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【座談会】クリエイティブの世界では本来、変化はチャンスだ(後編)

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【前回記事】「【座談会】新型コロナ感染拡大から1年、印象に残った広告は?(前編)」はこちら

新型コロナウイルス感染拡大から約1年。手探り状態だった「Withコロナ」の生活も新たなスタンダードになりつつある。これからのニューノーマルな社会において、生活者に響く広告表現とは何なのか。電通 執行役員の佐々木康晴氏、博報堂ケトル 取締役・エグゼクティブクリエイティブディレクターの木村健太郎氏、もり 代表の原野守弘氏に話を聞いた。コロナ下で話題となった広告コミュニケーション事例をもとに、広告表現の現在地を探る。

(左から)電通の佐々木康晴氏、博報堂ケトルの木村健太郎氏、もりの原野守弘氏。

一番“気が利いてる”DXは「チンアナゴ顔見せ祭り」?

—佐々木さんがコロナ下で気になった広告は。

佐々木:僕が日本の広告で一番好きだと言い続けているのは、すみだ水族館の「緊急開催!チンアナゴ顔見せ祭り!」 。「2020 60th ACC TOKYO CREATIVITY AWARDS」でも特別賞を受賞しましたが、クライアントにも事あるごとに「2020年で一番気が利いているデジタルトランスフォーメーションの事例です」と紹介しています。

新型コロナの影響で水族館が休館した結果、チンアナゴが人の存在を忘れて怖がるようになり、飼育員さんにも姿を見せないので健康管理ができないという課題に対して、世界中の人がビデオ通話アプリ「Facetime」にアクセスすることで解決しようというもの。

チンアナゴに電話して顔を見せるという行為がそもそもかわいいし、みんなが参加する理由がきちんとつくられていていいなと思いました。ブランドとユーザーが一緒に課題解決して世の中を明るくするという、この1年を象徴するいい例かなと。

原野:この広告によって、すみだ水族館のイメージアップにもつながる。そこがよくできていますよね。

佐々木:そう思います。海外の事例でいうと、ニュージーランドの「Good Morning World」。よくあるツーリズムのプロモーションですが、日付変更線の関係上、ニュージーランドは世界でも比較的早くに朝を迎えます。分断やコロナ、不安定な政治など暗いニュースがたくさん流れる今こそ、1日の最初にポジティブなメッセージを伝えるのがニュージーランドの使命であるというスタンスです。

ニュージーランドに暮らす人々が「おはよう」という挨拶と一緒に、「今日はここで釣りをします」とか「うちで飼っている羊だよ」といった何気ないひと言を添える発信を1年間、毎朝続けました。世界中が真似してもいいのではないかと思う事例のひとつですね。日本ではこういう広告ができなくなっているという悲しみもありつつ。

そして、これは名作なので皆さんご存じだと思いますがアップルの「The whole working-from-home thing」。アップル製品を使ってチームで課題を解決するという広告の第2弾です。

The whole working-from-home thing

 

リモートワークならではのシーンも散りばめられていて非常に勇気づけられますね。みんなが広告に振り向く余裕がない時期に、人々を応援する形で自然にブランドの存在意義を見せられるのはさすがだなと。

タイ航空の「THAI STAY HOME MILES EXCHANGE」もよかった。これは、家から動かない人にマイルが貯まるという逆転の発想によるキャンペーンです。航空業界自体が危ないのに、ステイホームを推奨するため移動しない人にマイルをあげるなんてさすがタイ航空という感じ。ブランドの使命をうまく見せたし、落ち着いたら応援しなきゃなと思いますよね。

次ページ 「ポイントは「共感のつくり方」?」へ続く