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「40のいいこと!?」が100に到達! ニュースを発信し続けた、ファミリーマート40周年プロジェクトの舞台裏

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「ファミマの広告費は増えたの?」 露出量の増加とマーケティング予算

―「40のいいこと!?」が、結果的に100になったということですが、年間のプロジェクトの予算管理はどのように行っていたのですか。

足立:もともと周年がなくても、コンビニエンスストアは常に新商品が登場しますし、たくさんのニュースがあります。それらのニュースのためのパッケージデザインや店内ボードの制作などの年間費用はもともと計画されていたので、プロジェクトがあったから追加で予算が必要になる場面は少なかったというのが実際です。特に今回は、PRとソーシャルの施策を重視しているので広告費もほとんど増やしていません。2021年は露出が増えたので「広告費を大幅に増やしたんですね」と言われることも多かったですが、実はそんなことはないんです。

広告キャンペーンについても2020年に比べて1本あたりの広告メディア予算は約半分にしていますが、結果的にキャンペーン認知度は変わらないどころか、2020年以上の結果になりました。ソーシャル、PRを活用した成果だと考えています。

加藤:年間を通じて、PRとソーシャルの成功体験を吸収できて、チーム全体でレベルアップしていった感じです。私たちも広告キャンペーンの企画・提案だけでなく、PRやソーシャルの視点からネーミングを提案したり、企業のアクションを提案させてもらえたりしたのは、本当に良い経験になりました。

本田:私もいろいろ学びがあったのですが、一番はリードタイムの重要性。プロジェクトが始まったときに、足立さんが年間のカレンダーを出して、そこに現時点で発信できるニュースをプロットしていかれたのです。これを見ると、ニュースが少ない月がわかるし、例えば「国際女性デー」のようなタイミングで何も施策がないなら、アイデアを考えられないだろうか?という発想になっていく。そこで「国際女性デー」に合わせて、生理用品を応援価格の2%割引きにするという「いいこと!?」を実施することになりました。

3月に実施の生理用品年内ずっと応援価格(-2%)

加藤:他にも、4月24日から開催されたプライドウィークに合わせて、「ファミチキ」の袋を数量限定でレインボーカラーにする施策を実施しました。これもその年間カレンダーを見ながら提案させていただいた「いいこと!?」ですね。広告だけでなく、こうした企業としてのアクションまで一緒に設計して実施できたのは、リードタイムがあったからこそできたことだと思います。

足立;流通のプロモーション施策は、リードタイムが短すぎると思います。だいたい実施の3~4カ月前からやっと動き出している感じですよね。この期間では、商品開発が絡むような施策は実施できません。9カ月、最低でも半年のリードタイムがあれば、できることの選択肢は一気に広がります。
ギリギリになるまで決めるべきではないという人もいるかもしれないですが、早く決断すれば、その分、戦術の幅が広がると思います。

加藤:普段コミュニケーションの仕事をしていると、「その時々の旬な話題もあるから、あまり早く決めてしまうと話題になるかの判断が難しい…」と思っていたところもあったのですが、実施までの時間が取れた方がやれることの幅は広がりますね。リードタイムに関しても今回学びが多かったです。

足立:年間のカレンダーに基づいて、それぞれのタイミングで発信する内容を決めておくという手段は、ソーシャルではよくやる手法ですよね。今回は、これをPRにまで広げたのが新しかったかもしれないです。
ファミリーマートに限らず、小売業は来店数、売上に波があってはいけません。毎月、毎週、さらには毎日が勝負。だからこそ、年間スケジュールをかなり前のタイミングから計画的に埋めていくというやり方は重要だと思います。

4月に実施のレインボーカラーの「ファミチキ」

―「ファミチキ」の発売15周年の企画で、数量限定で「ファミチキ揚げ油」と「冷凍ファミチキ」をセットにした「おうちでファミチキセット」をネットで限定販売しました。こうした施策は商品開発など、他部門も巻き込む一大プロジェクトになりそうですが。

加藤:これは、「40のいいこと!?」の「食の安全・安心、地球にもやさしい」を意識してご提案させていただいた企画です。「ファミチキ」は、良い油を使っているところが特長。それが伝われば、ファミチキを買う人がもっと増えると思いましたし、それを最短距離で伝えるのは「売ること」だと思いました。しかし、こうした「形にできたらよいな」という理想を実際に実現できる企業さんは少ないです。社内の連携や生産体制などに様々なハードルにぶつかってしまうことも多く、社内を巻き込む求心力がないと実現できないからです。足立さんのジャッジの速さもそうですが、社内を巻き込む空気をつくってしまうところがさすがだな、と。

9月に実施のおうちでファミチキセット

足立:ファミリーマートは「これ、絶対いけるからやりましょうよ」という提案が通じやすい会社だったところもあります。チャレンジする土壌があり、行くとなったら全社で一斉にそちらの方向に動くという会社だったことがプラスに働いたと思います。

加藤:社内を巻き込む手法論として学んだこともありました。それが「リリースで握る」という方法です。通常、キャンペーンに関するリリースは最後に出てくるものですよね。それが、足立さんの指示もあり、今回のプロジェクトではまずリリースを作って、それで社内の関係者の理解を得ていったんです。企画書だと細部まで伝わっていないこともあって、それがプロジェクトを進めるハードルになったりすることもあるのですが、リリースで「どんなふうに世に出ていくのか?」を共有できると、その後に問題になることが少ないな、と。

足立:発信していった100のニュースは最終的に客数と売上に成果をもたらすためのものです。それぞれのニュースをどのように広げて、成果をもたらせると考えているのかをわかりやすく伝えるために、リリースをプロジェクト初期の段階で握っておくというやり方は有効だったと思います。ソーシャルの投稿もリリースをもとにつくっていました。

―周年プロジェクトは2022年2月で一区切りですよね。次は、何をするのでしょうか。

足立:2021年は「100のいいこと!?」を通じて、露出も増えました。でも、何より大事なことは売上、客数につながったということです。昨年の春から、大雨の影響をうけた昨年の8月以外で毎月の既存店の売上が前年を上回り続けました。僕の中では、いろいろな形で露出を図り、話題化につなげることが客数と売上につながるという確信を持ちました。

おそらく40周年でなかったとしても、2021年には同じような施策をしたと思います。あくまで周年は話題作りのひとつのきっかけにすぎないからです。そこで、2022年も同様に施策を動かしていくことになると思います。

「プロの企画書」を『販促会議』で公開!!

電通の加藤氏がつくった、ファミリーマート「40のいいこと!!」プロジェクト提案の際の企画書を月刊『販促会議』の人気連載「これがプロの企画書だ!」で公開(2022年3月1日発売・4月号)。定期購読者の方限定の企画書ダウンロードサービスも実施しています。