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「#おもちゃに性別いるのかな」の問いかけで企業姿勢打ち出す

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米大手玩具メーカーのマテル・インターナショナルがサンリオの「Sanrio Baby」とのコラボ商品を発売。そのPR施策として、タレントのりゅうちぇるを起用した「#おもちゃに性別いるのかな」キャンペーンが展開された。その企画背景を聞いた。

大手玩具メーカー米国マテル社の日本法人マテル・インターナショナル。「バービー」「ホットウィール」や「UNO」など様々な子ども用玩具を展開している。そして、同社の主力ベビー用ブランド、フィッシャープライスがサンリオのベビー向けブランド「Sanrio Baby(サンリオベビー)」とコラボし、新商品を発売。

本稿では、そのPR施策として、タレントのりゅうちぇるを起用したキャンペーン「#おもちゃに性別いるのかな」の企画背景と、キャッチコピーを「いるのかな」とあえて“問い掛ける”形にした意図を同社のマーケティング責任者の今泉秀一氏に聞いた。

フィッシャープライスとサンリオベビーのコラボ企画のクリエイティブ。ポイントは、キャッチコピーと右のボディコピー双方が、りゅうちぇる“っぽさ”を意識して書かれている点だ。そうすることで、よりリアリティを持たせている。

ソーシャル視点でブランド認知

そもそも同社は、多様性を尊重する社風だ、と語る今泉氏。「『Kids rule our world』という言葉が社内にあります。子どもがどのように遊ぶかは企業や親が決めるのではなく、子どもたち自身が決める、ということです」。多様性の尊重は、例えば、車椅子に乗ったバービーや様々な体型のバービーが発売されるなど、製品開発にも反映されている。

そんな同社が満を持して発売したのが、今回の「サンリオベビー」とのコラボ商品。製品のひとつに、子宮音や呼吸音、心音が流れ、子どもの寝かしつけをサポートしてくれるハローキティのぬいぐるみ『サンリオベビー おやすみハローキティ』などがある。

「日本のベビー・プリスクール市場を見回したときに魅力的なキャラクターが数多くありました。そこで、サンリオブランドをフックに日本市場でもブランド認知をもっと高めたい、という意図がありました」。

さらに、サンリオブランドに頼るだけでなく、PRの面からも何か強い訴求方法はないかと模索。その結果、ジェンダーをテーマにした今回の企画の方向性が決まった。

「キャスティング」と「語る場所」

本キャンペーンはプレゼントキャンペーンの他に、りゅうちぇるによるインスタライブが開催された。その設計において、特に心掛けたのがリアリティだ、と今泉氏。「そこでポイントは2つ。『キャスティング』と『語る場所』です」。

りゅうちぇるは、彼がメディアに露出し始めたころからジェンダーレスなイメージが強い上、実は育児セラピスト1級の資格を持つなど、赤ちゃんへの造詣が深く、ターゲットである母親層との親和性が高い。そこでキャンペーンイメージに合う、との判断からキャスティングされた。

次に「語る場所」、つまりメディアだが、今回はInstagramを採用。その理由は、彼が普段ファンに語り掛けている場がどこにあるか、にあった。「りゅうちぇるさんのInstagramのフォロワー数は現在、100万人以上。つまり、普段から発信の場がInstagramであり、その場でのメッセージの方がよりリアルに伝わる、と思ったのです」。

なぜ、そこまでリアリティにこだわったのか。「なぜなら、企業とのコラボにおけるタレントからの発言は、企業が広告費を払って発言して“もらって”います。しかし、今回は、りゅうちぇるさん自身、もとからフィッシャープライスのリアルなファンでした」。つまり、そうしたりゅうちぇる自身の本心からの言葉をいかにユーザーに邪推なく受けとめてもらえるか、そこに配慮した結果、「キャスティング」と「語る場所」の2点が重要になったのだ。

「問い掛け」が訴求アップに

今後の企業の顧客とのコミュニケーションの形についても聞いた。「今後、より一層、企業や製品の価値観を押し付けるよりも、SNSなどを使った対話型のコミュニケーションに変えていく必要があると考えます」と今泉氏。

まさにその実践が本施策には図られている。そのひとつがキャッチコピーの「いるのかな」という問い掛けだ。「逆に『こうだ』と明確に主張する企業コミュニケーションもあります。しかし、それだと、より正確に企業からのメッセージは伝わるでしょうが、それを押し付けと取る人もいますし、ひとつの決まった答えしか提示できていない。

一方で、問い掛けの形にすると、皆が自分たちの答えを出せますので、考えるきっかけになったり、他の人たちに拡散したりとより波及効果が高いと思います。それに、100人いたら100人の答え・考えがあると思いますし、答えをひとつに決めない。それで良いと思います」。

実践例を聞いてみると、「例えば食料品に置き換えてみると、これってどんな甘さ・辛さだろう、と消費者に問い掛ける形などがあるかもしれません」と語った。

プレゼン資料

本PR施策に関するプレゼンテーション資料の一部。

POINT①
「男の子に、かわいいおもちゃを贈ってもいい。女の子が、かっこいいおもちゃで遊んでもいい。」と、あらゆる嗜好を肯定している。これは今泉氏の語る「100人いたら100人の答え・考えがあっても良いと思います」の発言とも重なる。問い掛ける形のPR施策を設計する際、肯定する言葉を並べる、というのもポイントになりそうだ。

POINT②
本企画書の制作に携わったPR担当者によると、「社会性高いテーマだからといって、現状を悲観したり、それに反対する意見を“押し付ける”ような印象を与えないよう意識しました。そこで、あくまでおもちゃのポジティブな雰囲気が残るように、新しい選択肢を提示する言葉を選びました」とのこと。

マル秘! 私の企画術

私の信条に、米国・ウォルマートの創業者サム・ウォルトンのビジネス10カ条のひとつ「Swim upstream」という言葉があります。訳すと、「流れに逆らって泳げ」。自分の知っていることや快適さとは反対方向に向かって泳ぐ、ということ。

この言葉に則り、自分の普段の仕事や趣味の領域とは異なることを意識的に見たり経験するようにしています。例えば、玩具のみならず化粧品売り場を見てみたり。その結果、思いも付かない新しいイノベーションが開けるかもしれません(今泉氏)。

 

 

広報会議2021年3月号

 

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【特集2】
共感を集める
「言葉」の開発

CASE1 パナソニック「ROOMLESS PAPA」
CASE2 マテル・インターナショナル「#おもちゃに性別いるのかな」
CASE3 京都きもの友禅「あなたのハタチに、 『また来年ね』なんてないから。」
GUIDE メディアに聞いた!2021年注目キーワード
毎日新聞/東洋経済オンライン
新R25/週刊ダイヤモンド
など