長期ビジョンは過去から語る!東京応化工業 統合レポートのポイント

*本記事は11月1日発売の『広報会議』12月号の転載記事です。

「企業は社会的な責任を果たす存在であるべき」という要請の高まりから、社会的な文脈の中で、いかに生活者の共感を呼ぶ企業として語られるかが企業に問われています。ファクトベースで社会とのつながりやその先の未来を具体的に示す統合報告書。ステークホルダーに選ばれ続けるためにはどのような発信が必要でしょうか。『広報会議』12月号では、各社がどのような特集を組み、事業におけるサステナブルな取り組みを発信しているのか。ステークホルダーとの対話につながる発信の仕方や、社会における存在意義を可視化していく3社の動きを取り上げています。
今回はその中から、2020年8月、長期ビジョン「TOK Vision 2030」を発表した東京応化工業の記事を紹介。同社の統合レポートでは、自社を取り巻くステークホルダーを改めて整理し、それぞれに対する価値創造を過去、現在、そして未来の取り組みにまとめています。

統合レポート2020
広報 CSR部(2人)、環境関連の安全面を統括するEHS部(3人)が作成。2017年度まで発行していたアニュアルレポートとCSRレポートを2018年度から統合し、発行している。毎年8月の中間決算のタイミングで発行。2021年度版は年末ごろから本格的に作成に移る予定だという。

 

2020年、設立80周年を迎えた東京応化工業(TOK)。半導体製造分野における微細加工に不可欠な感光性材料である「フォトレジスト」の世界トップメーカーとして、国内外に化学薬品を提供するBtoB企業だ。2018年度からは、アニュアルレポートとCSRレポートを融合させた『統合レポート』を広報CSR部、EHS部が中心となり発行。メインターゲットは、機関投資家を中心とした株主・投資家であるが、TOKを取り巻くステークホルダー全般を対象として作成されている。

<POINT①>自社を取り巻くステークホルダー 価値創造のあり方をそれぞれ整理
「お客様」「株主/投資家」「従業員」「政府/自治体/地域コミュニティ」、2020年度版からはサプライヤー/ベンチャー企業」「学術関係者/研究機関」を加え、ステークホルダーを整理。それぞれに対し1共有価値2方針/基本的な取り組み3コミュニケーションチャネル4具体的事例/直近の成果などをまとめている。ステークホルダーを細かく定義し、それぞれに対する価値創造のプランを示すことで、株主だけでなく、従業員にとっても、複雑な事業領域での社会との接点を整理することを狙っているという。

成長を語るには過去を語る

2021年8月に発行した『統合レポート2020』では、2020年8月に発表された長期ビジョン「TOK Vision 2030」について説明。「豊かな未来、社会の期待に化学で応える“The e-Material Global Company”」の経営ビジョンのもと、ありたい姿を定量・定性両面でまとめている。

「サステナブルに成長していく私たちの姿を、よりビジュアル化して、ステークホルダーに示す狙いがあります。また従業員に向けても、『これに向かって進んでいこう』という指標にしてもらいたい狙いがありました。ポイントは、2009年からこれまでの事業改革や中期計画などの方向性、目標などをまとめたことです。100年企業を見据え成長を語る上では、これまで私たちが歩んできた道のりを端的に漏れなく説明する必要性を感じました」と広報CSR部でレポートを担当する後藤有香氏は説明する。

<POINT②>未来だけでなく過去から見せる
2021年、長期ビジョン「TOK Vision 2030」を発表。ありたい姿を定量・定性両面で分かりやすくまとめた。ポイントはこれまでの目標と活動結果を2009年からまとめていること。「未来だけ見せるのではなく、これまでどのような目標を立て、どのように歩んできたのか。その過去を理解いただくことで、あるべき姿の正当性、期待感にもつながると思います」(後藤氏)。

社会のニュースとの関係性を示す

長期ビジョンの発表と同時に、ステークホルダーも再設定。「お客様」「株主/投資家」「従業員」「政府/自治体/地域コミュニティ」「サプライヤー/ベンチャー企業」「学術関係者/研究機関」の6つとし、見開きページでまとめた。「このページを設ける以前にも、ステークホルダーとの関わりは文書上で各ページに掲載してはいたんですが、一覧化することで、サプライチェーン全体の当社の取り組みをより理解していただきたいと考えました」(後藤氏)。 

目先のお客さまとのコミュニケーションに終始してしまうと、そのサプライチェーンから外れたとたん、全然理解してもらえない状態が生まれるということを、BtoB企業としての発信では常に意識しているという。

「社会とどうつながっているのかという、自社との関係性。例えば特集でも取り上げた脱炭素などの環境問題もそうですが、社会的なニュース性のあるものと当社製品の関係性が分かっていただけたときに初めて、価値に気づいてもらえる。その気づきの一助になればと期待して、作成しています」(後藤氏)。

<POINT③>自社の最先端技術とメガトレンド 社会課題への価値を説明
特集ではコロナ禍での「ニューノーマル」というメガトレンドや、「脱炭素」「患者QOLやアウトカム向上」といった社会課題をテーマに、その解決に期する自社の最先端技術を紹介。その結果どのステークホルダーに、どのような価値を享受できるかをまとめている。TOKを取り巻くステークホルダーを示した六角形で掲載された写真は、それぞれのテーマにおいて目指す次世代のイメージカットとなっており、アイキャッチで未来への期待感を抱かせる工夫となっている。

――『広報会議』2021年12月号では、東京応化工業の統合レポート以外にも、日本ユニシス、DICの統合報告書のポイントを掲載しています。
 

『広報会議』2021年12月号

 

