野老朝雄氏がデザイン、回収プラスチックから東京2020表彰台ができるまで

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色とりどりのプラスチックから「藍色」を表現

日常生活から出てくるプラスチックから、世界のアスリートたちを称える表彰台を生み出す–。世界的にサステナビリティが重視されている今、意義深いプロジェクトである一方で、実作業においては前例がない取り組みでもある。プラスチックの選別、選手がのぼる表彰台としての強度の担保、再利用の際の着色の難しさなど、専門家らが研究してきた先端技術の融合がなければクリアできない課題が多数あった。なおかつ、納期まで半年強と期間が限られていた。

HARMONISED CHEQUERED PODIUM(制作スタッフによる表彰台のメイキング映像)

基本設計としての野老氏のデザインとプラスチックのリサイクルの両方を実現するためには、3Dプリンタで製作する必要があった。そこで今回の表彰台のパーツを製作するために、京都にあるエス.ラボ社に協力を依頼。高速化、高精度化を実現しつつ、造形の安定性が求められるため、本プロジェクト専用の12基のペレット式3Dプリンタを製造した。

本プロジェクトのために製造された3Dプリンタ。

加えて「3Dプリンティングに適した材料が必要」という点も考慮しなければならない。大きなハードルのひとつは、回収したプラスチックの強度と3Dプリンティング時の安定性だ。まず、全国の小学校やイオンで回収された容器は洗浄したのち破砕し、選別をした。その上でナノダックス社の協力を得て、プラスチックにグラスウールを混ぜ、強度を担保するとともに3Dプリント時の造形の安定性も図った。

「プラスチックの特徴として、熱で溶かして固める工程を何度も繰り返すと劣化してしまう。表彰台としての強度を高めるために、グラスウールという素材を入れています。強度を試すため、配合する比率を何度もテストしました」(平本氏)。

3Dプリンタを使った試作の工程。

そして今回、特に難航したのが回収した色とりどりのプラスチックから藍色を生み出すという工程だ。通常は白いプラスチックに色を足して着色するが、再利用の場合は既に色のついたプラスチックを回収して藍色にする必要がある。これは前例がないことだ。プラスチックの顔料を扱うスター色素工業で何十パターンも試し、藍色の再現を目指した。

藍色を再現するため、何十パターンも試作した。

藍色をプロダクト化すると角度や照明の当たり方によって色の見え方が変化する。そこで、屋内・屋外問わず、日中の自然光でも夜間の照明でも常に藍色が出るよう、3Dプリントの特性も考慮した凹凸のあるデザインとした。

また、表彰台の中央部にあるオリンピック・パラリンピックのシンボルとなるファイブリングス、スリーアギトスの部分の製作は、聖火リレーのトーチなどと同様にLIXILが協力。東日本大震災の仮設住宅で使われたアルミ建築廃材の再生利用となっている。

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