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香川・小豆島で育てるオリーブ等を理念とともに届ける広報

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井上誠耕園は、瀬戸内海に浮かぶ人口約2万8000人の小豆島(香川県)にある農園で、親子3代にわたって運営を続けてきた。約5000本のオリーブと柑橘類を栽培し、食品や化粧品として加工し、通信販売までを手がけている。3代目が園主となってから24年間、右肩上がりの成長を続けている。

今回は、同社の広報活動について、『第31期 広報担当者養成講座』を修了した渉外広報課の斉藤 仁美氏に聞いた。

井上誠耕園
営業企画部 渉外広報課 兼 販促企画課 兼 商品開発
斉藤 仁美氏

—これまでのキャリアを教えてください。

もともと自然が好きで、大学では社会学を専攻していました。過疎化が進む農村における、里山保全のコミュニティのあり方について研究していました。そこで自然や地域、食に携わる仕事がしたいと思い、当社に入社しました。

通信販売の注文などを受けるコールセンターを半年経験し、その後営業企画部の販促企画課で3年間通販のDMカタログの制作・広告出稿・パッケージ制作を担当しました。また同時期から商品開発も担当し、化粧品の企画開発をしています。

広報業務は2018年秋から渉外広報課を兼任することで始まりました。以前から、「メディアと仕事してみたい」「第三者から当社を評価してもらうにはどうしたらよいか」と考えていて、広報に興味がありました。

—初めての広報活動に苦労したことはありましたか。

広報担当に配属されてから気づいたのですが、それまで経験した販売促進の仕事より、難しさのレベルが一段上がった感覚がありました。

販売促進の仕事では、自社の商品が好きで、その魅力をお客様にも感じていただくことが重要だと考えていました。一方広報の仕事では、商品が好きという気持ちを伝えるだけでは不十分でした。私たちの会社や商品への思いと、メディアの視点とが合致する部分がないと紹介には至らないのです。

「結局商品が売りたいんだな」とメディアの方に思われては嫌がられると感じていました。販売促進の業務に慣れていたため、社会的な目線や意義を見出すことに難しさがありました。発信する情報が思ったように取材や露出につながらないことが悩みでした。

ひとり兼任広報として、過去の当社の広報実績を調べたり書籍を探して、見よう見まねでトライ&エラーを繰り返していました。

—2021年2月のオンライン開講『第31期 広報担当者養成講座』を受講した経緯は。

先ほどの悩みを感じていたこともあるのですが、今後後輩が広報に配属された時にきちんと教えられるだろうかと考え不安になったことがきっかけでした。一度は体系的に学びたいと思いました。

当社は以前から、宣伝会議の講座をそれぞれの部署で受講していました。私も過去に、『ネーミング実践講座』を受講したことがありました。

こうした経緯もあって、営業部長から1日集中講座の受講を推奨されました。「せっかくなら1日で終わる講座よりも体系的に学びたい」と思って宣伝会議のサイトで検索して本講座と見つけ、まずは体験講座を受けました。そして上司に相談し、本講座への受講が決まりました。

—講義を通して考えにどんな変化がありましたか。

広報も「人と人との関わり」なんだな、ということを理解することができました。

広報を始めた頃はとにかくメディアに露出したかったので、要望に合わせその通りに対応するようにしていました。

今はメディアにとっても当社にとってもWin-Winになれるよう、「当社の思いはこうだ」と理解してもらえるように、日頃からコンタクトを取ったり連絡してみるようになりました。

受け身ではなくてこちらから能動的に働きかけることで、理想な広報の露出ができると考え、行動できるようになりました。

—講義内容で実践していることを教えてください。

大きく2つあります。

1つは「ニュースリリースの書き方」です。これまでは思ったことをそのまま書いていましたが、基本の書式やニュースバリューのある言葉を盛り込まないとメディアの目には留まらないことがわかり、改善するようにしました。

また、講義の課題でニュースリリースのリライトをしましたが、自分が提出したリリースが講評されました。「タイトルはインパクトがあって良いですが、タイトルについて本文での解説が弱い」と指摘されました。それ以降、タイトルのニュース性と同じくらい本文にも力を入れるようになりました。

受講以降、メディアの立場になってニュース性を考え、リリースを作成できるようになったと感じています。

2つ目は、「戦略的広報」です。広報は企業の人間力を社会に見せることと考え、そのために「広報のPDCAをきちんと回すための考え方」を学んで実践しました。

—どんな成果が出ましたか。

受講期間中から、同じテーマで日経新聞の四国版と関西版に露出することができました。

取材前から報道されたい理想の内容を決めて、それが実現するように働きかける大切さと実現のためのポイントを学びました。

「こんなふうに掲載されたらいいな」と思ったことを箇条書きして記者の方にお渡ししたところ、「この項目で取材してみたいです」という返事をいただいたのです。

また、取材の対応も大きく変わりました。以前であれば、取材の仕事は時間と場所をセッティングすることだと思っていました。今では、単に取材をセッティングするのではなく、事前に記者さん・園主とそれぞれが伝えたいこと・記事にしたいことをすり合わるようになりました。加えて、業績など当社に関わる最新の数字を確認し、園主と総務と公開して良い数字の基準を決めて取材に臨むようになりました。

