業界団体の会合や専門職養成校への講師活動など、外の方との付き合いが多くあります。どこに行っても『御社は非常に独自性があり、素晴らしい事業をされていて、職員が素晴らしいですね、と褒められる』と言われます。しかし、当の職員たちは、なかなかその実感を得られていないと感じています。『自社と自分の仕事が、社会から認められている、という心の報酬を実感して、誇りを持ってもらいたいという思いが背景にありました」と河崎氏話す。

河崎氏は、こうした社長の思いに広報で応えるために、どうしたらその状態が実現できるのか、悩みに悩んだという。

2019年10月には新たな動きがあった。「社長から、『2020年は広報・Web戦略をさらに加速させるため、そこで、今後の広報CSR部をどう運営するか=河崎をどうするか、社長や役員からの期待と重圧が増した状況で、広報戦略の企画立案の課題を課され、現状からの脱却と成長を求められました。私にとって2020年はピンチの年明けでした」と話す。

「これまでのように、現場の要請に添った広告物・制作等でのPRや営業支援をしていくことで、役割を肯定しようとする私に対し、社長から『現場の御用聞きになるな!もっと広く、現場の先を行け』と喝を入れる言葉がありました。これまで、慣れ親しんでいた介護事業部門寄りの視点・思考から、地域社会やより広い当社ステークスホルダーに目を向けた広報スタンスに転換せねばというタイミングでした」という。

河崎氏は、ピンチの状況で広報戦略を考え直すことになった。「ステークホルダーとなる人は、どこまでの対象なのか、分類するとどう分けられるか、その方々とどんな関係になるべきか、という観点でマッピングした戦略をつくりました。その後、社長の承認を得ることができました」という。

一方で、「このタイミングでコロナ禍に入り、戦略をどう実現するか、効果的なアクションについて見通しを持てていない、というのが正直な所でもありました。今の自分では、まだ実力が足りないんだろうな、という気持ちになりました」と話す。

そんな河崎氏が、宣伝会議と『広報担当者養成講座』を知ったきっかけは、2020年5月であった。社長から「こういう講座があるけど受けてみないか」と講座のパンフレットを渡されたという。

「受け取った『第29期 オンライン開講 広報担当者養成講座』の10回のカリキュラムを見ると、自分なりにやってはいるけど、正しく出来ているか確認したいことばかりでした。稟議書で、社内で広報業務を確立したいと宣言し、社長から『講義で学ぶことを完全コピーするように』という期待で2020年6月から受講が始まりました」という。

そんな河崎氏は受講を通して、「これまで広報活動が思うように行かなかった原因は、広告=広報という誤解と、広報へ求める役割や成果の指標を立て、再現性を持った活動を行うこと、それらのノウハウを専門家から学ぶ機会はほとんどなかったからだと思えるようになりました」と話す。

「講座で教わる正道な広報の仕事のあり方を聞いて、毎回泣きそうでした。自分があるべき広報像だと思ってきたことと、講義内容がぴったりストライクしたからです。野球に例えると、ど真ん中のストレートをバンバンミットで気持ちよく受け続けた感覚でした。それだけでなく、受講当日に自分が悩んでいるけれど、普段は誰にも聞けないことを、積極的に質問して講師の回答に学びました。受講を通して気付いたのは、自分は広報のロールモデルとなる師匠が欲しかったのだ、ということでもありました」と話す。

また「どの講師にも共通していたのは、広報が『社会と社内をつなぐ仕事』だといことでした。これまでの自分の広報活動を振り返ると、例えば情報発信の際に、いかに広報として伝えたいことを社内に伝えるかという意識でした。それが、その内容について、世間は今どう思っているのか、世間から弊社はどう見えるのか、バランスをとって社内外に広報すべき、ということを明確にさせてくれました」という。

その他、今だからこそ言えることとして「受講前に、コロナ禍の広報はどうあるべきか、自社で新型コロナウィルス陽性者やクラスターが出たらどう対応しようかと悩んでいました。地元のテレビ局や新聞社から、『コロナ禍で介護の現場はどうなっていますか?』と聞かれ、本当は出したくないことでも取材される、注目される会社になってしまったんだ、と思うこともありました」と語る。メディアに対応した結果、その内容とは関係のないことで利用者関係者から、企業姿勢を問われる厳しいご指摘もあった。

