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【CES2022】消費者のパンデミックピボットにテクノロジーはどう貢献するか(玉井博久)

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世界最大のテクノロジー見本市「CES」が1月3日に開幕しました。2年ぶりに見本市会場での展示が復活し、今回は自動運転や宇宙関連の技術などが注目を集めています。本稿では、江崎グリコの玉井博久氏が注目ポイントを速報します。

消費者のテック環境はこの1年で大きく変化

米国ラスベガスで現地時間1月3日16時、CES2022が開幕しました。昨年はオールオンラインでの開催でしたが、今年は現地とオンラインのハイブリッド開催です。私は昨年同様シンガポールからオンライン参加しました。

メディアデー1日目はCESを運営するCTA(Consumer Technology Association)による「CES 2022 Trends to Watch」がオンライン向けに行われました。現地では、様々な出展企業が自社のテクノロジーを展示紹介する「Unveiled Las Vegas」も開催されていますが、オンライン参加者の画面上では「On Site Content」として表示されていて、現地の様子を見ることはできません。

CES2022の前提としてCTAのSteve Koenig氏が紹介したのは、言わずもがなではありますが、消費者がパンデミックに適応するために行動変容、パンデミックピボット(パンデミックに対応するための態度変容)をしており、その影響で消費者のテック環境は2020年から2021年のたった1年間においてすら著しい進化が起こっているということ、そしてそれによって広まったサービスを今後も継続利用する意向があるということでした。

そしてこのパンデミックピボットを起こす消費者のニーズに応えていくサービスが、これからテクノロジーが活躍していくエリアになるだろうということです。

江崎グリコ玉井氏が注目する「CES2022」
#2「ネット+メタバース+ロボット」

 
ここに紹介されたストリーミングビデオやコネクティッドフィットネス、フードデリバリーは、まさにこの2年間私たちが自分たちの生活の中で取り入れ、体験したものかと思います。「テクノロジーは機器で完結するのではなく、そこから拡張してサービスが生まれることで貢献する領域がより一層増えていく」とKoenig氏は言います。

ではどんなサービスを消費者は望んでいるのかというと、それはプレミアムな体験。GfKの調査データによると、2021年はスタンダードな価格帯の商品よりもよりプレミアムな価格帯の商品の売上が大きく伸びたようです。「まあまあ良いOKな体験ではなく、グレートな体験にこそお金を払いたい。それこそが21世紀型のライフスタイルになる」(Steve Koenig氏)ことが予想され、テクノロジーを活用したプレミアム体験の提供が今後企業側に求められてくるのでしょう。

今年の注目は「AI」「メタバース」「デジタルヘルス」「モビリティ」

テクノロジーを活用したプレミアムな消費者体験の提供を検討していくうえで、CES2022で注目したいエリアは大きく「AI」「メタバース」「デジタルヘルス」「モビリティ」の4つにまとめられるかと思います。

まずは「AI」。CTAの調べによると、消費者は商品購入のサポートや家の掃除、健康管理のアドバイスなどについてAIの力を借りられるなら借りることに躊躇しないようです。CTAはIoTをInternet of Thingsではなく、インターネットとAIを搭載したIntelligence of Thingsと以前から呼んでいますが、人々の生活をもっと便利にするために、進化を続けるAIをどう自社の商品に組み込んでいくかという視点は今後も求められます。

IoTと聞いてぱっと想像できる電化製品だけでなく、AIロボットキッチンや、人々の生活をマクロで捉えるスマートシティ(ミクロで捉えるとスマートホーム)などもAIの活用が期待されるものだと紹介されました。

 
2つ目は昨年よく耳にした「メタバース」です。メタバースとは、ネットワーク上に構築された仮想の場所で、複数の人が集い、自由に行動できる空間を意味します。CTAはそのメタバースを、次世代のインターネットとし、これからの10年、20年続くデジタル体験のベースとなるだろうと言います。既にゲームやソーシャル、通貨の分野で取り組みは始まっています。

 
仮想空間の選択肢はコロナパンデミックもあり、バーチャルミーティングやデジタルツイン、リモートコラボレーションなど広がりを見せています。没入感のあるデジタル体験でありながらも、フィジカルリアリティともリンクするようなマーケティング活動や営業活動への活用が今後期待されます。

「スペーステック」に注目集まる!?

3つ目の「デジタルヘルス」は、コロナパンデミック前から着目されていましたが、パンデミックでより一層進化が期待されている分野です。センサー技術の発達が、様々な体の情報をセンシングすることを可能とし、“患者”の日常の状態を管理・モニタリングしていくことが容易になってきています。こうしたテクノロジーを組み合わせた新しい治療の形が生まれてくることが期待できます。

 
またコロナパンデミックによって人々が断絶され、喪失感を感じている人が増えていることから、メンタルサポート、ストレスマネジメントといった分野においてもテクノロジーの貢献が求められるとCTAは言います。

 
最後は「モビリティ」です。ここでの「モビリティ」はEVや自動運転といったものだけでなく、次世代ロジスティクスや宇宙旅行まで含めて「モビリティ」としています。2021年はリチャードブランソン氏、ジェフベゾス氏、前澤友作氏と富豪が立て続けに宇宙に行った年でした。「将来ハネムーンの行き先に宇宙がありえるでしょう」とKoenig氏が述べる通り、数十年後には一般人にも宇宙旅行が可能になってくることを見据えて、スペーステックに注目するのも面白いかもしれません。

 

玉井博久
Glico Asia Pacific Regional Creative & Digital Senior Manager 兼 江崎グリコ アシスタントグローバルブランドマネージャー

広告会社側(リクルート、TUGBOAT)のクリエイティブと、広告主側(グリコ)のブランド構築の両方の経験を生かして、デジタルを活用した顧客体験(CX)を手掛けカンヌライオンズなど受賞多数。2012年より日本のポッキーの、2016年より全世界のポッキーの広告を統括。2017年からシンガポールに駐在し、P&G、ユニリーバ、ネスレ、ロレアル、ペプシコ出身の外国人マーケターたちと広告開発に取り組む。宣伝会議「オリエンテーション基礎講座」(2022年1月開校予定)講師。アドタイのコラムニストとして「世界で活躍する日本人マーケターの仕事」の連載を担当。著書に『宣伝担当者バイブル』(宣伝会議)、『「売り方」のオンラインシフト』(翔泳社)。