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新設されたブランド戦略の部門で、中長期の広報計画を初めて策定

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広島電鉄は、電車・バス・不動産などの事業を展開している地域密着型の企業だ。最近では、いち早く次世代移動サービス「MaaS(マース)」にも取り組んでいる。現在、JR広島駅南口広場の再整備が進んでおり、2025年春には新たなJR広島駅ビルに路面電車の乗り入れが実現する予定だ。

2021年4月に広報・ブランド戦略室が立ち上がり、広報計画の立案などを担う市川 恭子氏に、「第29期 広報担当者養成講座」の受講のきっかけやその後に取り組んできたことを聞いた。

広島電鉄
広報・ブランド戦略室 課長
市川 恭子氏

—現在の広報体制とミッションについてお聞かせください。
広報・ブランド戦略室は6人体制で、対外広報、社内広報、ホームページや公式SNSの運営を担当しています。

地元広島で当社はよく知られていますが、「電車・バスの会社」とイメージされる方がほとんどです。これからの私たちは「電車やバス事業にとどまらず、まちづくりを通じて広島の街の未来に貢献する企業グループ」を目指しています。そしてこのビジョンの実現のために、グループ横断で不動産・まちづくり・MaaSなど事業を多角化していく方針です。

このように多角化を通じて、広島電鉄が電車とバスだけの会社ではなく、「県内の方と県外の方の“移動したい”という気持ちを盛り上げる。そして人が移動して交流する。その結果として街が活性化し、経済が活性化する」きっかけを提供していく企業グループであると認知してもらうことを広報活動のミッションとしています。

—これまでのキャリアを教えてください。
2002年4月入社し、電車・バス共通のサービス等の企画や経営政策部門で役員会の事務局業務などを経て、総務課で株式関係の庶務や社外広報に携わるようになりました。

産休・育休を経て復職し、経営政策部門や広島市役所への出向ののち、2020年4月に総務課に戻り広報を担当。この4月に広報部門が広報・ブランド戦略室として総務課から独立しました。

—20年6月のオンライン開講『第29期 広報担当者養成講座』を受講した経緯は。
市役所への出向から戻った時期でした。不在の期間に当社がどう変化していたのか分からないうえ、コロナ禍のため電車・バスの減便などの影響が出ていた時期でした。

広報を頑張りたい気持ちは強いものの、4~5月の実務を通して、以前のやり方で広報を続けても上手くいかないことを実感していました。

そうした時に、偶然Web広告で講座のことを知り、自費で受講しました。自費を選んだ理由は、子育てとの両立の不安でした。会社の経費で受講をすると、子育てを理由に講義を欠席することがあったら申し訳ない、と考えていました。また性格上、身銭を切ったほうが本気になるので、覚悟を決めました。

—実際に両立はできましたか。
概ねできたと思います。子どもの迎えが遅れて19時からの講義に間に合わないこともよくありましたが、そうした日でも19時半には受講できました。そうした時は有料の動画補講を活用したので、すべての講義を無事に修了できました。

講義のある毎週金曜日は、退社して途中のスーパーでお弁当を買い、(当時)4歳の息子を保育園に迎えに行き、帰宅して息子にお弁当を食べさせながら「受講が終わるまでテレビを見てね」と話していました。今思い返しても、3カ月間走り抜けた感覚があります(笑)。

講座がオンラインで開講されたことも良かったです。仮に広島で教室開催の講座があったとしても、修了できたか分かりません。

今回の受講を通して仕事と子育てをしながらでも「やろうと思えばできるな」という発見がありましたし、子育てを言い訳に学びをやめることはあってはいけない、と自分を戒めることもできました。

—講義からどんなことを学びましたか。また、具体的に実践していることを教えてください。
修了から1年が経ちますが、広報活動へのモチベーションはいっそう高まっており、あらためて受講して良かったと思います。

特に変化が大きかったことは、プレスリリースの書き方です。講座を通して、「記者の方が、プレスリリースをどう見てニュース価値を判断しているか」を学べました。

一昨年の19年度までは、各事業部署または事業部門が書いたプレスリリースをチェックして配信するという流れが基本でした。受講を通して「発信する以上は読まれたい、記者の方にニュースとしての価値を見出してほしい」という気持ちになり、まずは講義で学んだ「見出しの付け方」を取り入れ、図表を入れるようになりました。

