女子大学が年間600件以上メディアに掲載された秘訣とは

share

学校法人昭和女子大学は、こども園から大学院までを運営する学校法人だ。東京・三軒茶屋のほか、米国ボストンにキャンパスがある。また米ペンシルベニア州立テンプル大学の日本校を敷地内に誘致し、キャンパスの国際化を推進している。

また、「生き方・働き方を設計する力」を身につけることを目的に様々なキャリア教育・キャリア支援をし、「力強い女性の育成」に力を入れている。実就職率においては、11年連続女子大No.1である。(2021年7月21日現在・大学通信調べ)。

今回は、学校法人全体の広報活動について、「第27期 広報担当者養成講座」を2018年9月に修了した広報部課長の梅沢美紀氏に聞いた。

昭和女子大学 広報部 課長
梅沢 美紀氏

—これまでのキャリアについてお聞かせください。

外資系の広告会社で化粧品のキャンペーンなどを担当したのち、北欧の家具小売の会社に転職して10年間、ロイヤルティ会員向けのマーケティングと広告キャンペーンを担当しました。

両社では、誰に何をどのぐらい販売するかという短期的な目標と、中長期的なブランディングのバランスをとりながら仕事をしていました。

家具小売業の時に大きな広報露出があり、それが起点となって、日本での知名度だけではなく、社会的な存在価値が上昇しました。

それ以降、組織の価値を向上させる広報に軸足をおきたいと思うようになりました。

—学校法人の広報担当にキャリアチェンジした理由は。

中長期的なブランディング、そしてより専門的に組織の価値を向上させる広報に携わりたいと思っていました。そんな時に、偶然読んでいた新聞に、本学の理事長のインタビュー記事がありました。

記事は「日本社会は女性だから乗り越えなくてはいけない課題が多く、女性が自らの人生を切り開く能力を身に付ける機会を提供することがこれからの女子大学の役割だ」と締めくくられていました。

私は、前職の2社とも社長や上司が女性であったため、仕事において性別を意識することはありませんでした。この記事をきっかけに、改めてジェンダーギャップを認識するとともに、女子大が果たす社会的な意義に感銘を受けました。

また、この時期は、娘の進学について考え始めたタイミングでもありました。娘も含め、多くの女性が自信を持ち、人生を拓く力を身につけられる環境づくりに貢献したいという思いもありました。

はじめは興味本位で本学について調べ、ご縁があって入職。希望をした広報職に着任することができました。

—当時の広報部はどんな体制でしたか。

ちょうど広報体制が大きく変わる時期でした。

それまでは、入学志願者を増やすための活動であり、そのために大学の価値を高めることが目的とされていたと聞いています。

着任のタイミングで広報の目的が刷新され、大学だけではなく、こども園から大学院までの学園全体の価値を高める広報が求められるようになりました。

私以外に外部から新たに2人が加わり、新しい体制で広報活動を始めることになりました。

—着任2ヶ月後の2018年6月に開講した「第27期 広報担当者養成講座」を受講されました。

前職の経験から、マーケティングと広報はどちらも情報発信ではあるものの、求められるスキルや実務が違うことは分かっていました。

具体的には、マーケティングは市場のニーズに応えて売上を上げることで、広報は組織と企業の価値を上げることです。

これまでマーケティングを専門としていた私にとって、広報を専門とするのはキャリアとして初めての経験です。なんとなく知っている広報を、基礎からしっかり学び直す必要があると思いました。

これまでの職務で「宣伝会議」に関わることがあったため、宣伝会議で講座を調べました。そこで「第27期 広報担当者養成講座」の体験講座を見つけて参加し、そのまま受講を決めました。

—講義を通して考えにどんな変化がありましたか。

「ステークホルダーとは誰であるか」を全く違った視点で考えられるようになりました。

前職ではステークホルダーといえば、消費者とメディアが中心でした。

しかし、講義では「広報活動でのステークホルダーは多岐にわたる。メディアはあくまでそのひとつであり、メディア向けの広報活動は、多様なステークホルダーに伝えるべき情報を届ける手段として実施すべき」と学びました。

そこで早速、志願者とその保護者・地域の方・卒業生・メディア、そして在学生・教職員など、本学のステークホルダーを洗い出し、それぞれの方とどのような関係を築くべきか整理しました。

そして、各々のステークホルダーと丁寧なコミュニケーションをし、学園に対する満足度を高め、その事実を外部に発信して、その情報が循環する環境をつくることが重要だ、という結論に至りました。

また、この頃は娘が保育園に入ったタイミングで仕事以外で自分の時間を確保するのが難しく、ベビーシッターを雇って受講をしていました。

懇親会などの機会に他の受講者の方と話してみると、思った以上に同じ年齢のお子さんを育てながら講座を受講している方がたくさんいらっしゃいました。

同じ年代の子供を持つ親ならではの共感できることが多くあり、今も連絡を取り合っている方がいます。

—修了後、学内でのインターナル・コミュニケーションを工夫して、2020年度は600件以上のメディア露出があったと聞きました。

私たちが広報を始めた2018年度の掲載実績は280件だったのですが、取り組んできたことが結果につながり始めていると感じます。

例えばニュースリリースの発信量1つをとっても、2018年度は年間で20本であったものが、2020年度は60本の発信ができました。

これはひとえに、ニュースが広報部に集まるように地道に働きかけ続けたことが功を奏したと感じています。

—学内に働きかける時はどんなことを心がけていましたか。

はじめの1年はとにかく学内をウロウロして、ニュースになりそうなことを教員や職員に聞いて回ったり、学科や部門で発信していることを勉強したりしました。2年目は「これはニュースになりますか?」と教員や職員の方から相談が来るようになりました。

