小野写真館、サブスクでLTVを伸ばし「ハレの日」需要を増やす

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デジタルマーケティング支援などを行うSmashのco-founder 兼 取締役・佐野敏哉氏が、ゲストとともにLTVを重視した経営戦略の重要性を考える本企画。第二弾となる今回は、小野写真館(茨城・ひたちなか市)代表取締役の小野哲人氏と対談。ひとつの家族を5年以上撮り続けてアルバムを制作する会員制サービスを展開する同社に、サービスの背景にある思いや戦略を聞いた。

 

(写真右)
小野哲人氏
小野写真館 代表取締役社長

青山学院大学卒業後、外資系金融に勤務。その後、アメリカカリフォルニア州のBrooks Institute of Photographyに1年半在籍し、写真の基礎と技術を学ぶ。Lower Division Award受賞。2005年帰国し、2006年アンシャンテを立ち上げ、多角化展開をスタート。2010年代表取締役社長。座右の銘は「Stay hungry, Stay foolish」。

 

(写真左)
佐野敏哉氏
Smash co-founder兼 取締役

アドビ システムズにて、デジタルマーケティングや広告配信の業務を5年にわたりサポート。サブスクリプションの黎明期より、ビジネス、システムの両面に知見を持つ。2018年9月よりMacbee Planetに参画。解約防止ツールのプロダクト責任者として従事。2021年3月31日から解約防止ツールの事業部がSmashとしてスピンアウト。取締役就任。

 

サブスクで「ビジネス」と「想い」の両立に挑む

——それぞれ自己紹介をお願いします。

小野:小野写真館は私の両親が立ち上げた家業です。私は金融業界で5年間営業として経験を積んだあと、30歳のタイミングで継ぎました。もともとは自分で起業したいと考えていて、家業を継ぐ気はなかったのですが、長男ということもあって最終的に継ぐ決断をしたのが16年前。引き継いだときは1店舗のみでしたが、やるのであればしっかりビジネスとしてスケールしていくことを目指そうと取り組んできました。

佐野:Smashは、デジタルマーケティング分野で解約防止ソリューションの提供を行っている会社です。私はサブスクの黎明期からサービスの立ち上げや拡大に従事してきましたが、お客さまが爆発的に増えるなかで、解約ありきで刈り取りを行う昨今のやり方に違和感を覚えています。数字だけで物事を判断し、そこに血が通っていないので、本当に大事なものが見えていない気がしています。

小野写真館 代表取締役社長 小野 哲人 氏。

——小野写真館は、家族を5年以上撮り続けてアルバムをつくる会員制サービス「ラヴリーストーリー」を展開しています。立ち上げの背景は。

小野:写真館を利用するタイミングは、お宮参り、七五三、成人式、結婚式というのが一般的で、それ以上利用する人はほとんどいません。そこで、家族写真を毎年撮るという文化をつくり、晴れの日に頼らない事業モデルにしたいと考えました。そのためには、会員制の仕組みにすることが必要だと考えたんです。

このサービスは、5年後、10年後に本当の価値が出ます。子どもが0歳のタイミングで会員になった場合は、少なくとも5歳になるまで毎年撮影し続けるわけですが、0歳から5歳までの成長には驚くべきものがありますよね。つまり、5年後に振り返ったときに、時系列で子どもの成長を見ることができるのが特徴です。

写真は、時が経つとともにその価値が引き上がっていきます。私はそこにこのビジネスの本質があると考えています。お客さまに時を経た感動体験をしてもらうためにも、お節介だけれど無理やりにでも写真を撮る機会をつくりたいと思っているんです。

佐野:なるほど。私はこのサービスもサブスクの一種だと考えています。「体験創造」というお客さま観点でも、「お客さまと接点を持ち続ける」という企業視点でも、素晴らしい仕組みですね。ただ、5年後、10年後に享受できる価値を、購入時に伝えるのは大変だと思うのですが、どうされているのですか。

