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テレビCMがまだまだオワコンではないと思う理由―『テレビCMの逆襲』より

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「宣伝会議のこの本、どんな本?」では、当社が刊行した書籍の、内容と性格を感じていただけるよう、「はじめに」と、本のテーマを掘り下げるような解説を掲載していきます。言うなれば、本の中身の見通しと、その本の位置づけをわかりやすくするための試みです。

今回は、1月17日に発売した新刊『テレビCMの逆襲 運用型CMで売上50億を2年で実現したテレシーCEOの実践広告論』(土井健著)の「はじめに」の一部を紹介します。

定価:1,870円(本体1,700円+税) 四六判 184ページ
詳細・購入はこちらから(Amazon)

 

ネット広告の世界から、テレビCMの世界へ

皆さんは毎日テレビを見ていますか? 朝起きたら必ずテレビをつける人もいれば、家にテレビがない人、スマホでテレビ番組を見ている人もいるかもしれません。実は私もそうなのですが、経営者やミドルマネジメント層など、働き盛りでテレビから少し遠ざかっている人もいるかもしれません。

私は、インターネット広告(以下、ネット広告)の世界で10年ほど過ごし、ネット広告の代理店事業やアドテクノロジーの事業開発などに携わってきた“ネット側の人間”です。そこからテレビCMの世界に飛び込むことになったのが2年ほど前。本当に何も知らないまっさらな状態でテレビというメディアを見てみると、そこには多くの可能性があり、広告メディアとして未だに最強であると感じました。

しかし、残念なことに、テレビCMの魅力はまだ多くの広告主企業に正しく伝わっていないように思います。テレビCMを出稿するのはかなり高額だというイメージが根強く、有名な大企業だけのものであって、自分たちには関係ないと思われていると感じることが多くあります。

実際に私が会話をした経営者の多くの方々が、テレビCMは数億円規模の予算を前提にキャンペーンが設計され、その規模に応じたクリエイティブ、メディアプランが大手広告代理店から提案されるもの、というイメージを持たれていました。まさにスタートアップや中小企業の経営者の皆さんにとっては「テレビCMはハードルが高い」「自分たちのものではない」と思われていたのです。

そんな状況も、運用型テレビCMの登場によって一変しました。ネット広告ほどではないものの、地域や期間の選び方によっては百万円程度から放映できることが認識され、誰でも出稿を検討できるメディアというくらいにそのハードルが下がってきています。

また、テクノロジーの進歩によって、ネット広告の考え方に近い指標でデータを可視化できるようになりましたし、放映によって獲得したデータをもとに次回のキャンペーン効果をさらに高めることができるようになりました。

本書は、まだ広く知られていないテレビCMの正しい魅力を、より多くの人たちに伝えることを目的としています。

やはりテレビは強い!と思う理由

私が「テレビCMは強い」と信じている理由は、私自身が広告主として数億円にもおよぶ広告費を自らの事業のマーケティング活動に投じたことによって得られた成功体験があるからです。

広告主としてテレビというメディアを見たとき、ほかのメディアにはない3つの大きな強みがあります。

一つ目は、短期間で多くの人に情報を届けられること。テレビ視聴者が減っているとは言われていますが、二人以上の世帯におけるテレビ普及率は95%を超えており、1日で全国数千万人に届けることができます。ここまでの大規模リーチはネット広告では出せません。

しかも、情報が届くスピードが極めて速いので、「今日ここでこんなイベントをやります」と伝えると、数時間後にはそのことを非常に多くの方が認識している。この即時性もテレビならではの強みだといえるでしょう。

二つ目は、ターゲットとして想定していなかった層にも届くという、巻き込める層の広さです。実際のクライアント事例から実感したこともあります。とあるソーシャルゲームを制作する会社では、30代男性をメインターゲットとして長年ネット広告で業績をあげていましたが、数年経ち伸び悩んできたためテレビCMを出稿してみたところ、それまでターゲットと想定していなかった50代男性の利用が一気に増えました。

デジタル広告のように粒度細かくターゲティングできないことはテレビCMの弱点とされてきましたが、そこが逆に強みになるということです。

三つ目は、興味関心を引き出す力。ぼーっと見ていたテレビCMについつい惹き込まれてしまい、気がついたら心を奪われていたという経験をしたことはありませんか? めったにテレビを見なかった私でさえ、何気なく見ていたテレビCMに心が奪われて感動したことはあります。

ネット広告は人によって見ているデバイスが異なり、それぞれに最適化されますが、テレビという大きな媒体で、15秒や30秒の動画をリラックスしたタイミングで視聴してもらえることも影響しているのかもしれません。テレビCMとネット広告では次の日に思い出してもらえる確率が何十倍も違うというデータもあるほど、テレビCMは人々の脳裏に残りやすいという特長があります。

ほかにもテレビCMを出稿することの副次的効果などが多々ありますが、この3点だけを見てもテレビCMはかなり“強い”と思うのです。

四半期の売上高が設立2年目で17.9億円に

とはいえ、やみくもにテレビCMばかりを推すつもりはありません。本書の中でも繰り返し述べていますが、テレビCMは広告手法のひとつに過ぎず、商品・サービス特性や企業規模、タイミングによってはテレビ以外のメディアを活用したほうが効果があることも多々あります。商品や企業の魅力を広く認知してもらい、ファンを増やし、購買などの具体的なアクションにつなげる、そのためにどのようなキャンペーン設計をすべきかをメディアニュートラルに考えるというのが広告の基本です。

