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コピーで、どうすれば「変化」を共有できるのか?

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【前回はこちら】コピーで、どうすれば「選択」してもらえるのか?

このコラムは、日々の実務でコピーや文章を書いているときにイマイチ刺さっていないと感じているものの、それをどうすれば克服できるのか、試行錯誤をしている方々に向けた特別コラムです。宣伝会議の「オンデマンド版コピーライティング実践講座」で添削講師を務めるかんべ笑会の神戸海知代氏が、アドタイ出張講座として、コトバのチカラを究める方法を3回にわたってレクチャーします。

かんべ笑会
コピーライター/コミュニケーションプランナー/クリエイティブディレクター
神戸海知代氏

TCC会員、九州ADC会員、JAPAN MENSA会員。大広、広瀬広告事務所、ADKを経てかんべ笑会を開業。クライアント直の案件も、広告代理店や制作会社と連携する案件も、たのしく向きあう毎日。ヤマサ昆布つゆ「ふたりの関係が冷めたと思ったら まず、台所で火をつける。」シリーズで日本雑誌広告協会賞、経済産業大臣賞を受賞。ぐいパン「パンツは、よごれるためにある。」、ニオイラボ ペット「ニオイは、生きてる証拠です。」などを制作。TCC新人賞、消費者のためになった広告コンクール、グッドデザイン賞、ACC賞などを体験。著書に共著『名作コピーの時間』(宣伝会議)。

 

キーワードその3:「パラダイムシフト」

こんにちは、かんべ笑会の神戸海知代です。「オンデマンド版コピーライティング実践講座」の添削講師を担当しています。出張講座もいよいよ今回が最終回です。

コトバのチカラを究める方法を3回にわたって探りましたが「もう3回目かー」と感じる人も「まだ3回目かー」と感じる人もいらっしゃるでしょう。というのも、人はそれぞれ異なるパラダイムを抱いて生きているからです。

パラダイムとは、もののとらえ方、あり方や考え方。“paradigm”は、ギリシャ語で「典型」を意味する“paradeigma”に由来しているそうです。おぎゃあと生まれて今の今までの体験や実感のすべてをとおして、もののとらえ方、あり方や考え方がすり込まれカタチづくられていく。パラダイムって「自分オリエンテッド」なんですね。

相対性理論で有名な物理学者のアルベルト・アインシュタインはこんなふうに語っています。「常識とは18歳までに身につけた偏見のコレクションのことをいう」と。ここでいう「常識」こそがパラダイム。なぜ18歳だろう? とこの文章をはじめて見たとき感じましたが、今年の4月から成年年齢が18歳に引き下げられている日本の現状とぴったりシンクロしていることにびっくりです。アインシュタイン博士、おそるべし。

パラダイムは、自分のなかで培われてきた基準であり、選択のよりどころ。そう考えると、とても大切なものであるだけに、とても扱いづらいものなのかもしれませんよね。というわけで、第3回目のキーワードは「パラダイムシフト」。いっしょに探ってみましょう。

違い≒変化≒シフト

あれ? なんだか違うゾ! と感じる、その瞬間が変化だとすれば、わたしたちは日常のあらゆる場面で変化を体験していることになります。朝起きて、鏡を見たら寝ぐせを発見。これも変化のひとつです。はじめてつくった料理の味がバシッと決まった。これも変化のひとつです。

そう考えれば、コピーや誰かに向けて文章を書くときにも、コトバを届ける相手に対してパラダイムの変化を期待しながらその想いを伝えているんだということがあらためてわかります。小さな変化を起こすなら、自分自身の態度や行動を改めればいい。しかし、大きな変化を望むなら、パラダイムの変化を起こさなければ達成できません。

パラダイムを意図的に変える、パラダイムをシフトするにはどうすればいいだろう。そもそもシフトなんて、できるんだろうか。そのヒントのひとつが、この文章の上のほうにある、赤い口紅で赤いドレスを着ているわたしのプロフィール写真です。

シフトを実感する

写真を見た瞬間、どんなふうに感じましたか? 「非日常だなー」と感じた人もいらっしゃるでしょう。「ふつうだなー」と感じた人もいらっしゃるかもしれませんね。この写真は、今年の7月にシドニーで行われたミズ・ワールドユニバーサルというページェントに参加したときのものです。このページェントは「すべての人を祝福する」と宣言していて「すべての性同一性、身長、体型、民族的背景、生育歴や家族背景、および自己同一性を持つ人びとに開かれている」と約束しています。