また、各事業部署や事業部門から持ち込まれたプレスリリースの原案に「こうしたらもっと良くなると思うのですが、いかがですか?」と提案をするようになりました。

それまではプレスリリースを配信しっぱなしにしていたのですが、配信後、実際にメディアの方から問い合わせがあったか、報道されたかなど、結果に結びついたかどうかを表で記録するようにもなりました。

—表にしてみることで気づきはありましたか?
本当にアピールしたいと思っていたことは、こちらが期待したほど露出につながっていなかった、ということに気づきました。思いを込めたプレスリリースが取材や露出につながらず、どちらかというと事務的にリリースした電車やバスの減便の方が掲載されることが多かったのです。

ただ、そうした中で私たちも驚くほど反響があったのが、奈良県生駒市の小学校によるオンライン修学旅行に協力し、今も営業運行している「被爆電車」にオンラインで乗車してもらう取り組みのリリースでした。

オンラインでの乗車体験は当社として初めてでしたが、生駒市さんから提案をいただき、当社としても新たな取り組みとしてチャレンジしました。

「撮れる絵」の訴求を工夫した被爆電車のオンライン修学旅行のプレスリリース

このプレスリリースでは、講座で学んだように「メディアの方がどんな絵が取れるのかを想像できる写真」を入れ、取り組みの背景となったストーリーを丁寧に記載しました。

生駒市側でもオンライン修学旅行についてプレスリリースが行われた相乗効果もあり、結果として、両方のエリアの記者に関心を持っていただき、広島県内と関西地区で民放の系列局同士が連携し、 お互いが撮影した映像を使って両方の地域で報道していただくこともできました。

その他にも、広島側だけでテレビ3局、新聞4紙 で露出があり、社外広報としては、昨年度もっとも成果をあげました。

—その他に講座で学んで変化を感じていることを教えてください。
冒頭の講義で、そもそも広報とは「社会と会社の間に立って、結ぶ存在である」と学びました。この立ち位置を知ることができ、以降の広報活動で一貫した価値観として身についています。また、情報を発信する前に、メディアや生活者の方に、「この情報を見たらどう思われるのか」と一歩引いて想像して修正できるようになりました。

会社にいると、どうしても会社よりの考えになってしまいますが、「世の中の方が見ると私たちはどう映るのか」と社会の目を意識して、アピールしたい情報を編集して発信しています。

—広報部門のマネージャーとして、これから実践していきたいことは何ですか。
まずは、講座を通して学んだ知識と、実践を通して得た経験をメンバーに共有したいです。そしてゆくゆくは「グループ会社全体に広報マインドを持った社員を増やしたい」です。

当社は事業が多岐に渡るうえに、グループ企業が16社あり、社員自身が社内の他部署やグループ内のことをよく知らないのが現状です。今年度はグループを含めたインナー広報を強化し「広報は広報担当だけがやるものではなく、みんなが広報の視点をもって仕事に取り組めるようにしたい」と考えます。

そのための第一歩として、この4月から、各部署に配置した社内報の編集委員を広報委員に格上げしました。「こんな情報があるのだけれど」と気軽に声をかけてもらえれば相談に乗って一緒に発信方法を考え、そこから広報が楽しいものだと思ってもらえる関係づくりを目指しています。

また、現在JR広島駅南口広場の再整備が進み、2025年春には当社の電車が駅ビルに高架で乗り入れ、広島の玄関口が大きく変わります。

この時期までに冒頭お話したビジョンとミッションと達成するためにも、まずはグループ広報を着実に行っていくための体制づくりに注力します。そして、そこからグループ各社の社員が持っている違った目線と考え方を取り入れて、社外に向けて価値のある情報を広報していきたいです。

そしてその先では、広報担当が事業部署や社外の関係先と積極的に連携して、広島の街に人が集いたいと思うような仕掛けや話題をつくり、広島の街の活性化につながるようなコミュニケーションを生み出していきたいです。

広報の考え方を体系的に習得するため、市川氏が受講した講座は……
広報担当者養成講座でした。
 
広報業務の重要性が高まる一方で、業務の基本、また新常態で広報がカバーする分野を実務に活かせるレベルまでを学ぶ機会は少ないものです。
 
本講座は、広報に求められる資質、社内情報が集まる仕組み、報道関係者への対応など広報が身につけておきたい基本を全10回でマスターできるカリキュラムとなっています。
 

<次回の開催日程 〔オンライン開講〕>

■講義日程
第33期 2021年9月3日(金)開催

■受講定員
80名を予定
 

詳細はこちら

 
お問い合わせ
株式会社宣伝会議 教育事業部
MAIL:
info-educ@sendenkaigi.co.jp