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【CES2023】ENEOS、サントリー、福岡市 日本から参加の非テック企業は何を発信したのか?

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2023年のテクノロジートレンドを占う最初のイベント、世界最大規模のテクノロジーカンファレンスであるCESが、米国はラスベガスで今年も始まった。CESには「Fourtune 500」の企業のうち、323社が登録し、3,100以上の企業が世界中から出展。会期中には270を超えるセッションが行われる。

毎年、約173カ国から参加する巨大なイベントだが、もともとCESは家電ショーとしてスタートした。しかし今日ではテクノロジーとイノベーションのイベントに変化を遂げている。CESでは、スマート家電に始まり、モバイル、自動車、ロボティクス、IoT、AI、XR、そしてWeb3や環境に至るまで、先端的な取り組みに触れることができる。ここで触れることができるテクノロジーは、産業からビジネスモデル、ライフスタイルを大きく変化させることは間違いなく、マーケターにとっても注目すべきイベントだと言える。

コロナ禍を超えて久しぶりに、現地より「アドタイ」視点で、森直樹氏が最新情報をレポートする。

今年のCESでは、1月3日のメディアデイにJETRO主催の日本のスタートアップピッチがあり、非テック企業のサントリーや、エネオスが出展するなど、日本企業参加の裾野が広がり始めていると感じた。CES2023現地レポート最終回となる5回目は、参加の裾野が広がる日本企業の発信にフォーカスしてお届けしたいと思う。

福岡市が官民一体で取り組むFUKUOKA Smart EASTが出展

まず、まちづくりの様々な課題を解決しながら持続的な発展を実現するため、未来に誇れるモデル都市を創造することを目的する、福岡市が官民一体で取り組む、FUKUOKA Smart EASTによる出展から紹介する。
福岡市は以前よりスタートアップ育成やシリコンバレーとの繋がり強化などに対して、積極的な取り組みをする自治体で筆者も関心を持っていた。展示スタッフの方にインタビューをしたところ、新しいスタートアップとの出会い、繋がりを求めて出展したとのこと。韓国や、フランスなどは国が力を入れてスタートアップ育成やCESへの出展支援などを行っている。日本でも国のみならず自治体や官民一体でのこうした取り組みが増えていくことは、起業を目指したり、米国スタートアップエコノミーとの連携を志向する企業にとってもよい流れではないだろうか。

FUKUOKA Smrt EASTによる出展の様子。

初出展でパートナー開拓や投資先ベンチャー企業を後押しするENEOS

次に紹介するのは、ENEOSだ。ENEOSは小型・省電力、Bluetooth対応の二酸化炭素検知センサーや、EV対応のエンジンオイルを出展していた。また、同社のCVCが出資するスタートアップもENEOSブースで出展。取材に対して、二酸化炭素センサーはすでに実用化しており、広く認知を得る機会や採用を検討してもらえるパートナーの開拓が目的とのこと。またEV対応のエンジンオイルは、車種によってオイルをつくり分けており、ここでも認知拡大やパートナー開拓を期待しているとのこと。出展目的が明確で、なおかつユニークな製品展示がなされている点に好感が持てた。

ENEOS出展の様子。EV用のオイルを訴求するためか、EV自動車が展示されていた。

自社開発のプロトタイプを出展するサントリー

最後に、こちらも初出展のサントリーを紹介したい。サントリーは脳波、心電、筋電といったバイタル情報を計測し、身体の老化の状態を推定するウェアラブルデバイスや、飲料に文字やイラストを3Dで印刷できる3Dフードプリンターを出展。ウェアラブルデバイスは自社開発で、同社ではこうしたIoTデバイス開発のためにエンジニアなどの採用を強化しているという。
また3Dフードプリンターはパートナー企業との共同開発とのこと。同社は出展により、取り組み認知の向上や、協業パートナーの開拓を期待しているという。FMCG系企業の出展では、P&Gがここ数年CESに大規模出展をしていたのが記憶に新しい。非テック企業が、CESでテクノロジーと出会い新たな競争優位を獲得していく。そんな日本企業の非テック企業が今後増えていくことを期待したい。

