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3人で咲かせたアイデアの種 販促コンペグランプリインタビュー

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協賛企業から出される商品・サービスのプロモーションについての課題解決策となるアイデアを企画書形式で募集する「第15回販促会議 企画コンペティション(販促コンペ)」。
3月1日から公式Webサイトで協賛課題の一部先行公開がスタートしました。
本記事では昨年、応募総数4013本の中から第14回のグランプリに輝いた「オセリポ!」について、制作者の3人に企画が生まれた背景や制作の裏側、受賞後の変化について聞きました。
※本記事は『販促会議』2023年1月号を再編集したものです。

第15回販促コンペ公式サイトはこちら

左から松沢洋祐氏(クリエイターズグループMAC)、迫 健太郎氏(パナソニック)、久松 葵氏(パナソニックオペレーショナルエクセレンス、クリエイターズグループMAC)。

初めてのチームでグランプリ獲得

─まずは受賞、おめでとうございます。

3人:ありがとうございます。

:実は今回の販促コンペが、この3人で取り組んだ初めてのコンペになります。新しいチームでやるときは初回が大事だと思っています。楽しくやることも重要ですが「最初だからこのくらいでいいや」という考えはなく、最初の結果が良ければ次の挑戦にも意欲的になります。ただ、いい結果は追い求めていましたが、まさかグランプリまで獲得できるとは思いませんでした。

松沢:実は、私のキャリアのスタートは広告ではなく建築設計でした。リーマンショックを機に独学でグラフィックに転向し、インハウスデザイナーなどを経験。現在のクリエイターズグループMAC(パナソニックグループの広告制作会社)で3年ほど前からアートディレクターとして活動しており、パナソニックから出向してきた迫さんと久松さんに出会いました。2019年のMetro Ad Creative Awardの私の受賞作を見た迫さんが声をかけてくれて「いつか一緒に仕事がしたい」と話していたのですが、ようやく今回一緒に取り組むことができました。

久松:私は4年前、パナソニックに入社してすぐに宣伝会議の「コピーライター養成講座」に通っていました。そこで販促コンペのことを知り、1人で応募したのですが、箸にも棒にもかかりませんでした(笑)。今回、チームで取り組んでみて「人に企画を見てもらう」ことの大切さを実感しました。

松沢:実は私も1人で3回応募しています。結果は久松さんと同じくです。

:私も学生時代から数えると今回が4回目の挑戦です。どちらかと言えば3人とも「企画派」の人間なので、一緒に取り組むならアイデア力が試される販促コンペがいいのではないかと考え応募しました。

アイデアは1人で完結させない

─制作時の役割分担はありましたか。

:絵づくりが得意な松沢さん、プランナーをしている久松さん、ものづくりや企画が得意な迫とそれぞれの特徴はありますが、アイデア出しは皆で一緒に行いました。やり方は初めから考えていて、誰かが出したアイデアに対して企画書は別の人がつくるといったバトンパス方式を取りました。その方が、最初のアイデアから何段もレベルアップできると思ったからです。

松沢:今回の「オセリポ!」も、私がオセロには「ライトニングボルト」など打ち手によって独特な技名があることを発見したのがきっかけでした。ただ、おもしろいネタだけれど1人ではさばき切れないと感じて、すぐに2人にこのネタを預けました。

:松沢さんの最初の案は独特な技名を屋外広告でシリーズ展開するというようなアイデアだったのですが、それを「実況アプリにしたらもっとおもしろくなるのではないか?」と考えて、今回の企画のコンセプトと企画書の骨子をつくりました。次に企画書を久松さんにパスし、細かいストーリーづくりを担当してもらいました。その中で、「実況音声もスポーツ風やアニメ風など、種類があるとおもしろいのでは」といったアイデアが会話の中で生まれました。

「オセリポ!」の企画書の一枚。個々の技の解説は入れないことで、「これってどんな技!?」や「どういう語源!?」と、審査員が調べてみたくなるようなレイアウトを狙った。

久松:普段1人で企画書をつくっている時は完成したら「100点」と思ってしまい、修正を加えることがほとんどありません。ただ、今回はクリエイティブディレクターの迫さんの粘りがすごかった。前日に言われたことを反映して見せても「ありがとう。でも、もっと良くなる方法をさっき思いついちゃったんだけど⋯⋯」と、なかなか諦めない。

タイトルの「オセリポ!」は私が考えたのですが、締め切りぎりぎりまで「それも良いけど、こういう名前もどうかな?」と言われ続けました(笑)。結果、この粘りがグランプリまで導いてくれたと思っています。これがクリエイターとしてあるべき姿なのだと学ばせてもらいました。

「できそうやな」と思う企画かどうか

─審査員からはスマホを横に置くだけという点など、実現性の高さも評価されました。

松沢:第1回のグランプリ作品「日本コカ・コーラ『シークレット・メッセージ』」の企画が大好きなのですが、以後の販促コンペの受賞作全て「やってみたい」と感じるアイデアだと思っています。いつか自分もそんな企画をつくりたいと思っていたので、その点は大事にしました。

:普段、メーカー側にいるからこそ、クライアントの気持ちが分かり、フィジビリティや「できそうやな」感を大切にしました。販促コンペは過去の受賞作も、一見シンプルに見えても「効くよね」といったリアルな施策が評価されていると感じていました。

久松:おもしろい企画でも、ROAS(Return On Advertising Spend:広告費用対効果)が低くなってしまっては採用されません。制作側でもあり、クライアント側でもある立場だからこそ分かるものがありました。

:もう一つ注意したのは、ブースト的な案、一瞬の盛り上がりにならないようにすることです。あくまでオセロの持つ良さを生かしながら、違うゲームにならないように気をつけました。

久松:オセロをやったことがない人だけでなく、オセロを好きな人がもっと好きになる、オセロファンが嫌がらないものを意識しました。

販促コンペグランプリが持つ意味

─反響やご自身の変化はありましたか。

久松:多くの方から声をかけていただきました。実現性を高く評価しているコンペなので、普段のクライアントからも「実現できるアイデアを考えられる人」「企画に真剣に向き合ってくれる人」なんだと評価してもらえていると感じます。

松沢:何よりこのチームから学べたことです。迫さんのディレクションのうまさや、久松さんの気付きのヒントになるような言葉の数々に触れることができ、仕事に向き合う気持ちも変わりました。今後は3人で他のコンペにも挑戦していきたいです。

:僕は家電の工業デザイナーからキャリアを始めたので、プロダクトデザインとコミュニケーションデザイン、この2本柱を大事にして活動しています。プロダクトデザインに関してはいくつか実績がありましたが、コミュニケーションデザインの領域ではまだ多くありませんでした。今回、大手広告会社をはじめ精鋭たちが集まる「人を動かす」アイデアのコンペで結果を残せたことは、今後の自信につながります。

第15回販促コンペのメインビジュアルも製作


3人には、第15回販促コンペのメインビジュアル制作も担当いただきました。今年のメインビジュアルのテーマはAI(人工知能)を超えるような発想です。ビジュアルではAIチップが驚いているような表情を表現しています。販促コンペでは既成概念にとらわれない斬新な企画を世に送り出してきました。急速なAI活用が進む昨今ですが、検索やAIでは辿りつかない「ええアイデア」を募集します。