この取り組みが功を奏して事前に理想としていた「耕作放棄地について地域に循環を巡らせること」が記事のタイトルに採用されました。

広報を担当して初めて、商品の露出ではなく当社の理念とそれをもとにした取り組みが報じられ、驚いたとともに嬉しくなりました。

「こんなふうに掲載されたらいいな」と箇条書きした内容をもとに作成したプレスリリース

—メディアの露出を経て、周囲の方の反響は変わりましたか。

メディアに紹介する際に、日経新聞に当社の理念とその活動を紹介されたと伝えることで、初めてお会いする記者の方にも信頼していただきやすくなったと感じています。

—その他に講義で印象に残っていることはありますか。

テレビ番組のプロデューサーが登壇した講義で、今まで知らなかった「テレビでの取り上げ方」を知ることができたことです。

例えば、リサーチャーの情報の探し方や番組が放送されるまでの仕組みを知り、物語・人など、面白いことを常に発信し続けることが重要であることに気づくことができました。

短文で自社をアピールする個人ワークがあったのですが、ここで当社が電話で通信販売の注文をとっていることに驚かれました。これまでコールセンターの取材を受けることはなかったのですが、それは私が発信していなかったからではないか、と思うようになりました。

当社は6次産業を行っているため、農園で働く方、コールセンターで働く方など、従業員の皆さんがそれぞれ違った働き方をしているので、今後は積極的に発信していこうと思いました。

他にも、当社でやったらこんな風にできそうで、面白そうだなとワクワクしたことがたくさんありました。

—時間のやりくりなど受講にあたって工夫した点はありましたか。

朝礼の場で「今日は講座を受講します」と宣言していました。これまで金曜日といえば、土日にしっかり休みをとるために残業をしがちでした。ただ、受講の期間はそれができなくなるので、同じ週の月曜から木曜に仕事を割り振ってやるきるように心がけました。思ったよりも、上手くマネジメントができ、良い習慣が身に付いたと感じるので、今後も維持したいです。

—これから実践したい広報活動と狙いを教えてください。

新年度が6月から始まっているのですが、今期の広報計画は「量から質へ」として、社外広報・社内広報・採用広報でそれぞれ取り組みたいことを決めました。

背景には、会社の成長とともに島内での影響力が大きくなっていると感じることがあります。当社の理念の根底には、「農業で以て地域を豊かにし、恵みのある大地を次の世代の子どもたちに残したい」という思いがあります。

それが負の遺産にならないように売り先を確保したり、オリーブ自体が持つ可能性や魅力を広報し、島の子供達につないでいきたいと考えています。

社外広報については、コロナ禍が続く今、年に1度開催しているメディアの方向けのツアーを開催する予定です。より当社の理念に共感いただいている方に向けて、少人数で深い内容を体験いただくようにしたいと思います。

また、社員が取材されるようになりたいです。講座でポイントも学びましたが、メディアに掲載されることで本人のモチベーションが高まり、記事を通して当社の働き方を伝えられるからです。

次に社内広報についてです。会社の成長とともに仕事場が島の中に点在するようなっています。島内とはいえ移動してコミュニケーションするのは大変で、全員が集まる全体朝礼は月に一度しかありません。拠点の違うメンバー間での情報共有や一体感が高められるように、社内広報の基盤を整備したいです。

最後に採用広報です。当社の拠点は小豆島で、島に来て生活してもらうことが必要になります。ただ、そのハードルはとても高く、求職者の方に目的と夢をしっかり持って来ていただかないと、一緒に長く働き続けていただくことができません。

そこで、より働きがいを感じてもらえるような露出を、これまでアプローチしてこなかった経営・採用・人材系のメディアに露出をしていきたいです。

広報の考え方を体系的に習得するため、斉藤氏が受講した講座は……
広報担当者養成講座でした。
 
広報業務の重要性が高まる一方で、業務の基本、また新常態で広報がカバーする分野を実務に活かせるレベルまでを学ぶ機会は少ないものです。

本講座は、広報に求められる資質、社内情報が集まる仕組み、報道関係者への対応など広報が身につけておきたい基本を全10回でマスターできるカリキュラムとなっています。

 

<次回の開催日程 〔オンライン開講〕>

■講義日程
第33期 2021年9月3日(金)開催

■受講定員
80名を予定
 

詳細はこちら

 
お問い合わせ
株式会社宣伝会議 教育事業部
MAIL:
info-educ@sendenkaigi.co.jp