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企業のSNS活用で迷走しないために、目的・課題を明確にする

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【前回】「「企業のSNS活用は最適なSNS選びから始まる」はこちら

競合が始めていることや、SNSで人気となっている企業の事例を聞いて、「うちでもSNSをやってみよう」「若いメンバーにとりあえずやらせてみよう」と気軽に導入するケースが見られます。しかし、いざ取り組んでみると「『いいね』がつかない」「担当は自分だけで、投稿も行き当たりばったり」と、大変さを感じることも多いと聞きます。

このコラムでは、SNSの運用をこれから始めようと思っている方、また既に取り組んではいるものの思うような成果が出ない方のために、各SNSの特性や情報発信の勘所、そして社内体制の築き方までを、宣伝会議の「SNS運用担当者養成講座」で講師を務める本門 功一郎氏がアドタイでの出張講義として、全3回にわたってレクチャーしていきます。

前回は、「自社の製品やサービス、またはコンテンツにあったSNSを選ぶ」というテーマについてまとめましたが、もう一つ重要な視点があります。それが「自社の目的や課題に合った情報発信をすること」です。本来、情報発信には公式SNSアカウント以外にもイベントやブログ、メール配信など様々ありますが、本記事では、特に公式SNSアカウントでの発信と、注意すべきポイントに絞って解説していきます。

視点2:目的・課題に合った情報発信をする

企業のSNS運用において、「何を発信すれば良いのかわからない」、「SNSの成果が見えづらい」といった相談を頻繁に受けます。このような課題への対策で考えがちなのは、文章や写真といった投稿コンテンツの改善ですが、いきなり取り掛かるのはお勧めしません。まずは、運用目的や課題の見直しをお勧めしています。具体的には「誰に、どのような情報を届け、最終的に達成したいゴール(=目的)は何か」を考えるということです。目標が具体的になっていれば、自分達のアカウントのあるべき姿が見えるため、改善の方向性を見出すことができます。しかし、例えば目標が、「とにかく毎日投稿」や感覚的な「いいね」数とすると、具体的に何をどうすれば良いのかわからないため、運用が迷走する原因になってしまいます。そこで、SNS運用における目的とは何かを知ることが、次のステップとなります。

それでは、具体的な企業事例をみていきましょう。

例えば、東急ハンズ公式Twitterアカウントの活用目的は「SNSを通じて企業のファンを増やすこと」としています(参考:東急ハンズ公式ツイッター担当者著「共感で広がる公式ツイッターの世界」)。実際に公式アカウントを見てみると、店舗で扱っている製品の紹介にとどまらず、ある一般ユーザーの投稿に対して引用RTなどでコメント返しをしてくれたり、一般ユーザーが「#ハンズでみっけ」をつけて投稿すると、リクエストに対して応じてくれることもあります。このように、ユーザーやフォロワーとのSNS上での交流を通じて“濃いファン”との関係づくりを重視していることがわかります。

一方で、森美術館の公式Instagramアカウントでは「来館のきっかけづくり」が特徴です。例えば、定期的に開催されている各展覧会を、会期前からキービジュアルを事前情報として発信し、期待感を醸成しています。さらに来館者が自分たちで撮影・投稿しやすいよう、一部の展示にハッシュタグをつけて投稿許可をしている点もポイントです。昨年公開された「#STARS展」でハッシュタグ検索すると、約12,000件もの一般ユーザーの投稿が閲覧できます。さらに、コロナ禍ではライブ配信にも挑戦し、来館できなくてもユーザーが作品を楽しめる工夫に力を入れていた点も特徴です。

目的を決めるだけではなく、効果測定も重要

目的を決めた後は、リーチ、フォロワー、チャンネル登録者数といった数値の計測も重要です。しかし、これらの数値を追いかけるだけでは、実際に成果につながったかどうか判断しづらいため、売上や集客数、ダウンロード数など、目的につながる指標を総合的に見ていく必要があります。

あるテレビ局のSNS活用全般をサポートした際に、「視聴率の向上」を目的としたアカウント運用とキャンペーンを実施しました。そこで、放送前の期間にプレゼントキャンペーンをTwitter広告で実施することで、「リーチ」や「インプレッション」を増やすという施策を打ちました。その結果、キャンペーンへの参加人数も増加し、キャンペーン期間中に「インプレッション」と「視聴率」の向上もみられたため、インプレッションと視聴率に一定の相関関係があることもわかりました。

また、上述した森美術館では、SNSの効果を判断するために、館内出口付近に、タブレットを用いてアンケートを実施しています。その結果、テレビやチラシなどの告知媒体よりも、SNSでの情報が来館につながったことがわかりました。目的につながる指標の設定と、それを収集する仕組みを上手くつくり上げている好例といえます(参考:洞田貫晋一朗氏著「シェアする美術 森美術館のSNSマーケティング戦略」)。

では、SNS活用の目的には、主にどのようなものがあるのかを解説します。以下の図は、オーソドックスではありますが、特に初心者には扱いやすい、マーケティングフェーズごとのSNS活用の目的と施策をまとめた表です。

(引用:We Love Social)

今回ご紹介した例を当てはめると、東急ハンズの場合は、すでに認知度の高い企業であり、目的をファン作りであることを明言しているため、ファンの育成(ファンとの関係作り)や関係性強化が目的だと考えられるでしょう。
一方、森美術館の場合、企画展が変わるたびにアプローチするターゲットは異なるため、特に認知獲得から購買(美術館に置き換えるなら来館)につなげていくことが重要になります。

以上のように、企業によってSNS活用の目的はさまざまであり、フェーズによって行う施策は変化します。そこで、
STEP1:自社がどのポジションにいるかを把握する
STEP2:「誰に、どのような情報を届け、最終的に達成したいゴール(=目的)は何か」を見つける
このような流れで運用の目的を明確化すると良いです。また、目的を決めるだけにとどまらず、実際に成果につながったかどうか、顧客の声をどこで収集するかも、これからのSNS運用では重要になっていきます。そこで、自社のどこで収集が可能かを考えるためにも、最終回の第3回では「社内の協力を得る」ことの大切さについて解説します。

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講師プロフィール

本門 功一郎氏
一般社団法人SNSエキスパート協会 理事

SNSマーケティングのコムニコにて、航空会社、飲料、スポーツブランドなどのSNSを活用したコンサルティング、運用に従事。宣伝会議はじめ、寄稿・書籍執筆・全国でのセミナーを行う。2016年、一般社団法人SNSエキスパート協会を設立、理事に就任。その後18年に人材支援会社を設立。デジタルマーケティング、SNSマーケティング領域の人材支援・教育事業に取り組んでいる。