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世界で起こるビジネスモデルの大変革 その時、広告産業はどう変われるのか?

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日本経済を支えてきたメーカーをはじめとする多くの企業が、いまビジネスモデルを大きく変えざるを得ない、イノベーションの必要性に直面しています。それでは、はたして「広告産業」に変化、そして進化は起きているのでしょうか。
企業のIT化戦略やイノベーションを専門に研究し、ビジネス界全体の変革を見てきた早稲田大学ビジネススクールの根来龍之教授に、現状の広告産業について考えを聞きました。

月刊『宣伝会議』7月号(6月1日発売)では、「広告産業にイノベーションは起こせるか?」と題し特集を組みました。ここでは、本誌に掲載した記事の一部を公開します。

PF依存と独自化で二極化するマーケティングプロセス

世界的なデジタル化の波に乗り、業種や業態を問わず、企業には組織や仕組みの変革が求められている。

その変革のひとつが、業務の効率化や競争力を上げるための、プロセスのデジタル化だ。

事業会社側においては、マーケティングプロセスをできるだけ自社で行う企業と、プラットフォーム(PF)に依存する企業の二分化が進むと根来教授。「特に大規模な小売業、飲食、ファッション企業の場合、顧客接点をプラットフォームに依存するか、自社で運営するかの選択問題が起こっています」と話す。

「例えばファッションECサイトであるZOZOタウンは、各ブランドからの受託販売業務のビジネスモデルで成り立っている。しかし、大手アパレルメーカーが撤退する動きもありました。その理由は、購買という最も重要な顧客接点を自分たちで持つため。生活者への露出が減って売上が減少したとしても、自社ECに絞ることで価格設定も自分たちでコントロールでき、ブランディングもより思い通りに推し進めることができます」。

ニュースアプリやSNSを使ったクーポン配信も、宣伝広告のプラットフォーム依存といえる。一方で、できるだけ自社アプリですべてを完結させようとする企業もある。

「さらに電子マネーも組み込むことで、集客から購買までマーケティングプロセスを一元的に管理することができる。ワン・トゥ・ワンを推し進めたい企業にとってはプラットフォームに依存することは避けたいけれども、開発にはコストがかかるし、消費者に独自アプリを登録してもらうという壁があるので、簡単にはやめられない」。

また根来教授は、宣伝のためのメディアの活用についても、「若年層への接点を求めて、デジタルに移行せざるを得ない部分がある」と指摘する。実際にテレビCMだけではなく、YouTubeでメイキング映像を公開したり、オウンドメディアで追加情報も加えて展開したりと、ひとつのコンテンツをメディアごとに出しわける企業が増えている。コンテンツが溢れている中で自社メディアをわざわざ見に来てくれる生活者は、自社製品の熱心なファンになってくれる可能性がある。顧客のロイヤルティを高めるためにも、メディアの選択とメディアごとの発信内容を工夫する必要がある。

そして以上のようなプロセスのデジタル化だけでなく、メディアのデジタル化への対応も迫られる。「広告媒体として紙メディアの価値はなくなっていない。しかし、クッキーレスやトラッキング防止の流れはあるものの、セグメント化されてIDに結び付けられた情報を持っているデジタルメディアの価値はさらに高くなるでしょう」。

広告ビジネスの構造変化 新規レイヤーのどこに注力するか?

根来教授は現行の広告ビジネスモデルについて、デジタル領域が拡大することで新たなレイヤー構造が生まれていると話す【図表1】。

「認知から店舗での購入、アフターサービスなど、顧客に関わるマーケティングのプロセスのなかで、広告だけを独立して取り出して考えるのではなく、一連の流れのなかで位置づける傾向は、より強化されていくと考えられます」。

ニーズを探って開発した製品・サービスを、適切なメディアで宣伝して、その効果を分析する。さらに、経営と結び付けた戦略立案までもが、広告ビジネスのレイヤーとして位置付けられるようになってきている。

このように、事業会社側にとって、デジタル化によって、さらにやるべきこと・やれることは増加した。そうしたマーケティングプロセスを一貫してマネジメントする方向性になっていく中で、IT企業やコンサルティング系企業が広告ビジネスに参入する傾向もある。そこで生じるのは、広告会社がどの部分を担えるのかという課題だ。今後、メディアと広告主をつなぐだけにはとどまらず、顧客データの管理・分析を行う「データビジネス」、デジタル化への対応を含む「市場戦略策定ビジネス」にも注力していくことになるだろうと、根来教授は指摘する。

本記事の続きは月刊『宣伝会議』7月号(6月1日発売)に掲載しています。

早稲田大学ビジネススクール 教授
根来 龍之 氏
早稲田大学IT戦略研究所所長。経営情報学会会長、CRM協議会顧問などを歴任。著書に『ビジネスモデル』(SBクリエイティブ)、『集中講義 デジタル戦略』、『プラットフォームの教科書』、『ビジネス思考実験』、『事業創造のロジック』(以上、日経BP)など。

 

月刊『宣伝会議』7月号は、特集企画が満載!
4本の特集から、現代の広告戦略に迫ります。特集1 企業が聞くべきSNSの声とは?「ネット世論と広告炎上」

特集2 大手広告主33社に聞く「コロナ禍の広告戦略」
I-ne、赤城乳業、アサヒ飲料、イデアインターナショナル、NTTドコモ、エバラ食品工業、大塚製薬、カゴメ、カルビー、キッコーマン食品、クレディセゾン、コーセー、ジェーシービー、第一三共ヘルスケア、出前館、東京ガス、東京個別指導学院、日清オイリオグループ、日本たばこ産業、日本ハム、ファンケル、フジッコ、ポーラ、ポッカサッポロフード&ビバレッジ、マンダム、三井住友カード、森永製菓、森永乳業、ヤマハ、ユーグレナ、有楽製菓、ライオン、レノボ・ジャパン

特集3 「ネット広告の体験品質」課題と対策

特別企画「広告産業にイノベーションは起こせるか?」
▽注目の記事を一部ご紹介!

〇世界で起こるビジネスモデルの大変革
その時、広告産業はどう変われるのか?
早稲田大学ビジネススクール 根来龍之

〇創刊から67年、月刊『宣伝会議』の特集で振り返る軌跡

〇「広告・マーケティング」ほど、
データで進化可能な業界はない
データビークル 西内 啓

〇データドリブンな組織づくりで
激変する消費環境に対応する
オープンハウス 加藤勤之

〇広告産業そのもののDXを目指す
「AaaS」が起こすイノベーションとは何か?
博報堂/博報堂DYメディアパートナーズ 安藤元博

〇AaaS は広告主、メディア企業に
どのような価値を提供できるのか?
博報堂DYメディアパートナーズ 藤本良信、飯塚隆博