コロナ禍での適切な情報発信とメディア露出を実現した、ダイキン工業のブランド戦略

「空気で答えを出す会社」を企業スローガンに掲げるダイキン工業のコロナ禍でのコミュニケーション施策が、昨年度の「PRアワードグランプリ2020」(日本パブリックリレーションズ協会主催)に選ばれた。

一連の取り組みが奏功した背景には、空調機器の専業メーカーとしてのポジショニングを意識したダイキンのブランド戦略があった。同社のコミュニケーション施策を率いる片山義丈氏と、PR施策をサポートしてきたインテグレートの山田まさる氏に今回の取り組みについて聞いた。

※この対談は、社会情報大学院大学が2021年6月20日に開催したセミナー「ダイキン工業に学ぶ『コロナ禍を生き残るためのPR戦略』」で行われたものです。

片山義丈氏(ダイキン工業 総務部広告宣伝グループ長 部長)
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山田まさる氏(コムデックス 代表取締役社長/インテグレート 特別顧問)

総合家電メーカーとは異なるポジションを築く

山田:ダイキンさんの「PRアワードグランプリ」受賞理由は、「自社の打ち出し方をしっかりと定め、コロナ禍のなかで『空気で答えを出す会社』という社会的存在意義を伝え、競合他社との鮮明な差別化を図ったこと。そしてこの取り組みはコーポレート・コミュニケーションが主体ではあるものの、商品の販売実績といったマーケティング的な成果にまで波及しており、企業評価を高めつつ、それがマーケティングにも寄与するというこれからの理想的なコミュニケーション」でした。どうしてそれが成し遂げられたのでしょうか?

片山:エアコンは買い替えサイクルが平均で約13年といわれ、生活者にとって日ごろは全く興味を持たれていない商品です。ところが、いざ壊れると買い替えまでの検討期間は1週間程度と短く、その時に純粋想起で3位以内に入っていないと選んでもらえません。

片山 義丈氏

1988年ダイキン工業入社、総務部宣伝課、1996年広報部、2000年広告宣伝・WEB担当課長を経て 2007年より現職。業界5位のダイキンのルームエアコンを一躍トップに押し上げた新ブランド「うるるとさらら」の導入、ゆるキャラ「ぴちょんくん」ブームに携わる。統合型マーケティングコミュニケーションによる企業ブランドと商品ブランド構築、広告メディア購入、グローバルグループWEBサイト統括を担当。

 

競合は、圧倒的な広告出稿量とブランド力を持つ総合家電メーカーなので、それらと同列に並んで勝つのは難しい。そこで「家電」のカテゴリーのほかに新しく「エアコン」というカテゴリーをつくろうと考えました。

まだエアコンに関心の薄い層に、「空調総合メーカーダイキン=空気の会社」という認知を獲得するための取り組みを20年以上続けています。これがダイキンのブランドづくりの基礎となる部分です。「空気で答えを出す会社」は、約3年前にスローガンとして掲げました。空気のあらゆる課題に答えを出す企業であることを表現しています。

山田:広報やPRといった枠を超え統合的に展開されていますね。

片山:もはや、広告だけ、PRだけ、Webサイトだけ、といったバラバラのコミュニケーションではメッセージが届きにくくなっているからです。「ペイド」「アーンド」「オウンド」を統合的に組み合わせ、各メディアの一番得意な分野を使い分けて情報を届ける必要があります。

例えば、オウンドメディアには良質なコンテンツがたくさんありますが、なかなか自発的に見に来てもらえません。そこでその情報をアーンドメディア用に加工して置いてもらい、「こんな情報があるよ」と知ってもらいオウンドメディアに誘導する施策があります。

山田:3年前に始めた東洋経済オンラインの「空気で答えを出す会社」の連載がそうですね。

片山:通常、こうした記事広告は企業を持ち上げることしか書いてありませんから、まず読まれません。我々は、書いて欲しいネタはこちらから指定しますが、東洋経済さんの視点できっちり書いてもらっています。その際は、ヨイショは絶対にしないでほしい、むしろこういう課題が残っているというようなことも書いてもらわないと困ると伝えています。

次ページ 「コロナ禍で「空気で答えを出す」を体現」へ続く

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