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「素晴らしい提案でした。でも今回は他社に決めました」と言われないために

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「宣伝会議のこの本、どんな本?」では、当社が刊行した書籍の、内容と性格を感じていただけるよう、「はじめに」と、本のテーマを掘り下げるような解説を掲載していきます。言うなれば、本の中身の見通しと、その本の位置づけをわかりやすくするための試みです。

今回は、3月20日に発売した新刊『競合プレゼンの教科書 勝つ環境を整えるメソッド』(鈴木大輔著)の「はじめに」の一部を紹介します。

定価:2,420円(本体2,200円+税) A5判 344ページ

 

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「競合プレゼン」に勝ちたいあなたへ

本書のタイトルに少しでも「ピクッ」と反応した方は、発注側か受注側かはさておき、お仕事の中で、何らかの形で「競合プレゼン」に関わっているのではないでしょうか。そのような方はぜひ、本書を読み進めてみてください。きっとお役に立てると思います。

「ビクッッ」と身体が硬直し、心臓がギュッと締め付けられた方がいたとしたら。想像するに、受注側として「競合プレゼンに勝てない」という、深いお悩みを抱えた方でしょう。負けが続き、気力も体力もすり減らしているかもしれません。そのような方は、一刻も早く本書を読み込んでください。きっと助けになれると思います。

「素晴らしい提案でした。でも今回は他社さんに決めました」

競合プレゼン敗退の連絡とともに、何度このセリフを聞いたことでしょう。提案を褒められたのに不採用。渾身の企画書だった。満足のいく提案ができた。確かな手応えがあった。でも勝てなかった。自分には何が足りなかったのか? もはや自分にできることはないのではないか? そう思い悩んでいるビジネスパーソンも多いでしょう。かくいう私も、そんな悩みを抱えたひとりでした。

あなたの周りにもいませんか? 飛び抜けた提案プランをつくれるのに、どうも上手く採用に至らない人。「あの人は職人気質だからね」「提案の良さを理解してもらえなかったね」なんて言葉で慰められているかもしれません。逆に、毎回飛び抜けた提案プランを連発しているわけではないのに、高確率で採用される人もいます。「営業力があるね」「百戦錬磨だね」「本番に強いね」なんて言われているかもしれません。では、その差はどこからくるのでしょうか?

実は、「競合プレゼンに勝てない」と悩む人が、気づいていないことがあります。それは、競合プレゼンに勝つための方法論には、2種類あるということ。そして、多くのビジネスパーソンは、その片方の習得しかしていないのです。

競合プレゼンに勝つための2つの方法論

【提案の中身をつくる方法論】
競合プレゼンのお題に直接答えるための方法論。課題設定力、戦略構築力、ロジック構築力、企画術、アイデア発想術、プランニングメソッド、企画書作成術、プレゼンテクニックなど。体系立てられた理論があり、書籍や講座多数。直接的に企画書やプレゼンの「中身」に反映される。

【勝つ環境を整える方法論】
勝つ環境を整え、純粋に提案の中身で勝負できるところまで、チームを引き上げるための方法論。現場で培われた実践的な知識・経験から導かれる。企画書やプレゼンの「枠の外」や、「仕事の進め方」に反映される。負ける理由=不採用理由を潰すために活用される。

 
そして、あなたが(手っ取り早く)競合プレゼンの勝率を上げるために身につけるべきは「勝つ環境を整える方法論」であるというのが、本書の主張です。

あなたが勝てないのは「勝つ環境」を整えていないから

多くの人は、競合プレゼンの敗因を「提案の中身でライバル社と差がついたから」と結論づけようとします。私が講師を務める宣伝会議の教育講座での話ですが、何も事前情報を与えずに、受講生に競合プレゼンの敗因分析をやってもらうと、7〜8割は「提案の中身の理由」を挙げます。「ターゲット設定のミス」「戦略の方向性違い」「企画がつまらなかった」「プレゼンに一貫性がなかった」などなど。言い換えれば「もっと個々人の能力が高ければ勝てた」と結論づけているのです。真面目でストイックな分析で好感が持てるという見方もありますが、もう少し「能力以外のせいにしても良いのになぁ」と、私なんかは思ってしまいます。

 
実は、競合プレゼンの敗因には「提案の枠の外の理由」もたくさん存在します。ライバル社との「中身勝負」に持ち込めているならまだマシで、多くの場合、そこに持ち込むまでもなく負けています。提案の中身をいくらつくり込もうが、そもそも勝つ環境が整っていなければ、土俵に上がった瞬間に負けは決まっているのです。

「知らなかったから負けました」は、もうやめよう

競合プレゼンは、今や広く一般的に浸透している商習慣です。当然、受注を勝ち取るために、日々研鑽を積んでいるビジネスパーソンも多いでしょう。しかしながら、その多くが「提案の中身をつくる方法論」の習得に、たくさんの時間を割いています。「○○は課題設定が9割」「マーケティング○○ストラテジー」「勝てる企画のつくり方○○選」「最新プランニング○○メソッド」「新市場を創造する○○モデル」「魅せるプレゼンテクニック○○の法則」などなど。既存のビジネス書や講座のタイトルを見れば、その偏りは明らかです。勝つための準備としてはまったく間違っていませんが、習得にはそれなりの時間がかかります。

圧倒的に「勝つ環境を整える方法論」が足りない。その存在にすら気づいていない。それが私の問題意識です。知識や経験が特定の個人内に偏在し、暗黙知化している、と言っても良いでしょう。提案の中身をつくる方法論と同様、競合プレゼンの勝敗に強く影響するにもかかわらず、それを網羅した書籍は見当たりません。たまにネットで見かける競合プレゼンの経験則も、どこかコラム的と言いますか、個人の狭い経験範囲に留まっている印象です。まして、会社は教えてもくれません。

何も知らずに、いきなりプロの試合に放り込まれる。必要な知識をあらかじめ装備することもなく、試合巧者に挑んでいく。そして、手痛い敗北と引き換えに、少しずつ少しずつ、自分の中に知見を蓄積していく。皆さんが、皆さんの会社が、競合プレゼンでやっていることは、まさにこれなのです。

知っているだけで、未然に防げる失点がある。勝敗に直結する要素がある。なぜそれを、会社は事前に教えてくれないのだろう? なぜ隣の部署と同じミスを犯し、失注を繰り返すのだろう? 受注を勝ち取れるようになるまでに、どれだけの損失を支払うのだろう? そんな疑問が、本書を書こうと思った動機です。

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本書はアドタイコラム「競合を勝ち抜くための『もう片方のスキル』」をもとに大幅に加筆修正したものです。コラムもぜひご覧ください。

鈴木 大輔 (すずき・だいすけ)
FACT/ADKクリエイティブ・ワン 戦略プランナー

2006年ADK入社。競合プレゼンの存在すら知らなかった営業時代を経て、2010年より戦略プランナーとして大阪へ。一転して競合プレゼン三昧の3年間を過ごし、勝率5割を達成。ところが東京に戻ってからは、思うように勝てない日々が続く。業界3位の広告会社で苦しみながら戦い抜いた10年以上に及ぶ経験と、百を超える競合プレゼンで溜め込んだ知見を、競合に勝つための方法論として体系化。2019年、クリエイティブブティック「FACT」の立ち上げに参画。東京大学大学院教育学研究科修士課程修了。