それ以降は、講義の学びを生かして学内で得た情報をどんどん発信したことで、着実にメディアの掲載が増えていきました。

そして、プレスリリースや、メディア掲載情報を各部門長を伝えていきました。そうすることで、部門長から「他の学科がやっているなら、私の学科でも出しましょう」と、広報部に情報がさらに集まるようになりました。

こうしたインターナル・コミュニケーション強化と並行して、大学や教育関連の記事を書いている記者の方を地道に探し続け、グローバル・キャリアなどテーマを絞って元の記事以上のニュース・バリューがある情報を個別にご連絡するようにしていました。

これらの取り組みをコツコツやり続けたからこそ、年間600件の掲載実績が得られたと感じます。

—なかでも反響が大きかったニュースは何でしたか?

2021年2月に世間を賑わせた「アンコンシャス・バイアス」についての広報対応です。

東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の森喜朗会長(当時)が、「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」と発言し、問題になりました。

森氏がかつて会長を務めていた日本ラグビー協会で、在任中に唯一人だった女性理事が本学の教員でした。協会からは外からの目線による中立で率直な意見を期待されて理事に就任していましたが、図らずも注目を集めることになりました。

これこそが、女子大の存在意義を表明する絶好の機会だと考え、当人を通じて、「性別に関係なく、だれもが生きやすい社会」の実現に向けて、現代社会にあるアンコンシャス・バイアスに挑む昭和女子大学の姿勢を表明しました。

報道ではどうしても、発言の一部分だけが切り取られてしまうが、本当の問題は「アンコンシャス・バイアス」だということ。

人は誰しも無意識の偏見を持っていることがあるということ、こうした偏見は意識をしないと解消されないこと。

本学が女子大だからこそ持てる視点、発言、行動をもとに、関連した授業などで「アンコンシャス・バイアス」の解消に取り組んでいる実績を広報として紹介するようにしました。

結果として、多くのメディアに取り上げられ、「アンコンシャス・バイアス」の問題提起のきっかけとなりましたが、同時に学生がこのことを通して、無意識のバイアスに臆せず、勇気をもって発言することの重要性を間近で体験できたことは教育的な意味合いも大きかったと思います。

「アンコンシャス・バイアス」の認知向上のために発信した情報例

—受講から4年間メディアの露出を広げていくことで、周囲の反応は変わりましたか。

本学がステークホルダーの方々から「(具体的に)こんなことをやっている女子大学と以前よりは感じていただけるようになった実感があります。

また、2018年当初、広報部のメンバーは全員広報の専門家ではないため不安が尽きなかったのですが、活動を続けてきたことで、ステークホルダーの方々から「この学園の取り組みは素晴らしいですね!」と直接言っていただける回数が増えました。

こうした積み重ねがあって、今ではメンバーたちが自信を持って広報に取り組んでいます。

また入職当時、教員や職員の方々から「広報部の仕事ってどんなものなのかな?」と思われている印象があったのですが、今では「学園の良いことをさまざまな人に伝える価値向上の仕事をしている」と興味を持っていただけていると感じています。

—これから実践したい広報活動とその狙いを教えてください。

まず『広報担当者養成講座』の受講を通して、広報のあるべき姿や必要なスキルを学び実践していくことで、受講前とは比べ物にならないほど視野と実績が広がりました。

これから注力したいと思っているのは「本学で頑張っている学生を応援する」ということです。例えば、卒業後に「この学校を卒業してよかった」「卒業後にここで働きたい」と誇りに思えるようにしたいですし、学生の期間に生き方・働き方、力強さを身につけ、自己肯定感を高め、自信を持って社会に出ていけるよう、広報だからできることをやりたいと思っています。

また本学は、中身で勝負できる自信があります。もし受験生の方が有名大学と本学の両方に合格したら、本学を選んでいただけるような広報をしていきたいです。

そして、日本におけるジェンダーギャップの解消は、まだ道半ばと感じています。女子大学から発信し、社会全体でジェンダーギャップの解消を図っていくような広報活動をしていきたいです。

広報の考え方を体系的に習得するため、梅沢氏が受講した講座は……
広報担当者養成講座でした。
 

広報業務の重要性が高まる一方で、業務の基本、また新常態で広報がカバーする分野を実務に活かせるレベルまでを学ぶ機会は少ないものです。

本講座は、広報に求められる資質、社内情報が集まる仕組み、報道関係者への対応など広報が身につけておきたい基本を全10回でマスターできるカリキュラムとなっています。

 

<次回の開催日程 〔オンライン開講〕>

■講義日程
第33期 2021年9月3日(金)開催

■受講定員
80名を予定
 

詳細はこちら

 
お問い合わせ
株式会社宣伝会議 教育事業部
MAIL:
info-educ@sendenkaigi.co.jp

Follow Us