歌手AIが取り組むSDGs その原動力とは?

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2030年に向け活発化するSDGsの取り組み。実践には“未来”の姿を描くことが不可欠です。本コーナーは多様なフィールドで活躍する人たちと共に、理想の未来を考えていく、連載企画です。今回は『ハピネス』『Story』など数多くの楽曲を送り出してきた、歌手のAIさん。One Young World世界サミットオフィシャルサポーター就任や、自身のSNSメディアも立ち上げ、SDGsの発信に力を入れている。表現者として、2児の母として、社会問題に立ち向かう原動力を聞いた。

*本記事は9月1日発売の『広報会議』10月号掲載の「SDGs未来会議プロジェクト」との連動記事です。

AI
アメリカ合衆国ロサンゼルス生まれ。鹿児島県鹿児島市育ち。所属レコード会社はユニバーサルミュージック。これまで3度のNHK紅白歌合戦出場、第59回日本レコード大賞・優秀作品賞の受賞を果たす。

等身大の言葉で分かりやすく伝える

—AIさんがSDGsを知ったきっかけはなんでしたか。

実は最近まで知りませんでした。みんなが「SDGs」って言い始めたけど何だろそれ、という感じ。私自身、難しい言葉に出会ったとき自分から勉強しようと思わないタイプなこともあり、聞かれる機会は増えたのですが「あんまり聞かれても……」と思っていました。多分世の中には、私と同じように、初めから遠ざけてしまっている人も多いのではないでしょうか。

それでも、私が知ろうとするきっかけとなったのは“人”との出会いですね。SDGs関連の仕事をいただく機会も増えましたし、仕事だけでなく友人関係で手伝いを頼まれたり、周りの方が起こすSDGsに関連するアクションや思いに共感して、協力したりしているうちに、どんどんつながって、私もついにSDGsを調べはじめました(笑)。最初は全然分かりませんでしたが、「カラフルだな」「2030年までという明確な目標があるのはいいな」と少しずつ興味を持っていきました。

—2021年6月、SDGsの発信をテーマとしたメディア「TAP ┃ Take Action for Peace(タップ ┃ テイク アクション フォー ピース)」をInstagramで開設。環境問題や社会問題などを中心にメッセージや、身近なアクションを呼びかける動画などを投稿していますね。取り組みを始めたきっかけは何だったのでしょうか。

これも、今TAPの運営を手伝ってもらっている、SNSマーケティング支援会社のFinT(フィント)のメンバーに出会ったことがきっかけでした。私のように難しく考えてしまっている人たちを少しでも減らしたい、様々な人に広めていきたいという考えに共感しました。私も子どもが2人いますが、主婦ってほんとに忙しいんです。子どもの世話だけで1日終わってしまうし、入ってくる情報といえば、テレビを見たり、人から聞いたり、SNSで流れてくる情報くらい。自分からなかなか情報を取りにいけないんですよね。だからこそ、最初は「まずSDGsって何なんだ」っていうところを等身大の言葉で分かりやすく伝えることを意識しています。今さら聞けない風潮にもなってきているじゃないですか。でもそれは普通のことで、「こんな風な未来を子どもたちに残したいな」という妄想や願いを大切にするところから始めればいいのではないかと思っています。これからSDGsについて知っていく私だからこそみんなに伝えられることがある、行動に起こせることがある、との思いでInstagramを立ち上げました。

*「世界をまるごとハッピーに」というビジョンのもと、Sucle(シュクレ)という若年層女性向けSNSメディア(総合70万フォロワー)やSNSマーケティング事業を展開。 主要事業であるインスタグラム運用代行にて、大手企業を中心に累計100以上のアカウントを企画、撮影から投稿までサポートする。

Action (1)

「TAP┃ Take Action for Peace」を開設
SNSマーケティング支援を行うFinTがサポートに入り、AIさんが関心のある環境問題や社会問題などを中心にメッセージを発信するとともに、身近なアクションを呼びかける動画などを投稿。初回は「夢」をテーマに、WORLD ROAD Inc. 共同代表の市川太一さんと平原依文さんとの若者対談などを実施。参加型で、読者からの「夢」も募集している。

