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BtoB広報では社会的関心集める「アジェンダ」設定が重要

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『広報会議』では、10月1日発行の2022年11月号にてBtoB企業の広報担当者へ向け、企業の持続的成長に結びつく『BtoB広報の実践』特集を掲載します。今回はBtoB企業が広報活動を行う重要性や、企業価値を高めるのに効果的な発信内容について、事業成長に貢献する戦略PRに詳しい山田まさる氏に聞きました。
※本記事は『広報会議』2022年11月号の転載記事です。

市場が成熟し製品やサービスなどでの差別化が難しくなった時代において、企業成長を続けるには、社会的な関心を捉えた「アジェンダ」(議題や課題)を設定し、それに応える企業の存在意義「ソーシャルメッセージ」を発信することが効果的だ。

Q1 なぜ、BtoB企業にも広報活動が必要なのでしょうか

A 市場が成熟し製品などでの差別化が難しくなったため

前提として、広報活動は、あくまで企業が抱える課題を解決するための「手段」。その手段をどのように使うのかという「戦略」が必須です。そこで、企業が経営課題を抱えているなら経営戦略に、商品の販売課題を解決したいならマーケティング戦略に、人材に困っているのであれば人事戦略に基づいて、広報活動の方向性を定める必要があります。

企業の存在価値を伝える
その上で昨今、BtoB企業の広報がより重要になってきています。社会や市場が成熟した現代、モノの機能やデザイン、サービスなどで単純に差別化を図ることが難しくなってきたからです。戦後から事業を続けている老舗企業などはこれまで、取引先のニーズに対応することで課題を解決して成長を続けてきました。今後もこのようなやり方で圧倒的に差別化ができ、ビジネスが安定して成長するなら広報活動はいらないでしょう。

しかし、同じ価値が他の企業でも提供できる状態にあるならば、課題を解決するための広報活動が必要になります。そこは、BtoBであってもBtoCであっても同じです。大きなマーケットになればなるほど、競合相手が増えますから、広報活動を通じて自社の存在価値を理解してもらえなければ、たちまち価格競争に陥り、提供価値が下がってしまいます。

社会への貢献性打ち出す
またITやAIの進展によって、今まで求められていたものが、まったく要らなくなってしまうことがあります。感染症や戦争などで世の中が激しく変化する昨今はビジネスの基盤が変わる可能性も大きく、消費者や取引先に「うちの会社、うちの製品でなければならない理由」を明確に伝えていかなければ、不要と見なされてしまうかもしれないのです。

そこで重要になるのが「ストーリー価値」の提案です。製品単体の機能ではなく、企業そのものに価値を感じてもらい、自分たちは何の課題をどう解決し世の中にどう貢献しているのか、といった企業の持つストーリーを、広報活動を通じて発信するのです。

しばしば「広報=一般の知名度を上げること」だと思われがちですが、必ずしも広く一般に知られることだけが広報ではありません。消費者と接点のないBtoB企業であっても、優秀な人材を採用したい場合や取引先からの信頼を獲得するため、何よりも社員のモチベーションをあげるためにも広報は有効です。

IRや財務を考える意味でも、潜在的な株主も含めたマーケットに自分たちの価値を伝えていく必要があります。業界の構造と競争だけに目を向けていては、ビジネスが成立しづらくなっている今だからこそ、BtoB企業にも企業価値を発信することの重要性が高まっているのです。

Q2 具体的にどんな情報を発信すればいいのでしょうか

A 世間の関心ゴトに自社がどのように貢献できるかについての発信を

BtoB企業に限らず広報機能の一つに「アジェンダ」の設定があります。「アジェンダ」とは、社会的に関心が集まっている議題(課題)を指します。これを前提とした、企業の社会的意義「ソーシャル・メッセージ」の発信が有効です。例えば、空調機メーカーなら「新型コロナに感染しにくい換気方法」を「アジェンダ」として設定できるでしょう。感染拡大を防ぐために、空気や換気について考える人が増えれば、空気のプロである空調機メーカーがどのような価値を提供できる会社なのかについて広報しやすくなります。

このように「アジェンダ」の設定においては、その時々の社会の変化と一般生活者の関心ゴトを迅速にとらえ、自分たちには何ができるのかを考えることが必要です。そして「ソーシャル・メッセージ」は、この「アジェンダ」に応えるものです。このため、単に自社の製品のPRに留まるのではなく、広義に役立つ情報が盛り込まれていることが欠かせません。

自社独自のメッセージ訴求
特に近年、SDGsやサステナビリティ、多様性の考え方や行動が、非財務情報として投資家などマーケットから重要視されています。これらに関しても、自分たちはどのような企業で将来をどう描いているのかをしっかり伝えていくことが求められます。

