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元テレ東アナ・森田京之介氏も加わり、“新章”突入した「トヨタイムズ」【広報会議150号記念】

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トヨタ自動車の内側をステークホルダーに直接届けるオウンドメディア「トヨタイムズ」。ウェブ、CMなどのチャネルを活用し、社内・社外の区別なくコンテンツを提供してきた。香川編集長率いる編集部には新たな“部員”も加わり、その勢いからは目が離せない。

2019年から始動したトヨタ自動車のオウンドメディア「トヨタイムズ」。その特徴はウェブとテレビCMを連動させていること、そして俳優の香川照之さんに編集長を担ってもらい、豊田章男社長や同社の関係者にインタビューしている、その設定だ。

ウェブのトヨタイムズの画面。記事は、トヨタのコンパクトカー「ヤリス」が欧州カー・オブ・ザ・イヤー(COTY)に選ばれた理由を森田記者が審査委員長に取材し、まとめたもの。

■DATA
開設:2019年
所属部署(うち担当者数):トヨタ・コニック・プロ ブランドマーケティング本部 ブランディング部 トヨタイムズユニット(8人)
コンセプト・目的:「トヨタの応援団をつくること」。トヨタとは心的距離がまだまだある人にとって興味喚起につながるようなコンテンツづくりを意識している
更新頻度:基本、週1~2本の記事の更新に努めている
効果測定:月間PV数は約110万PV。ユニークユーザー数は約48万UU(収集期間:2021年4月1~30日)。アンケート調査などを通し、ブランド好意度の向上度合いも図っている

メディア開設に至った背景

同メディアを始めたきっかけは。トヨタ自動車のマーケティング領域を担うトヨタ・コニック・プロで、トヨタイムズの運営リーダーを務めている北澤重久氏によると、主な理由は2つ。

ひとつは、豊田社長がラジオ番組に出演して感じたコミュニケーションへの課題感。中京地区のとあるラジオ局で2018年8月から2019年9月まで、番組を持った。そこで、「ニュースでは伝わっていなかったこと、特に想いの部分がしっかり伝わったとの実感が社長の中であったようです」。

もうひとつは、トヨタ自動車が「自動車メーカー」から「モビリティカンパニー」に移り変わろうとする、そうした変化を背景に、インターナルコミュニケーションをより広く捉え直したこと。「当社は世界で約36万人もの従業員を擁する上、自動運転技術の開発などを目的にNTTなどこれまでと異なる業界との連携が進む中、社内報を社内で回覧する、といった従来のインターナルコミュニケーション施策では不十分です」。そこで、情報をウェブに公開してあらゆる人が見られるようにしよう、との考えに至った。

労使交渉も公開

豊田社長肝煎りの施策。それを特徴づける記事のひとつに、労使交渉の様子を如実に語った記事「トヨタ春交渉2021 要求申し入れ」がある。6回のシリーズで、要求申し入れの2021年2月17日から、締結の同年3月17日まで密着している。

本来であれば、企業にとってセンシティブな内容。しかし、春闘開始から妥結までの4週間は、今後の会社の発展を労使共に考えられる絶好の機会。また、交渉結果だけが独り歩きしてしまいがちなテーマだが、その経過こそが実は大事なのでは、との考えからトヨタイムズでの公開を決めたという。

さらに、香川編集長の存在も社長の本気度を示す担保になっている。「取材の前には当然、今回はどういう現場でどういう話が話題として出るかは伝えていますが、それ以外はご自身の言葉で取材していただいています」。

テレビCMでも話題になったスポーツカーのスープラの発表においては、米国デトロイトまで出向いて、香川編集長が豊田社長にインタビュー。「スープラは他の車に比べ販売台数や収益につながりにくいのです。それをなぜ豊田章男は開発したのか、世間の多くは疑問に思っていたはず。その声を代弁して投げ掛けることを香川さんに担っていただいています」。

新たに森田記者も参加!

