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富永氏×音部氏が対談! マーケターが人を見る時は「アイデンティティ」に着目すべし

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B2Bでも行政でも、人に働きかける場面には「パーセプションフロー・モデル」が使える

――「パーセプションフロー・モデル」は、B2C企業はもちろんB2B企業での導入事例も増えているそうですね。現在、AI企業のプリファード・ネットワークスでB2Bのマーケティングを担っている富永さんは、どう思いますか。

富永:音部さんの「パーセプションフロー・モデル」はB2Bにも活かせるに決まっているというのが私の答えです。説明する余地がないくらい、あまりに自明なことだと思います。
マーケティングは、マスを対象にすることが多いので、ある意図を持つ集団に対して働きかけることであるという誤謬に陥りがちなのですけど、パーセプションフローが起きるのは一人ひとりの心の中。ですから、対象顧客の規模は関係がないんです。「B2B」というとB2Cより、絞られた顧客規模を対象とするから異なる営為のように感じられるかもしれませんが、顧客の心で起きている作用は一緒なのです。

音部:富永さんがおっしゃる通り、両者とも、人を対象にした活動なので、知覚刺激を受けてパーセプションが変化する仕組みは同じです。ただ、大きく違う点があるとしたら「自我」ですね(本著:P152で詳述)。
B2Bでも人が意思決定をするので、自我は大事。ただ、B2Cの場合と、異なる自我の捉え方をする必要があります。具体的には、組織の中においての「部下」という自我が非常に強力だったりするんですよ。

富永:肩書きを見たら責任者だから、「上司」の自我なのかな?と思ったら、実は部下の自我が強かったみたいなこともありますよね。

音部:ありますね。みんなが上司だと思っていたのに、ずっと部下の自我のままだったっていう人もいますよね…。

私はマーケティングの役割とは、いい商品の定義を変えて、市場を創造することと考えていますが、これはB2Bにおいても同様のことが言えます。ただひとつ、B2Bならではの難しさがあるとすれば、いい商品の定義が、部下の自我か上司の自我かで変わること。そして、例えば「いいITシステムの定義」はモーメントごとに変わってしまうことがある点です。

同僚に「うちのITシステムは使いづらい」と言われた直後であれば、ユーザーフレンドリーで、使いやすいことがいいITシステムだと考えるし、コンプライアンスチームから「セキュリティ上、本当に問題はないの?」と問われた後であれば、セキュリティレベルの高さが重要になる。
ITシステムと聞くと、ガチガチにスペックを固めることができそうなのですが、これが対象者のモーメントによって結構、フレキシブルに動く。その点は配慮が必要ですが、基本のアプローチは変わりません。

富永:B2BかB2Cかだけでなく、そもそも人に働きかける、意識と行動を変えることが求められる場面であれば、マーケティングに限らず、「パーセプションフロー・モデル」は使えると思います。

――富永さんは、厚生労働省年金局、内閣府政府広報室の広報アドバイザーも務めていますよね。行政によるコミュニケーションも人に働きかけ、人の行動を変えることを目的としていると思いますが、このような場面でも「パーセプションフロー・モデル」は使えますか。

富永:行政の広報活動において、パーセプションフローを意識するのはとても大切だと思います。

――最後に対談を終えての感想をお聞かせください。

音部:今日は「イメージ」「言葉」「概念」などなど、ちょっと哲学者みたいな話をしてしまいましたが…、実は『The Art of Marketing マーケティングの技法』を書き始めてから、私の中で身体性を大事にするようになったんです。触覚とか嗅覚とか五感の使い方が大事だな、と。

富永:脳内だけで考えていることと、身体感覚を通して得たことの情報の解像度は明らかに違いますよね。
身体性の話というのはマインドセットの話でもあると思います。「まず、やってみる」という態度の先に身体性があって、それによって解像度が上がるのではないですか。それってなかなかできない人が多いですよね。私も若いころは、全然できなかったので…。頭脳だけで解決できると思っていたところがあったのだな、と反省して今に至ります。

音部:ひょっとしたら、私たちの五感が年とともに老い始めていることで、意識するようになったのかもしれません。身体性への依存が無意識だったために、脳と思考だけでなんとかなると勘違いしていたけど、身体から得られる情報が少なくなってきて身体性を思い知らされているという可能性があります。喪失は獲得より強く認識されそうです。

富永:そう言われると怖いですが…。次は、身体性とマーケティングについて音部さんと対談したいですね。

音部:第2弾をぜひ!今日はありがとうございました。
 
 

富永さんに聞いた『The Art of Marketing マーケティングの技法』のおススメはここ!