ただし、世界の共通課題においては、他企業も同じように取り組みますから、差別化していくのは難しい。多くの企業と同様の発信をしても自社の存在価値は伝えられません。そこでポイントとなるのが、自社のドメインを活かした「ソーシャル・メッセージ」の発信です。自社の本業に近いところで、自社だからこそ貢献できる「メッセージ」を打ち出すことが非常に重要です。

BtoB企業においても、世の中と自分たちはどこに接点があるのか、社会とどのようにかかわってどう貢献するのか。常にアンテナを立てて考えながら、自社の社会的な意義である「ソーシャル・メッセージ」を発信していく必要があります。

従業員の働きがいにも寄与
またこうした「ソーシャル・メッセージ」の発信は、社外のみならず社内の従業員にとっても効果を発揮します。自社の社会的役割をまず従業員に知ってもらうことで「うちの会社は頑張っているな」と従業員のモチベーションが上がれば、結果的に企業価値の向上につながるのです。そして、自分たちで自らの価値を積極的に伝えていくことはリスクマネジメントにもなるのです。

簡単に情報が得られるネットには、信ぴょう性が低く企業価値が棄損する恐れのある情報も溢れています。自社の価値を正しく伝えていくためにも、「ソーシャル・メッセージ」の発信は有効です。

Q3 発信を最大限広げるにはどうしたらよいですか

A 明確なターゲットの設定と周囲を巻き込む仕組みづくり

情報の伝播を考える際、誰に何をどう伝えたいのかを考えることが重要です。まずはターゲットを定め、そこに伝えるメッセージも含めたストーリーの中身を組み立てる、それからコストパフォーマンスも踏まえ伝播のために最適な広報手法は何かを考えていきましょう。

BtoB企業の広報担当者から「うちの事業や製品の話は、専門的で一般には理解しづらい」と相談を受けることがあります。しかしそもそも、ターゲットは誰なのでしょうか。伝えたい相手が、業界に興味、関心のある取引先やアナリストなら、あえて専門的な発信をした方が注目を集め、拡散される場合もあります。

拡散へ導く戦略設計を
また、情報を伝播させるには、自社だけで完結しないこともポイントです。自社を中心にともに取り組んでくれる相手をどのように設計していくかを踏まえて広報の方向性を組み立てます。BtoBに限った話ではありませんが、取引先など協力関係にある企業、ステークホルダーなどいろいろな人を巻き込めば情報は広がっていくはずです。

PROFILE

コムデックス 代表取締役社長 インテグレート 特別顧問
「未来の食卓」代表理事
山田まさる(やまだ・まさる)

早稲田大学第一文学部卒業後、コムデックス入社。2007年インテグレートを設立、COOに就任。(現 特別顧問)2008年からコムデックス代表取締役社長。日本PRアワード受賞(2008年、2020年)。著書に『脱広告・超PR』(ダイヤモンド社)など。

広報会議2022年11月号

【特集】持続的成長に結びつく
BtoB広報の実践

 
GUIDE1 
BtoB企業の広報、重要度が増す理由は何を発信するべきか
山田まさる
 
CASE1 計画を先行発表 新技術・アイデアの取り込み狙う タダノ
CASE2 「開かれた物流」でイメージを変える 日本GLP
CASE3 「ノーコード普及」協会設立で中小企業DX加速 アステリア
CASE4 「経営陣の生の声」伝わる統合報告書 村田製作所
CASE5 素材研究ラボ 採用やエンゲージメントに寄与 三井化学
 
COLUMN
・ 広報未着手の企業、まず何から取り組む?
・ 無名企業がメディアに取り上げられるには?
 
CASE6 鉄骨切断の迫力動画で潜在顧客へアプローチ タグチ工業
CASE7 予約が取れない工場見学  島田電機製作所
CASE8 子ども達が停電復旧を疑似体験  九州電力送配電
CASE9  働きやすい職場環境整えメディア出演増
 
COLUMN
・インターナルブランディングの進め方は?
・オウンドメディアをどう活用していく?
 
CASE10 「地震犠牲者ゼロ」目指すトップメッセージ Aster
CASE11 農業をアフリカへ、現地の課題を示す 唐沢農機サービス
 
GUIDE2
広報活動の社内理解を得るには
メディア掲載を増やすコツ
日高広太郎(広報コンサルタント)
 
COLUMN
・BtoB企業の記者発表会のポイント
・メディア露出を高めるプレスリリース素材
 
【特集2】インターナルコミュニケーションと企業ブランディング
CASE STUDY
モスフードサービス
REPORT
揚羽/ビジネスサーチテクノロジ/ブイキューブ/タノシナル

など