“音”を起点にしたCMにSNSも…企業認知向上を狙ったIHIのコミュニケーション戦略

世界最大級の吊り橋建設から宇宙開発事業まで、幅広く事業展開するIHI。同社は2007年、社名を変更。以後、様々な施策でその認知・事業理解獲得に努めてきたがどうもうまくいかない……。そこで、2019年から今も続くテレビCMシリーズが生まれたという。「音」「連想ゲーム」がコンセプトの本CM。施策の裏側からSNSの活用まで、同社コーポレートコミュニケーション部の植野頼奈氏に話を聞いた。

“ながら見が基本”と考え音で気をひくCMに
産業ソリューション篇のCMカット。ターゲット層にとってはテレビ視聴も“ながら見” が基本。そこで、日常的な飲み会などのシーンで「ハイハイ!」という掛け声から始まる、「音」のCMで彼ら彼女らを引きつけることにしたのだ。
広告会社/電通、ADKマーケティング・ソリューションズ
制作会社/17(じゅうなな)、東北新社

日本の重工業業界において、167年もの歴史を誇るIHI。創業時まで遡れば、ペリー来航時にまでたどり着くという。その製品とサービスを数え上げれば、造船から橋梁、果ては航空宇宙開発事業に至るまで、驚くほどの幅広さで社会課題のソリューションを生み出してきた企業だ。 

そんなIHIにも強い課題感を感じるテーマがあったという。それが社名の認知度だ。 

同社コーポレートコミュニケーション部の植野頼奈氏は語る。「元々の社名である石川島播磨重工業からIHIに変更して、もう14年が経ちます。元の企業名は、年配の方々からは一定数知っていただいているのですが、IHIとなると、若年層からの認知度がどうしても低い。その影響もあり就活生の応募も減ってきていました」。それは、社名変更後、継続して行っている企業認知度調査の結果からも明白だったという。 

その結果生まれたのが、20~30代に刺さるよう意識してつくられた、「航空宇宙開発篇」「エネルギー篇」「社会インフラ篇」「産業ソリューション篇」の4 本のCMだ。ポイントは、若年層への「なじみ深さ」と「音」だ。「産業ソリューション篇」を例にとろう。彼ら彼女らにとってなじみ深い飲み会のシーン。参加者のひとりが目の前の人物に出身を尋ね、「ドイツ」と答える。すると突然、「『ドイツ』と言えば『ビール』。『ビール』といえば『生き返る』……」など、いわゆる「連想ゲーム」が始まるのだ。そして最後に、「……『技術』といえば『IHI』」で締めくくられる、といった内容だ。 

この一風変わったテレビCM。様々な案が出たが、“無難なもの”にはしたくなかった、と植野氏。「課題である若年層への認知度。これがさらには、年々低下していったのが調査結果より分かりました。もちろん、2007年の社名変更以後、継続してCMや新聞広告は打ってきましたが、結果は今ひとつでした」。というのもこれまでの広告は、事業説明がメインだった。しかし、「そもそも企業名の認知が得られなければ、事業に対する興味さえ持ってもらえないと考え、そこでまずは若者への企業認知の獲得、という目的達成に“全振り” するものにしました」。 

ちなみに、この企業認知獲得への姿勢はCM以外にも。例えば、Twitter。IHIの「H」の由来に関するツイートを画像付きで投稿したところ、思わぬ数の反応が。「特に“バズる” ことを意図した投稿ではありませんが、大きな反響があり驚いています」。

……ユニークな本CM。その分、30秒、60秒と限られたCMの時間内で、確実に「IHIという企業名の訴求」という目標の達成につなげるため、植野氏はクリエイターらと綿密に打ち合わせたそうです。そうしたプロセスの詳細は月刊広報会議12月号で!ぜひチェックしてみてください。
 

『広報会議』2021年12月号

 

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