「 フレームワークだと思って、食わず嫌いしている人にこそ
読んでもらいたい 」

 

本書は現時点の音部さんの実践の集大成であると同時に、例えば10年後に音部さんと話をしたら、「パーセプションフロー・モデル2.0」みたいものができているのではないか。つまり、これからもずっとアップデートされていくものなのだと思いました。

 

また「パーセプションフロー・モデル」とか「ブランドホロタイプ・モデル」と聞くと、「なんだ、フレームワークの話か」とフレームワーク嫌いな人は、食わず嫌いで読まないということもあるかしれません。

 

「フレームワークは嫌い」という態度で仕事をしている人が、ちょろっと立ち読みするくらいの感覚で接すると、「なんだ、フレームワークの話か」と思うかもしれない。しかし、音部さんの本は単純なフレームワークを解説したものではありません!

 

また、「自分なりのマーケティングの型はできている」という方についても、しっかりと読み込むことで発見がある本です。私もいくつも発見がありました。

 

プリファード・ネットワークス
執行役員CMO(最高マーケティング責任者)
富永 朋信氏

早稲田大学卒業後、日本コカ・コーラなど9社でマーケティング業務を歴任。うち、西友、ドミノ・ピザジャパン、Preferred Networksなど直近4社では最高マーケティング責任者を拝命。マーケティングの核=人間理解という考え方に基づき、企業におけるマーケティングの実践、ブランド戦略、コミュニケーション設計、人事研修の設計実施など多岐にわたるアドバイザリー業務を行う。政府系機関のオフィシャル広報アドバイザー(全世代型社会保障に関する広報の在り方会議 構成員、厚生労働省年金広報検討委員など)多数歴任。著書に『「幸せ」をつかむ戦略』(日経BP、ダン・アリエリーとの共著)など。
直近では2022年4月開講の早稲田大学日本橋キャンパス(WASEDA NEO)で「デジタル時代のマーケティング講座」で講師を務める。

 

クー・マーケティング・カンパニー 代表取締役
音部大輔氏

17年間の日米P&Gを経て、欧州系消費財メーカーや資生堂などで、マーケティング組織強化やビジネスの回復・伸長を、マーケティング担当副社長やCMOとして主導。2018年より独立し、現職。消費財や化粧品をはじめ、輸送機器、家電、放送局、電力、D2C、医薬品、IP、BtoBなど、国内外の多様なクライアントのマーケティング組織強化やブランド戦略を支援。博士(経営学・神戸大学)。 著書に『なぜ「戦略」で差がつくのか。』(宣伝会議)、『マーケティングプロフェッショナルの視点』(日経BP)。

 

【好評3刷!】『The Art of Marketing マーケティングの技法-パーセプションフロー・モデル全解説』

定価:2,640円(本体2,400円+税) A5判 304ページ

2021年12月に発売された『The Art of Marketing マーケティングの技法-パーセプションフロー・モデル全解説』(音部大輔著)は、マーケティング活動の全体設計図「パーセプションフロー・モデル」の活用法を紹介した初めての書籍。
 
発売前から多くの反響をいただき、早くも3刷と販売好調です。企業のマーケティング部門や広告会社、マーケティングサービス提供企業などで、研修教材としてもお使いいただいています。
 
ブランドマネージャーやマーケティング・宣伝担当者、またブランドのパートナーである広告会社のマーケターにとっても活動の指針となる一冊です。
「パーセプションフロー・モデル」や「ブランドホロタイプ・モデル」「クリエイティブ・ブリーフ」のダウンロード特典も好評です。
 
本書の詳細・購入はこちらから(Amazon)