人を追いかける広告から出稿する“面”を重視した広告へ
iOS 14.5以降ではアプリトラッキング透明性の仕組みが導入されています。これについてアプリの調査会社であるFlurry Analytics社は、アメリカのiOS 14.5ユーザーの96%が追跡を無効にした可能性を示す調査結果を発表しました。またAppleは、「iPhoneはプライバシーを守るスマートフォン」ということを前面に押し出したCMもアメリカで放映しています。
日本はこのような欧米の事例と比較すると、データを取得されることに対する消費者の理解はまだ少ない傾向にありますが、この流れは近いうちに日本にもやってくるでしょう。
このような風潮が社会で生まれている中で、今後、顧客データを活用したデジタル広告は、顧客を追いかけるような仕組みではなく、番組内容や時間帯などから視聴者像を描いて出稿するテレビCMのように、サイトのジャンルや記事内容といった文脈に応じた広告を“面”に対して出稿し、読者の関心事項に近い提案をする存在となれば、受け入れられやすくなるのではないかと思います。
また、サードパーティークッキー規制の流れを受けて、国内のパブリッシャー側にも、ログインの仕組みを用意することでユニークIDを取得する動きなどが見えつつありますが、まだまだ進んでいるとは言えない状況です。
それでもなお、オーディエンスをとらえたい広告主企業はファーストパーティーデータを持つFacebookやYouTubeに出稿が偏るといった状況も見られています。
しかし、消費者のプライバシーに対する懸念、安易な情報提供を良しとしない傾向が今後主流になります。それに伴って先に述べたように、記事の文脈に応じた“面”に対する出稿が効果的になる時代、多様なメディアで生活者との多様なタッチポイントを持つことが、広告主企業の目的の達成にとって重要になります。
そのためにも、まずはパブリッシャーなど、メディアを持つ企業が、ファーストパーティーデータを取得できる環境を整えることが必要ではないでしょうか。
ファーストパーティーデータを取得するにあたり企業が改善すべきは、生活者に向けた説明方法です。現在のプライバシーポリシーなどは、法を犯さないよう表示している、という表面的なものが多いです。取得するデータの種類や、取得する目的を、簡潔にわかりやすく伝える。企業は積極的に消費者と対話する仕組みをつくるべきです。その際、氏名や住所といった個人を特定できる情報に限らず、クッキーデータに準ずるものも、同じような扱いをすることが必要になります。
2021年はクッキーレス時代に向けた準備をする年です。クッキーが規制されるとどのような影響を受けるのかを、広告主、広告会社、パブリッシャーなどそれぞれが理解し、いざ規制された時に慌てなくて済むような環境を整える1年になるのではないでしょうか。
Teads Japan
Managing Director
今村幸彦氏
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