こうしたナーバスな社会情勢の最中でもあったため「危機管理広報の知識を学んでおかないと、弊社のように、健康を扱うような産業は、社会的信用失墜につながりかねないという危機感がありました。各講義では、コロナ禍で変わっている広報の今と対応についても講義され、毎回全集中で受講しました」という。

そんな河崎氏は、講座修了から3ヶ月で、充実感を覚える広報成果を出すことになった。

「活動エリアの主要地方紙『山陽新聞』に、12/25日に社長インタビューが掲載されました。小さな記事と思われるかもしれませんが、私たちが伝えたかった全ての要素が取り入れられました。企業イメージや経営者のメッセージの使われ方も満足した記事でした」という。

講義では、「『記者が書く記事の内容やタイトルを、ある程度コントロールできてこそ戦略的な広報だ』と言われました。以前は、メディアの方に対して、医療や介護の複雑な法律まで専門的に調べて、裏付けをして記事にされるものと思っていました。しかし、講義を通してこの考えを改めました。

記者の方は、記者としてのプロフェショナルであって、医療や介護の専門性や用語活用、全ての読者の方の立場に配慮して記事を書くことの調整は難しいことと思えるようになりました。そのため、業界知識や専門知識やNGな伝わり方と対応などを、予め全部洗いざらいお伝えするようにしました。まずは記者の方にしっかりご理解いただいたうえで、取材にお答えしていく。どういう見出しと内容で書いていただくかを想定した言葉を選んでお伝えしていくようになりました」と話す。このように広報担当者としての姿勢を変えたことで発見があったという。

「記者の方のなかには、例えば、リハビリは、運動をすると体が良くなるというイメージをお持ちの方がいらっしゃいます。しかし本当はそうではありません。リハビリの価値は、現在障害となっていることの、その損失が最小限になるようにすることです。記事で『良くなるや回復する』と書きたい方もいらっしゃいます。しかし、正しい情報を届けていただくためにも、また同列の団体などの方への影響、厚労省や保健所などの目もあります。自社だけ目立ちたいという安易な気持ちで露出を考えてはいけない。自社だけが良いという広報では、社会貢献にならないと思えるようになりました」という。

取材時の21年1月に、これまでの広報活動を振り返った気持ちを聞いた。「広報に対する見方が変わり、記者の方との関わり方を変えられたことで、7年苦労してきた壁を、まずはひとつ乗り越えられたと感じられました」と話す。

攻めの広報として配信し、成果のもととなったプレスリリース

なお、現在では、3名体制で広報を行い、主に、社外広報・社内広報・Webサイト管理・SDGsをふまえた広報・ブランディング活動を行っているという。

そんな河崎氏に2021年の抱負を聞いた。「まず、『高齢者の方が24時間365日、住み慣れた場所で安心して暮らせるよう質の高いサービスを提供したい』という弊社のミッションをより実現するための広報を行います。また、弊社には『ケア哲学』を指し示す理念用語があるのですが、その中の、『本物ケア宣言 知らないことでの不幸をなくす』という考えを大切にしています。『人体の知識や、病気にかかってしまった時に今後このような事が起きるという予見と解決する知識が私たちにはあります。しかし、お客様がそれらを適切に知ることは難しいものです。

知らないがゆえに、本当であれば選択できたはずの自分の生活や様々なことが、適切な情報を知らないことで、制約の多い生活しかできなくなってしまいます。こうした不幸や不均衡を招くことと、そうした人生を送る方を絶対増やしてはいけない』という考えです。私は、これは広報そのものだと思っています。世の中の人が、介護などに抱いているイメージに対して、実は可能性がこんなにもあるんですよ!ということを世間の方々に伝えていき、知らない知識を小さくしていただいて、結果として弊社とのつながりを強くしてけたら嬉しいです」と明るく語ってくれた。

広報の考え方を体系的に習得するため、河崎氏が受講した講座は……
「オンライン開講 広報担当者養成講座」でした
 
広報業務の重要性が高まる一方で、業務の基本、また新常態で広報がカバーする分野を実務に活かせるレベルまでを学ぶ機会は少ないものです。
 
本講座は、広報に求められる資質、社内情報が集まる仕組み、報道関係者への対応など広報が身につけておきたい基本を全10回でマスターできるカリキュラムとなっています。
 
<次回の開催日程 〔オンライン開講〕>
■講義日程
第31期 2021年2月26日(金)開催
■受講定員
60名を予定
 
詳細はこちら
 
お問い合わせ
株式会社宣伝会議 教育事業部
MAIL:info-educ@sendenkaigi.co.jp