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店舗のデータが収益を生む 注目されるリテールメディアの概況

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ウォルマートを筆頭に、クローガーやウォルグリーンズなど海外の主要な小売業では店舗のメディア化が進んでいる。日本でもDX化が進むにつれ、メディア化に取り組む企業が増えつつある。国内における概況について、アドインテの稲森学氏に聞いた。

※本記事は、2022年8月1日発売の『販促会議』2022年9月号の転載記事です。

アドインテ
取締役副社長 兼 COO
稲森 学氏

店舗をメディア化するという言葉は、10年前から言われてきたキーワードで、今もデジタルサイネージを設置し、広告を流すことでしょ、と言われることもありますが、海外を筆頭に店舗のメディア化は更に進化しています。リテールメディアとは、小売業者が1stパーティーデータ、顧客会員基盤を活用して消費者の購買データや行動データを広告配信に利用する新たなビジネスモデルです。

リテールメディアはデータとコミュニケーションに焦点を合わせており、主な広告主であるメーカーは消費者に対して、スマートフォンアプリや店頭サイネージ、ECサイト上などで、購買行動に合わせた精度の高い広告を配信することができ、小売業者はそれによる広告収益を得ることができます。2016年から海外では本格化してきたリテールメディアですが、一括りにリテールメディアといっても、収益の仕組みが異なることはもちろん、広告メニュー化する上での優先順位も業種業態によって異なっています。

リテールメディアの全体像

日本におけるリテールメディア

日本では2020年頃からようやく各業態の売上上位の企業が取り組み始めてきましたが、ドラッグストアがリテールメディアに関する取り組みは一番進んでいる印象です。その他、家電量販店やスーパーマーケットでも同様の動きは加速しているように感じています。まだまだ海外のような仕組みまでは数年かかると思いますが、まずはデータを集約するCDPを構築し、購買行動を分析した上で、1to1に近いコミュニケーションは取れるようになってきました。

リテールメディアはその特長から購買行動にとても近いメディアですが、ゆくゆくは認知から購買までのフルファネルでの活用が求められています。そのためには、自社の販促メニューの整理と、ID-POSデータを活用した広告配信の連携が重要です。その際、ユーザー接点を整理する必要もありますので、店舗、アプリ、EC、SNSをフル活用して、コンテンツを届けるユーザー母数を最大化する必要もあります。

まだまだデジタル接点が少なかったり、各領域で別々に運用されていたりするケースが多いため、ここの整理は非常に重要です。整理してもメディアとして十分な配信ボリュームがない場合は、外部メディアのYouTubeやSNSを活用することになりますが、収益率が数倍変わってきますので、やはりオウンドメディアの運用に力を入れていくべきでしょう。

リテールメディアとして土台が整ってからは、やはり運用を最適化するための自動化と、省人化を目指したウォルマートのような仕組みが理想だと思います。ただ、リテールメディアはデータ活用の一つの出口にしかすぎません。ユーザーの買い物体験向上に寄与するかが、一番重要なことです。もちろん、広告だけに活用するのではなく、データをもとにした商品開発や店舗オペレーションに生かすことも必要となります。