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「ミス東大コンテスト」ファイナリストが感じた、情報発信と広告

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情報、メディア、コミュニケーション、ジャーナリズムについて学びたい人たちのために、おもに学部レベルの教育を2年間にわたって行う教育組織である、東京大学大学院情報学環教育部。月刊「宣伝会議」編集長の谷口が同部で講義を担当することから、受講する学生の皆さんと、編集コンテンツの企画から制作までを実地でチャレンジ。今回は、「ミス東大コンテスト2021」ファイナリスト5人のうちの1人で、情報学環教育部研究生でもある茅野愛理さんに取材しました。

東京大学教養学部の4年に在籍し、さらにメディア論に対する関心から、東京大学大学院情報学環教育部でも学ぶ茅野愛理さんは、2021年のミス東大ファイナリストに進出した経歴を持ちます。
社会的な潮流からミスコンというものの在り方が問われているなか、情報やメディア、コミュニケーションといったものを情報学環教育部で専門的に学ぶ、茅野さんはなぜ、ミスコンに参加したのでしょうか。また、実際に参加をして、いま現在、何を思うのでしょうか。
同じく情報学環教育部で学ぶ、平松優太・川口翔太郎・園田寛志郎・小林千菜美が取材します(本取材は2022年2月に実施しました)。

東京大学本郷キャンパスの赤門前で。撮影は教育部学生の園田さん。

同世代として、社会問題を発信したかった

――茅野さんは、2021年に「ミス東大コンテスト」に参加をして、ファイナリストにまで残りました。いろいろと、「ミスコン」についてはあり方を問う声も多いと思います。なぜ、茅野さんはミスコンに参加しようと思ったのでしょうか。

茅野 :私はSKE48のファンなのでミスコンといっても、「見る側」でしたが「出る側」になれば、その看板を背負っただけで発信力を得られるかなと思ったからです。

――どうして発信力を高めたいと思ったのでしょうか。

茅野 :私は、学生団体でミャンマー支援の活動をしているのですが、現地で知り合った友人がクーデターに巻き込まれました。その友人のインスタを見ると、ミャンマーでは私たちには信じ難いような光景が広がっていて…。でも、コロナ禍のいま、自分が現地に行って手助けすることはできない。寄附をしても、それが武器の購入に繋がるケースもあることをも知り、「じゃあ自分に何ができるの?」って悩んでいました。

そんな時に、知人から「今起きていることを世界に伝えればいいよ」とアドバイスをもらい。なるほど、と思って発信を始めてみたのですが、これがなかなか難しくて。

――どの部分が難しかったですか。

茅野 :ひとつはSNSで発信しても、「日本だってコロナで大変なのになんで海外の支援を?」という負の感情を生みやすいことです。

ミスコンの公式SNSアカウントとしては、ツイッターとインスタを使っていたのですが、どれも一度に投稿できる情報に限りがあります。情報プラットフォームってそれぞれ伝えるのに適切な内容があると思うので、ツイッターで「海外に支援を」とか載せても受け手は疲れちゃう。noteとかを使っていたら良かったかもしれません。

――そうしたミャンマーの問題を知ってもらうための発信力を高めたいと考えて、ミスコンに参加をされたということがわかりました。ただ、「東大生」のミスコンは、世間一般が思う賢さとのギャップが注目されたりして。その意味で、あまり真面目な話をするとカットされてしまうのではないかと思ったりしたのですが。

茅野 :そうなんですよ(笑)。そうした見られ方をされるのとは逆で、“東大生の象徴”としても見られるものだなと思いました。なので、まさか東大に入れるとは思っていなかった自分がミスコンに出たことで、東大を受験する人たちに「東大は手が届く所なんだよ」というメッセージを伝えることはできたかな、と。

――それは、どういう時に実感しますか。

茅野 :実は直接DMが届くんです!この間もフォロワーさんから合格報告をもらってすごく嬉しかったです。

「広告」は要らないものだと思っていた

――茅野さんは仮面浪人をして津田塾大学時代に東大を受験。現在は、教養学部だけでなく情報学環教育部にも在籍しています。情報学環教育部ではメディアや広告に関わる実務家教員が多く教鞭をとっているので、広告やメディアといったものについての関心もお持ちだと思います。ミスコンは、ある意味で「広告的」なものだとも思うのですが、茅野さんは広告についてどんな印象を持っていますか。

茅野 :情報学環教育部に入る前までは、広告はテレビやネットに出てくる無駄なものと思っていました。ですが情報学環教育部でデジタルサイネージとかのDOOH(デジタル屋外広告)を三菱総合研究所や元・電通の方から教わり、「こんな効果的な広告があるなんて!」と思いました。

正直言って、就活中に感じた広告業界、言い方は良くないのですが中間業者というか…。生産者と消費者が直接繋がる時代にその「間」で営業をする意味を感じられませんでしたが情報学環教育部でその効果をちゃんと細かく測ったり広告を「さりげなく」出して効果的に人の行動が変わったりと色々学べました。私、行動経済学が好きなのですけど、何気ない広告で行動が変わるって凄く面白いと思いました。

 
――社会問題といえばミスユニバースでは、こうした問題に対する自身の考えや活動をプレゼンしたり、他大のミスコンでもビブリオバトルで知性を評価するようになっていますが、こうした動きについてはどう思いますか。

茅野 :ミスユニバースは象徴化が進んでしまって、天空の人?(笑)みたいになっている気がします。一方で、ミスコンって出場者も地に足が付いた身近な存在感があると思います。手の届かない人達がやっているように映ってしまうと同世代との共感が薄れちゃうかなと。

――ミスコンについて、巷では様々な意見がありますが出場してみて感じたことはありますか。

茅野 :コロナ禍なのでライブ配信がメインだったのですが、結局、配信中にリスナーから貰えるポイントと課金額が連動し順位が決まっていきました。出場者に投資したお金ってその本人に渡している気分になりますよね?ファンも「勝ってほしい」って気持ちが強くなれば課金も増え出場者の「勝ちたい!」も加熱する。配信って結構時間取られるんですよね。最終投票日に向けて配信でのポイントを稼ぐために「今日丸一日中配信します」って人もいる。学生の本分はあくまで勉強なのに、その本分にお金が使われるならまだしも、お金自体は配信プラットフォーム会社やミスコン運営団体に行く。だけど配信やポイントで注目されたり、web投票してもらえないと勝てない。その構図は問題かなといつも思っていました。

――「ミス東大コンテスト」は、東京大学広告研究会という学生団体が運営していますよね。世間では「広告研究会」のあり方も話題になることがありますが、出場して思うことはありますか。

茅野 :自分も正直、イベントが好きな人の集まりなのかなって思っていたのですが、社会が抱くイメージとギャップがあると思いました。出場者に楽しんでほしい、この場を使って自己表現してもらいたいって。ちゃんと「考えている人」が多い印象です。

――2022年4月からは大学を卒業し、新社会人としての一歩を踏み出します。社会人としての抱負をひとこと。

茅野 :困っている人を助けたいと思ってミスコンに参加したときと気持ちに変わりはなくて、「現実に何をしてあげられるか」と「心の支えになる」という両方の助け方ができる自分にしかできないキャリアを歩みたいなって思います。