サントリーによる出展の様子。

飲料に実際に3Dプリントされた状態。砂糖水にイカスミでプリントしているとのことで、飲用可能で形も崩れづらいことが特徴という。

CES2023に感じた、CESの裾野がさらに広がる予兆

CES2023を振り返り、筆者が感じることは、これまで以上に出展企業や扱う領域が広がっているということだ。これまでも、ドローンやAI、3Dプリンタ、そして自動車などへ出展領域を広げ続けていたのがCESだ。しかし、これまではどちらかといえば、参加する新興技術、テック企業の領域の拡大で、自動車がソフトウェアやインターネットビジネスのエコシステムに組み込まれることによって広がってきた。ところが、パンデミック前のP&G進出や、今年の重厚長大産業に属するB2B企業の基調講演など、コンシューマーテックではなく完全なるテクノロジーとイノベーションにフォーカスしたイベントへの転換をうかがわせた。
今年、CTAが最も注目していることを匂わせたのはWEB3であり、メタバースだ。彼らは10年のスパンで起こる大変化の予兆が今あると解説した。CESは、明日とか来年とかに発売される新製品の見本市を脱し、イノベーションの未来について参加企業を巻き込みながら思想し、提言するイベントへ変化しているのではないか。

CESは家電業界やIT業界、自動車業界だけのモノではなくなった。全ての業種業界の企業から、自治体に至るまで自らのイノベーションを引き起こす起爆剤のひとつの可能性として、参加を検討してもよいのではないだろうか。

取材後日談 ラスベガスからサンフランシスへ そこで見たものとは?

CESの参加を終えて、筆者はサンフランシスコへ立ち寄った。もちろん、ビジネスミーティングのためであるが、もうひとつの目的があった。それは、国内のメディアやブログなどの投稿からサンフランシスコのイメージが非常に低下している印象を受けていたので、自分の目でイノベーションの発信源であるサンフランシスコの今を確かめてみたかったのだ。

結論から言おう、サンフランシスコは今日も元気に活動している。筆者は、2020年3月に訪れて以来の訪問であったが、その頃と街全体の空気や雰囲気はもちろん変化している。空き店舗も増えているし、人通りも当時よりは減っている。とはいえ、サードウェーブコーヒーやサードウェーブチョコレートのショップは健在だし、安価な飲食店からかなり高価な飲食店に至るまでお客は入っている。NORDSTROM(デパート)も営業している。しかも、訪れた1月9日は、ヘルスケア系のイベントが開催されており、街中でイベント参加者が賑わい、たまたま訪れたデジタルガレージの中心街にあるオフィスでは、日本企業を招いてのイベントの準備が進められていた。

もう、パンデミック前に戻ることはないが、かといって廃れることもなく、新しいイノベーションの拠点としてのサンフランシスコが生まれようとしていることを感じ取れた。筆者は、今後のサンフランシスコと、この場所での新たな出会いに期待したいと思う。

それでは、来年の1月に、また「アドタイ」のコラムでお会いしましょう。

中心街にあるamazon goのストア。

筆者がお気に入りの酸味が強いサードフェーブコーヒー。

森 直樹氏
電通 ビジネストランスフォーメーション・クリエーティブ・センター
エクスペリエンスデザイン部長/クリエーティブディレクター

光学機器のマーケティング、市場調査会社、ネット系ベンチャーなど経て2009年電通入社。米デザインコンサルティングファームであるfrog社との協業及び国内企業への事業展開、デジタル&テクノロジーによる事業およびイノベーション支援を手がける。公益社団法人 日本アドバタイザーズ協会 デジタルマーケティング研究機構の幹事(モバイル委員長)。著書に「モバイルシフト」(アスキー・メディアワークス、共著)など。ADFEST(INTERACTIVE Silver他)、Spikes Asia(PR グランプリ)、グッドデザイン賞など受賞。ad:tech Tokyo公式スピーカー他、講演多数。

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