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事業の「意味」が不確かになる時代 求められる、変化を捉える「伴走力」

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※本記事は、2022年9月1日発売の『宣伝会議』2022年10月号の転載記事です。

コンセント
取締役
大﨑 優氏

デザインマネージャー・サービスデザイナー。2004年アレフ・ゼロ(現コンセント)に入社。グラフィックデザイナーを経て、2012年にサービスデザイン事業部を立ち上げる。デザイン経営、事業開発、ブランディングなどの支援に携わる。「コンセントデザインスクール」等を通じて社内外の人材育成にも力を入れる。

 

Q.クライアント企業がデザイン、クリエイティブのプロに求めることとして、どのような領域、どのような課題の解決にニーズがあるとお考えですか。

A.オーダーされたものをつくることではなく、共につくりあげることが求められるようになりました。

DXの進展や生活者の価値観が変化する中で、多くの事業の「意味」が曖昧になり境界が溶けています。例えば、生活者が捉える「自動車の意味は何か」「移動することの意味は何か」など、事業が存在する意味が不確かになり、「何が問題か」という定義も難しくなっています。その背景から、デザイナーに期待されることは、オーダーされたものをつくることではなく、クライアントの経営や事業の状況を把握し、問題設定を仮設し、解決のためのプランニングをクライアントと共につくり上げることに変わってきました。

また、デザイナーがプロジェクトのなかで伴走することで、クライアントメンバーの創造的な思考と実行力を引き出し、育成していくようなニーズも増えています。

Q.昨今の企業コミュニケーションの潮流についてお聞かせください。

A.インターナルコミュニケーションに力を入れる企業が増えています。

事業の「意味」が溶ける背景から、その変化をキャッチアップし、意味を捉え直すためのインターナルコミュニケーションに力を入れる企業が増えています。

着目すべき点は3つです。ひとつは、企業のパーパスや事業ビジョンを、経営陣・従業員・顧客等が一緒になってつくり上げる動きです。企業が持つ意志を表明することに加え、生活者と共創する「目的」が重視される現在では、検討プロセスに「一緒につくる」過程を設定することが重要です。直接的・間接的に関与したメンバーから当事者意識を引き出し、企業・事業ブランドの「意味」を捉え長期的に成長させるための種を蒔いていくイメージです。

2つめは、マーケティング施策と事業の双方に対し、顧客体験で表す「意味」に一貫性をもたせる動きです。カスタマージャーニーマップ・マネジメントの手法を用いて顧客体験を可視化し、共通言語をもとにあらゆる施策を連携させていきます。体験価値が重要視される昨今の競争環境では、ブランディングに投資し生活者の認知と期待値を形成したとしても、事業の価値提供の段にてその整合性が取れていないと、むしろブランド価値の毀損になりうると言えるでしょう。

3つめは、従業員一人ひとりの創造性を刺激し、企業の価値提供の足腰を鍛える動きです。従業員が本来持っている創造性を引き出し、実行につなげるための育成施策と業務を設計する活動です。私は、企業が生活者に提供しているものは「体験価値」であると同時に「表現」だと捉えています。「この製品・サービスは社会に役立つでしょう?」という企業の自己表現です。表現することとはすなわち、社会と対話し自身の存在意義を確認する一連の作業です。従業員一人ひとりが企業の「意味」を捉え、自身の存在意義を確かめる「表現」をすることでそれらが企業総体としての表現になっていく。これが現代的な企業組織の有り様であり、ブランドが育ち続ける前提でもあると考えています。

「一緒につくる」過程や、カスタマージャーニーマップなどの視点を揃えるしくみを通じて、企業全体の創造性を促すことが、コーポレートブランド戦略の素地をつくる重要な観点です。