小野:そうですね。普通であれば面倒くさい、お金がないといって避けられてしまいがちですが、顧客の増加とともにクチコミなどで広がってきています。今では5000組以上にご利用いただいたという実績もでき、後押しになっています。

とはいえ実は、利益だけを考えると高価格帯の「ハレの日」に集中した方が儲かるんです。でも、それだけでは他社との差別化はできない。だからこそ、別のサービスを通じてLTVを伸ばし、晴れの日にも当社を利用していただきたい、と考えています。

Smash co-founder 兼 取締役 佐野 敏哉 氏。

心や人を絡め他社にはないサービスに

——2020年10月には伊豆の旅館「桐のかほり 咲楽」をM&Aしました。フォトウェディングなどの体験と掛け合わせることで、“思い出の地”としての再訪を狙っているのでしょうか。

小野:そうですね。今後は、会員制の写真撮影サービスを旅館でも実施しようと考えています。旅館には、特別な空間やおいしい料理、そこで過ごす時間といった体験があります。手間はかかりますが、それを写真にも残すことでオンリーワンのビジネスモデルにできると考えています。

というのも、コロナ禍で我々のビジネスの要である結婚式や成人式ができなくなったことで、どのような会社になるべきかを問い直しました。そのときに、我々のミッションである「感動体験をつくり出す」という領域には、いくらでもできることがあると考えたんです。

4~6月の売上が昨対比8割減という状況で10月にM&Aをするというのはあり得ないような決断でしたが、この事業を通じて毎年感動体験を生み出していきたいと思っています。

佐野:経営者の立場からすれば、ある意味利益を抑制してしまうものですが、感動体験を生み出すには、何が必要なのでしょうか?

小野:我々は写真を売っているというより、体験や空間を売っています。なので、手間をかけて、適度なお節介を焼くことが大事になってきます。

世の中のサブスクは、そのサービスを使うことで得られる価値だけで判断されがちなので価格競争になります。そうではなく、心や人が絡むことで、ほかの会社にはできないサービスをつくりたいと考えています。

ただ、リアルビジネスの場合は、一気にスケールできないというのが悩みです。なので、今後は想いのあるビジネスにテクノロジーやITの力を掛け合わせて、事業を拡大していきたいと思っています。

生涯顧客化の会社を目指したい

——今後の展望をお聞かせください。

小野:小野写真館には、「生涯顧客化の会社になりたい」という考え方があります。我々は写真館だけでなく、結婚式場や振袖のレンタルなど様々な事業を展開していますが、これ以外にも、たとえば結婚したお客さまのライフプランニングをお手伝いする保険代理店などを立ち上げ、生涯にわたって定期的に小野写真館に足を運んでもらえるようなタッチポイントを増やしたいと考えています。

佐野:デジタルのサブスクでも、お客さまとのタッチポイントをいろいろと増やそうと試行錯誤しています。我々の業界も「LTV」という言葉を呪文のように唱えていますが、お客さまと1年に1回実際に会う、といったアナログなところが欠落しているのかもしれないと感じました。時には、リアルの接点を持てるような機会をつくることも必要なのかもしれませんね。

小野:6月1日には、妊娠出産、子育ての分野から情報発信・プロダクトの開発を手掛けるポーラスタァの事業譲渡を受け、フォトダイアリーアプリ「BABY365」「UCHINOKODiary」「プレ花ダイアリー」の運営を開始しました。これにより、ユーザーインサイトを把握して新たなサービス開発・提供につなげていきます。また、「BABY365」などの海外での事業展開や、写真館・フォトスタジオ業界などの同業他社他店への本アプリのOEM提供も構想しています。休眠顧客の活性化を図り、業界全体のフォトブックマーケットの拡大を図ることで、今後もユーザーに有益なコンテンツを提供していきたいです。

※2021年6月1日に一部テキストを加筆いたしました。

【前回記事】「今メーカーに求められるマーケティング施策とは デロンギ・ジャパンのDXの鍵は「LTV」の向上」はこちら


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