【特集】DX・脱炭素…社会課題を企業価値に変える
BtoB新コミュニケーション

 
GUIDE
BtoBの企業ブランディングには経営的意義がある
薄 阿佐子(インターブランドジャパン エグゼクティブ・ディレクター)
 
CASE1 清水建設
現場の中を見せ、人とデジタルの“共存”伝える
 
CASE2 J-POWERグループ
水素発電など、事業に携わる社員をCM&漫画で発信
 
CASE3 IHI
吊り橋から宇宙まで、日常と自社を「音」で結ぶCM
 
OPINION
訴求の切り口を「商品」から「人」「社会課題」に切り替えよう
大林健太郎(千葉テレビ放送プロデューサー)
 
CASE4 スタディスト
「導入事例」で関心高め、働き方改革のPRも
 
CASE5 シーユーシー
企業成長で生じたズレを解消するリブランディング
 
CASE6 スリーエム ジャパン
当たり前だった社会貢献を改めて動画で発信
 
OPINION
求心力となる「企業広告」独自性のある言葉を紡ぐには
小川祐人(電通 コピーライター)
 
【特集2】
価値創造のストーリーを語る
統合報告書
 
CASE1 DIC
化学メーカーとしての責任 積極的にESG情報を開示
 
CASE2 東京応化工業
長期ビジョンは過去から語る ありたい姿の伝え方
 
CASE3 日本ユニシス
社会的価値を創出する企業へ 変革期の発信
 
【特別企画】
ユーザー視点で見直す
コーポレートサイト
 
CASE1 村田製作所
グローバルBtoB企業のUX設計
 
CASE2 日本紙パルプ商事
情報の探しやすさの先にあるブランド浸透、事業理解
 
REPORT
ウィズコロナ時代の
「コーポレートサイト」はどう変化
 
PICK UP
商談に活用! 多言語に対応! 「コーポレートサイト」刷新の進め方
アークコミュニケーションズ
 
PICK UP
UX設計の起点は直に聞く「エンドユーザーの声」
従業員の発想が変わる! ワークショップ
ソニーネットワークコミュニケーションズ
 
【PR JOURNAL】
広報担当者のための企画書のつくり方入門
著名人、インフルエンサー活用
「口コミ」創出のための企画書
片岡英彦
 
オフィスの今と未来を考える
阿部智和(北海道大学 准教授)
 
職場の多様性と経営倫理
谷俊子(関東学院大学 経済経営研究所)
 
スポンサーシップ未来予想図
山口志郎(流通科学大学 准教授)
 
広報のための行動インサイト
山田 歩(滋賀県立大学 准教授)
 
広報メディア温故知新
飯田 豊(立命館大学 准教授)
 
【TOPICS】
知花くららインタビュー
未来をつくる企業 菅公学生服
 
データで読み解く企業ブランディング
企業広報戦略研究所
 
リモートワーク環境下での心の距離の縮め方と雑談力
ブライトコーブ
 
【記者の本音からリリース術までMEDIA TOPICS】
元ディレクターが直接取材
テレビ番組制作者の本音
『Live News イット!』
下矢一良(PRコンサルタント)
 
メディアの現場から
J-WAVE『JAM THE PLANET』
 
記者の行動原理を読む広報術
松林 薫(ジャーナリスト)
 
実践! プレスリリース道場
オアシスティーラウンジの試飲リリース
井上岳久(PRコンサルタント)
 
【新たな情報流通とコンテンツDIGITAL TOPICS】
データで見るPR動画の効果
仁淀ブルー観光協議会/バンタン/オリエンタルランド ほか
 
ウェブリスク24時
炎上で欠かせない広報の視点
鶴野充茂(ビーンスター)
 
オウンドメディアの現場から
ニチレイフーズ「ほほえみごはん」
 
【広報担当者が知っておきたいRISK MANAGEMENT】
危機管理に詳しい弁護士が解説
リスク広報最前線
浅見隆行(弁護士)
 
小説で学ぶクライシス対応
「広報担当者の事件簿」
佐々木政幸(アズソリューションズ)
 
【企業に求められるサステナビリティIR・CSR TOPICS】
いっしょに未来を会議する 私のSDGsアクション
SPECIAL INTERVIEW ryuchell
 
担当者が語るIRの現場
ヤマハ
 
ある日、IR担当者になったら…
IRの学校SEASON2
大森慎一(バンカーズ)
 
SDGs実践ノート
ダスキン
 
【地域を変える発想とは地方創生とPR】
地域メディアの現場から
毎日放送(MBS)『ザ・リーダー』
 
地域活性のプロが指南
田北雅裕(九州大学大学院人間環境学研究院 専任講師)
 
【NEWS&DATA】
広報会議 パートナー一覧
 
PRイベントの効果
有楽製菓/ジャパネットホールディングス/セドナエンタープライズ ほか
 
周年イヤーの迎え方
三起商行(ミキハウス)
 
大学広報ゼミナール
追手門学院大学
 
社員を巻き込む社内報のつくり方
アウトソーシングテクノロジー
 
広報最前線
・経済広報センター
・日本広報学会
・日本パブリックリレーションズ協会
 
社会情報大学院大学
理念と行動を社会と共有し、
組織を導く広報・情報人材(修士)を育成
 
映画で学ぶ広報術
『スキャンダル』
野呂エイシロウ(放送作家・PRコンサルタント)
 
メディア研究室訪問
熊本大学 江川良裕ゼミ
 
BOOKS
 

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