実際に参加してみて、どんな体験をしたと思いますか? お互いのいいところを発見してお互いに認めあう、ほめてのびる「ほめのび」を実感する毎日でした。

たとえば、わたしは超ド近眼で目が出ているのですが「あなたの目は大きくてキラキラしてきれいだね」とほめられる。英語がうまく伝わらなくて笑ってごまかそうとしているときにも「あなたの笑顔はどうしてそんなにハッピーなのかしら?」とよろこばれる。そこには「いい」「わるい」だとか「正しい」「正しくない」だとかの優劣を決める観点はまったくないんですね。あるがままを受け入れて、いつくしむ。パラダイムのほとんどは、習慣であり、無意識的なものです。

自分のパラダイムを意識的にとらえて、もののとらえ方、あり方や考え方のクセが見えてくると、違うパラダイムのものの捉え方、あり方や考え方を理解しやすくなる。結果的にシフトを起こしやすくなるんじゃないかと感じています。自分のパラダイムを意識的にとらえること、たとえばわたしの体験でいえば「超ド近眼で目が出ているのは美しくない」というパラダイムを持っている自分に気づくことです。写真を見るたびに、気づきを思いだします。

シフトを体験する

世界で最も大きな影響力を持つ経営コンサルタントといわれるスティーブン・リチャーズ・コヴィーは、電車のなかでの体験をもとにパラダイムシフトについて語っています。彼の著書から、そのまま日本語訳をご紹介します。

ある日曜日の朝、ニューヨークの地下鉄で体験した小さなパラダイムの変化を、わたしは今も覚えている。
 
乗客はみんな、黙って座っていた。新聞を読む人、物思いにふける人、目を閉じて休んでいる人。車内は静かで平和そのものだった。そこに突然、ひとりの男性が子どもたちを連れて乗り込んできた。子どもたちは大声で騒ぎだし、車内の平穏は一瞬にして破れた。男性はわたしの隣に座り、目を閉じていた。この状況にはまったく気づいていないようだ。
 
子どもたちは大声で言い争い、物を投げ、あげくに乗客の新聞まで奪いとるありさまだ。迷惑このうえない子どもたちに、男性は何もしようとしない。
 
わたしはいらだちを抑えようにも抑えられなかった。自分の子どもたちの傍若無人ぶりを放っておき、親としての何の責任もとろうとしない彼の態度が信じられなかった。他の乗客たちもイライラしているようだった。わたしは精一杯おだやかに「お子さんたちがみなさんの迷惑になっていますよ。少しおとなしくさせていただけませんか?」と忠告した。
 
男性は目を開け、子どもたちの様子にはじめて気づいたかのような表情を浮かべ、そして、言った。
 
「ああ、そうですね。どうにかしないといけませんね…病院の帰りなんです。1時間ほど前、あの子たちの母親が亡くなって…これからどうしたらいいのか…。あの子たちも動揺しているんでしょう。」
 
その瞬間のわたしの気もちを想像できるだろうか。わたしのパラダイムは一瞬にして変化した。突然、子どもたちの様子がまったく違って見えたのだ。違って見えたから、考えも、感情も、行動も変化した。
 
わたしのいらだちは消えてなくなり、態度や行動を無理に抑える必要はなくなった。わたしは男性の苦しみに共感し、同情と哀れみの感情がとめどなくあふれ出た。
 
「奥さまが亡くなられたとは…お気の毒に。差し支えなければ話していただけますか? 何かわたしにできることはありませんか?」

パラダイムによって、ものの捉え方、あり方や考え方は違って見える。さらにパラダイムに変化が起これば、ものの捉え方、あり方や考え方も変わる、行動も変わる。その変化は、コヴィー博士が体験したように、一瞬にして変わることもあるんですね。

わたしたちは、日常のなかで自分のパラダイムを意識することがほとんどありません。だって、おぎゃあと生まれてから今の今までずーっとすり込まれ、カタチづくられていますから。世界をあるがままに見ているのではなくて、自分のあるがままの世界を見て生きているわけですね。

そこで大切にしたいのは、ひとりひとりが違うパラダイムを持っていて自分も人とは異なる偏ったパラダイムを持っている、という事実を確かめておくことです。コトバを書いてココロをきたえる「筋トレ」ならぬ「言トレ」も有効な方法のひとつ。

わたしが添削講師をつとめる「オンデマンド版コピーライティング実践講座」では、主語をサービスや商品、ターゲット、時代や社会に置きかえてWhat to sayを導きだすトレーニングのなかで、さまざまなパラダイムにアプローチするチャンスが得られると思います。講座でお会いできることを楽しみにしています。

神戸氏が添削講師を務めるのが「オンデマンド版コピーライティング実践講座」

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