—「TAP」立ち上げ前の2020年には、次世代リーダーが参加する国際会議「One Young World(OYW)」でアンバサダーに就任され、『Not So Different(私たちはそんなに違わない)』という楽曲を出されています。人種差別の問題や世界平和が表現されていますが、この曲に込めた想い、AIさんが音楽を通じて、持続可能な世界に向けどのような発信を目指されているか、教えてください。

最初は英語だけの歌詞だったのですが、途中でやはり日本語のメッセージも入れよう、となりました。この日本語のパートは苦戦しましたね。英語だと言えることでも、日本語にすると強すぎる言葉に変わってしまったり、普通の言葉だと刺さらないよな、と考えすぎてしまったり。でも、私が伝えたいメッセージって、曲調は違うものの実はいつも同じだよな、と思って、『Not So Different』を書きあげました。「世界平和」や「みんな平等で幸せになろう」というメッセージはすごく大切にしているんです。その歌が、聴く人の「こうしようかな」「やってみよう」と動く力になっていれば最高だなって思うんですよね。

人を動かす表現って、最終的には自分の嘘偽りのない気持ちだと思うんです。結局、曲にすると聴く人にバレてしまうんですよ。なんか嘘っぽく聞こえるなとか。スポーツの試合を見ると感動するのも、勝ち負けの中にリアルさを感じるからだと思います。選手たちが今まで練習してきた努力の成果を、試合中に全力で発揮している姿って、嘘偽りがない。それが人を感動させるし、動かす力になるんですよね。自分の心からの想いを音楽に込められたときは、いい曲ができたなって思いますし、そういう発信をこれからもしていきたいと思っています。

Action (2)

SDGs達成に向けた楽曲『Not So Different』
2022年に東京で開催されるOne Young World世界サミットに、日本初のオフィシャルアーティストとして就任。「多様性」や「人種差別」に向けた思いを込めた曲を書き下ろした。

名曲を生んだ未来を良くしたい想い

—音楽はAIさんにとってどんな存在ですか?

私も幼い時から音楽には助けられてきましたし、影響を受けてきました。特に『We Are The World』(1985年)。マイケル・ジャクソン、シンディー・ローパー、スティービー・ワンダーといった希代のスーパースターたちが、アフリカの飢餓と貧困層を解消する目的で、ノーギャラで集まって曲をつくる。自分の好きなアーティストが行ったアクションで、子どもたちが助かった、街の水がきれいになったというのを見ると感動するし、自分もそういう人になりたいって思いますよね。当時、幼い私にはあまり理解できていませんでしたが、世の中のためになることだっていうのは分かります。そういうアクションをしている人ってかっこいいですし、私も単純に憧れました。

SDGsの発信をしていると、きれいごとと揶揄されることもあるんです。でも私はそれでいいんじゃないかって考えています。2011年の東日本大震災の時にも、そう強く思いました。あの時、みんな暗い顔をしていました。アーティストも歌番組に出ることを断ったりして、みんなが楽しむことを自粛していた。もちろん悲しみに寄り添う気持ちも大事ですが、それでも進まなきゃいけない私たちには、気持ちを変えていくような歌やメッセージ届けることが大事だと思ったんです。その時につくったのが『ハピネス』でした。暗い世の中を少しでも笑顔にしたいと思ってつくりました。歌には人を前に進ませる力があると思っています。

—SNSや楽曲を通し、AIさんが「SDGs」に関して発信するうえで、意識している点はありますか?