そんな編集部にニューフェイスが。それが、テレビ東京の元アナウンサー森田京之介記者だ。今や八面六臂の活躍を見せる。「震災から10年を経た東北の現場に社長らが訪問した際も、随行。記者懇談では、他の記者と肩を並べて質問していました」。

そんな森田記者だが、実は彼自身、今のポジションは予想していなかったという。「意外に思われるでしょうが、彼は元々、当社で働きたい、という意思のもと、転職エージェントを介して、応募。一般の受験者と同様に採用試験を受けて採用された社員です」。

そして、採用後は広報に。トヨタイムズ記者になった背景は。「香川さんを編集長とする現体制も2年が続いていて、違う方向性も打ち出していきたいという話が挙がっていました。その時、森田記者の名前が浮上し、あれよあれよと話が進んだわけです」。

本気、だから続く

2021年2月、ウェブ版の記事を再編集してつくられた『トヨタイムズmagazine』。

トヨタイムズの目的。それは、トヨタのファンを増やすこと。つまり、短期的な収益を上げるツールではない。しかし、長期の視点に立って運営、企業自体がメディア化し、昨今では森田記者の登用や雑誌の刊行など、未だ高いモチベーションを維持できている。なぜか。それは、豊田社長の本気度に帰結する、と北澤氏。

「ある意味、編集長は『豊田章男』です。例えば、会社のイメージを左右する重要な情報を発信する際には、社長と直接やり取りしています」。“トップの本気度”、それこそがオウンドメディア成功の秘訣だ、と語った。

特に反響の大きかった記事

生産量を「100倍」にしたトヨタ生産方式の秘密(2020年8月公開)

コロナ対策として医療用防護ガウンの需要が拡大。名古屋の老舗雨合羽メーカーの生産が追いつかない、という窮状を救うため、トヨタ自動車はじめ7社が立ち上がった。トヨタ自動車は、独自の生産工程の最適化策「トヨタ生産方式(TPS)」をガウンの製造プロセスに取り入れた。「実はTPSって『道具は定位置に置きましょう』などの単純な改善の積み重ねでもあり、そのことが記事を通じてよく分かるようになっています」(北澤氏)。

必要なのは正しい理解 カーボンニュートラルの基礎知識(2021年4月公開)

情報やデータを視覚的に表現した「インフォグラフィックス」を採用し、カーボンニュートラル(=CO2の排出量を減らすことと、排出せざるを得なかった分は「吸収」「除去」することで、「全体としてゼロにする」ことを目指したもの)が小中学生にも分かるように、との考えのもと、つくられた。

広報会議2021年7月号

【通巻150号記念】
広報が果たすべき役割は拡大している

誌面で振り返る
“広報力”が問われた・活きた出来事

REPORT
広報力で企業は差がついたのか
危機管理広報が企業を助ける
浅見隆行(弁護士)

【特集】
新サービスPRからリスク対応まで
社会の変化に対応する
「状況判断」力

これからの広報観1
周囲を喜ばせるパワーをサッカーの広報活動へ
発信後のリアクションが、成長機会になる
中村憲剛(川崎フロンターレFRO)

これからの広報観2
今や誰でも社外に発信できる時代に
広報は「オーガナイズ」する存在に進化すべき
青野慶久(サイボウズ代表取締役社長)

ベテラン広報に聞いた
取り組んだ改革、広報の醍醐味
アメリカン・エキスプレス/オムロン/サイバーエージェント
新生銀行/スクウェア・エニックス・ホールディングス/ダイドードリンコ
帝人/流山市役所/プリンスホテル/メルカリ
リスト/MSD/日本電気(NEC)/東邦レオ

著者に聞く広報観
広報は、報道・表現の自由を守り育てる一員
高木 徹(『戦争広告代理店』著者、NHK国際放送局 チーフ・プロデューサー)

これからの広報観3
どんな発信もコミュニケーションも
「伝わる」にはタイミングと選択
刈屋 富士雄(立飛ホールディングス スポーツプロデューサー)

これからの広報観4
対話で得た評判と実態の乖離を問い
無形資産づくり、ESG経営の担い手に
伊藤邦雄(一橋大学 CFO教育研究センター長)

なぜ「パーパス」「従業員エンゲージメント」に
関する取り組みが必要なのか
片岸雅啓(経済産業省 経済産業政策局 産業人材課)

CASE 中の人に聞いた
社会動向との接点を活かした
投稿事例6選
全日本空輸/太田記念美術館/日本マクドナルド
キングジム/スターバックスコーヒー ジャパン/森田アルミ工業