運用型テレビCMを主要事業とするテレシーが、タクシー広告やエレベーター広告など、テレビ以外のさまざまなメディアを使った広告事業を展開しているのはそのためです。

クライアントの事業を成長させること。繰り返しになりますが、広告はあくまでそのための手段の一つです。

当然のことながら、クライアントには無駄なお金を1円だって使ってもらいたくありません。予算や時間の制約がある中で、成し遂げたいゴールに到達するにはどうすべきか、私たちのメンバーはクライアントとじっくり膝を突き合わせて考えていき、そのために媒体費や制作費はいくらぐらい使うかという議論を繰り返します。私たちから「こういうCMをつくりたい」「こんな人を起用したい」といった発言をすることは絶対にしないですし、クライアントと同じ目線でやってきました。ここは我々テレシーの強みといえます。

そういった姿勢が、テレシーが高く評価されてきた理由なのでしょう。サービス開始から2年にも満たない2022年度第2四半期(4~6月)の売上高は17.9億円、これは前年同期の10.7倍に上り、当初の想定をはるかに上回るスピードで成長することができています。

本書では、2021年創業以来の歩みを踏まえ、どうやってここまでの急成長を遂げたのかについても余すことなくお伝えしていくつもりです。テレビというメディアが持つポテンシャルはもちろん、私たちテレシーの戦略についても明かしていきます。

恐らく、本書を手に取ってくれるのは、企業の経営者、マーケティング担当者・責任者、そしてテレビCMに関係しておられる方々ではないかと思います。まずは、そのような方々に、運用型テレビCMの登場によって一気に身近になったこのメディアの魅力を知ってもらう。そして、テレビCMに限らず、ボーダーレスになっていく広告業界での戦い方について、知って頂くことを目的としています。

ここから「テレビCMの逆襲」が始まる

テレシー事業がスタートした当時のクライアント層の中心は、「100万円からはじめられるテレビCM」という言葉に驚き、低予算でもテレビCMの出稿が可能だと知ったスタートアップ企業でした。これまでネット広告に費やしていた予算の一部をテレビCMに使うよう提案したところ、低予算であることに加えて、効果測定も可能だということで興味を示してくれました。

意外だったのは、新たなテレビCMの活用法を知った、ナショナルクライアントと呼ばれる大企業のクライアントからも問い合わせが増えてきたことです。大手広告代理店からテレシーに切り替えてくれた事例も増えてきています。

運用型テレビCMの登場により、より実効性の高い効果測定が可能になり、あらゆる業種において、さらなる成長をするための手段としてテレビCMが考えられるようになったという背景もあります。2020年以降、資金的に余裕があり、儲かっている会社がさらに儲かるという構図ができあがってきました。

一方で、ネット広告中心でやってきた企業が、顕在層のユーザーについてはほとんど広告が届いてしまい、それ以上ユーザーを獲得することの限界を感じていたタイミングでもあったのかもしれません。

その中で運用型テレビCMが資金面でのハードルを下げ、効果測定という価値提示をしたことで、多くの企業の「テレビCMをやってみよう」というチャレンジを後押しすることになったのではないかと思います。未曾有のコロナ禍にあるもかかわらず、運用型テレビCMをはじめとした新しい広告メディアの可能性を示すことにつながったような気がします。

2000年代以降ネット広告が主役に躍り出て、「テレビはオワコン」などと言われるようになりましたが、まだまだテレビもテレビCMも終わっていません。それどころかさらなる秘めた力を持っていると私は信じています。地上波テレビの市場規模は、電通の「2021年 日本の広告費」によると、未だに1兆7184億円もあり、成長著しい運用型テレビCMについてはテレシーが2020年に行った市場調査によると2025年には920億円規模にまで拡大するとされています。

このポテンシャルを見過ごすなんてもったいなさすぎます。

今こそテレビCMの可能性を見直すとき。
さあ、ここから「テレビCMの逆襲」が始まります。

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新刊『テレビCMの逆襲 運用型CMで売上50億を2年で実現したテレシーCEOの実践広告論』発売

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土井 健 (どい・けん)  株式会社テレシー 代表取締役CEO

同志社大学卒業後、サイバードへ入社。モバイル広告代理店事業立ち上げに従事。2011年にECナビ(現CARTA HOLDINGS)に入社。グループ会社であるfluctに出向し、スマートフォンSSP「fluct」の立ち上げに参画。年間売上高20億から114億の日本最大級のSSPに育て上げ、東証一部(当時)上場に貢献。2016年fluct代表取締役を経て、2020年VOYAGE GROUP(現CARTA HOLDINGS)取締役に就任しテレシーの立ち上げに参画。2021年、テレシー代表取締役CEO(現職)。運用型テレビCM事業の成長を主導するとともに、タクシー広告、アドトラック、世界初のヘリコプター広告などのメディアにも注力する。