私の場合は、未来を良くしていこう、という気持ちがある人が周りにいたのが大きかったんです。その考え方が好きだから協力したくなる。子どもが生まれて一緒に過ごしていくなかで、「世の中がもっと良くなったらいいな」という単純な願いだけです。

お互い文句を言い合うより褒めあった方が絶対いい世界になります。コロナもあり、ただでさえつらい毎日を送っているんですから、マイナスな言葉はいらないんです。みんなで褒め合って、高めて、それをパワーに変えないとね。私も身近なご近所さんとのコミュニケーション含め、文句を言わない、マイナスな言葉は使わないように気を付けています。こういうちょっとした意識から世の中を変えられる、SDGsに貢献できることを、私もTAPなどで発信していければいいなと思っています。

取材後記

AIさんが幼少期に『We Are The World』の制作の様子を見て感じたように、地球に優しいこと、社会問題に立ち向かっている姿は、子どもたちや若い世代に“憧れ”や“尊敬” を感じさせるものです。企業のアクションも、本気さが伝われば、そのように受け取られるはずです。子どもたちが「こんなアクションを自分でも起こしたい」と思えるような、心からの発信、取り組みができているか、今一度問い直しておきたいものです。(白田)

聞き手:白田範史(学校法人 先端教育機構 SDGs総研 主任研究員)

AIさんへのインタビューの様子、メイキング動画を公式YouTubeで配信中!
 

 
*SDGs未来会議プロジェクトについて詳しく知りたい方はこちらから。

広報会議2021年8月号

7月1日発売の月刊『広報会議』8月号の巻頭特集は「SDGs実践!経営変化と企業コミュニケーション」。サステナビリティ経営に取り組む意義や発信のポイントを識者に聞いた。
 
また、サステナビリティ経営、SDGsに取り組む、アディダス、P&G、KDDIらの事例や、サステナブルサイト制作のポイントなどを収録している。
 
月刊『広報会議』8月号は、全国の書店・Amazonなどで販売中。
 

【特集】
SDGs実践!
経営変化と企業コミュニケーション

 
GUIDE 広報力が企業のサステナビリティの強さを決める
本物のサステナビリティ経営で
企業はどう変わるのか、広報の役割は?
坂野俊哉、磯貝友紀(PwC Japanグループ)
 
CASE1 社内浸透と部門連携
「やらされ感」から「納得感」へ
全部門が絡むSDGsプロジェクトにするには
KDDI
 
CASE2 サステナブル・コラボレーションの可能性
ブランドの方向性を直感的に認知させる
コミュニケーション設計の鍵とは
アディダス ジャパン
 
CASE3 専門部署ではなく、皆が貢献する組織づくり
LGBTQ+層へのアライ育成研修を開発
アライの人たちが実務を担うまでに浸透
P&Gジャパン
 
INTERVEIW 事業を根底から覆す目標を掲げてのコミュニケーション
たばこ会社が「煙のない社会」を
どのように実践、発信しているのか
フィリップ モリス ジャパン
 
元ディレクターが教える テレビ番組制作者の本音 特別編
安易にSDGsを謳うのはNG
社会的な文脈で新しさを打ち出そう
下矢一良(PRコンサルタント)
 
COLUMN テレビは今、SDGsをどう扱っているか
視聴者の行動変容が目的のキャンペーン
番組とのタッチポイント増やす工夫も
NHK
 
CASE4 新商品から採用まで 多角的なメリットがSDGsに
循環可能な「SDGs制服」で
地球品質を目指す企業の理解促進
明石スクールユニフォームカンパニー
 
CASE5 本業ならではのSDGsへの貢献
素の自分をさらけ出せる企業目指し
トランスジェンダーのモデルをアンバサダーに
田谷
 
GUIDE 中小企業のSDGs広報
気づけば選ばれない会社に
正しい手順で自社のSDGsの芽を見つけよう
青柳仁士(一般社団法人SDGsアントレプレナーズ代表理事)
 
危機管理に詳しい弁護士が解説
リスク広報最前線 特別編
浅見隆行(弁護士)
 
GUIDE DX時代の情報開示のポイント
サイトでの情報開示は企業の存在感へ
ステークホルダー・ファースト視点が鍵に
安藤光展(一般社団法人CSRコミュニケーション協会代表理事)
CASE STUDY
日立製作所/ローム/大阪ガス

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