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コラム

澤本・権八のすぐに終わりますから。アドタイ出張所

頭の中に聞こえてくる登場人物の「声」を文章にしている(宮島未奈)

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【前回コラム】SKY-HIさんとは「音楽ファースト」で話し合える(BE:FIRST・LEO)【後編】

今週のゲストは、小説『成瀬は天下を取りにいく』(新潮社)が話題沸騰中の作家、宮島未奈さん。小説家のスタイルはさまざまあれど、“頭の中に登場人物の声が聞こえてくる”という天才肌の創作過程は必読です!

今回の登場人物紹介

左上から時計回りに、澤本嘉光(すぐおわパーソナリティ)、宮島未奈、中村洋基、権八成裕(すぐおわパーソナリティ)

※本記事は2023年3月26日放送分の内容をダイジェスト収録したものです。

澤本さんの新CM、東京ガス「母の推し活」篇がバズる!

澤本:皆さんこんばんは、CMプランナーの澤本です。

権八:はい、こんばんは。CMプランナーの権八です。

中村:はい、こんばんは。Web野郎こと中村洋基です。今夜はリモートでお送りしております。皆さん、近況はいかがでしょうか?

澤本:あのね~。東京ガスが年に1回つくっている企業CMが、3月17日に公開になりまして。

中村:あの、泣けるやつ。

澤本:今回はね、泣けるというよりは時代に即したものということで、韓流アイドルの“推し活”を始めたお母さん、という設定でつくったんですけど。それが過去の東京ガスのCM再生回数を史上最速で上回って、Twitterでの再生回数が2日間で500万回を超える事態になっていて……。

東京ガスのCM「母の推し活」篇(90秒)。

中村:ええ~!?

澤本:それを聞いてたら、「推し活」ってなんとなく表面上のものかと思っていたら、本当にいろんなところに浸透しているんだな、と。

権八:いや〜、素晴らしいです!僕も見ましたよ。しかもバズって回ってきたのを見ました。日々SNSのタイムラインを見ている人の感覚からすると、ものすごく等身大で今日的で共感しました。

澤本:そうなんだよ。だから、僕らが思っている「とてもコマーシャル的なもの」とはちょっと違うんだよね、あれは。

権八:うんうん。

澤本:これまで(クライアントから)「このCMや企画って、ウチじゃなきゃダメなの?」って言われてきたじゃない。「他の商品でもいい内容なんじゃない?」って。もちろんダメじゃないと思っていたけど、今回のCMをやってみてさらに、その商品の得になるんだったらやった方がいいんだな、っていう気がしたんですよね。

権八:なるほど。たしかに東京ガスのCMって、最後の最後にガスコンロの火が出てくることで「あ、コレ、東京ガスなんだ?」と、いい意味で後になって気付くというか。

澤本:そうそう。

権八:そういうCMって、最近ホントにないというか……。どうしても「1秒目からウチのCMだって分からせてくれ!」っていうのが多いよね。

澤本:そうそう。僕らもそういう要望に慣れてきちゃってるけど、そういうつくりではないものでも最終的には得をすることもある。

権八:そうですよね!

中村:気になった方は「東京ガス 新CM」とかで検索して、ぜひぜひチェックしてみてください。

権八: 僕もひとつ、いいですか?サントリーさんの「-196℃瞬間凍結無糖レモン」という缶チューハイのCMなんですけど(3月25日からテレビCM順次放映)。仲野太賀くんとラランドのサーヤさんを迎えた久々にインパクト系のCMなので、皆さん見てください、そして買ってください。「-196℃」、サントリーです。

サントリー/-196℃瞬間凍結「イチキューローうまい 発売日無し」篇 (15秒)。

澤本:すごい、「サントリーの人」みたいだね(笑)。

権八:あははは!

中村:権八さんの「インパクト系」は、本当にインパクト系ですからね。

権八:あはは! でもちゃんと商品に落ちていますんでね。おいしいCMなので、ぜひご覧ください!

澤本:楽しみです。

「すぐおわ」MC陣のイチオシ作家が登場!

中村:ということで、お待たせいたしました!今夜も素敵なゲストにお越しいただいております。デビュー作『成瀬は天下を取りにいく』(新潮社)が話題の作家、宮島未奈さんです。こんばんは、よろしくお願いしまーす!

宮島:よろしくお願いしまーす!

中村:宮島さんは滋賀からリモートでつないでいただいています。今回、宮島さんは澤本さんの推薦なんですけど。以前から『成瀬は天下を取りにいく』がめっちゃ面白いよ、と言っていましたよね?

澤本:そう、推し活、推し活!

中村:はい、澤本さんが推し活をされていたので、今回のラブコールでゲストにお越しいただいたわけなんですけど。澤本さんはどんなタイミングでこの本を読まれたんですか?

澤本:新潮社さんに友だちがいるんですけど、その友だちが「コレ、澤本すごい好きだと思うから、読んだ方がいいよ」と教えてくれて。あんまりそういうことを言う人じゃないのよ。

だから読んでみたら楽しくて、映像を見ているのと同じようなテンポでバンバン読めちゃったから「こういうの、久々だな!」と思って。

権八:もう、最高のキャラクターが生まれてしまっていますよね?(笑)。そのあたりを、ぜひ。

中村:はい。根掘り葉掘り、誕生秘話などをお聞きしたいんですが、初めにゲストの方にお願いしている「20秒自己紹介」というコーナーがございます。この「すぐおわ」は、広告の番組ということで、ご自身の自己紹介をラジオCMの秒数20秒に合わせてやってください、と。早速、振ってもいいですか?

宮島:はい、どうぞ!

中村:行きます。では、どうぞ!

カーン♫

宮島:初めまして。宮島未奈です。同い年の夫と、小学3年生の娘と滋賀県大津市で暮らしています。得意料理は、味噌汁です。3月17日に『成瀬は天下を取りにいく』で小説家デビューをしました。元気になれるお話なので、ご家族みんなで楽しんで下さい。宜しくお願いしまーす!

カンカンカン♫

中村:バッチリでございます!

澤本:ありがとうございます!

中村:完全に、美しく入りましたね、20秒に。

澤本:あははは。

権八:イイですね。ほのぼのしてしまいました。

中村:宮島さんからまだ読んでいないリスナーに向けて、『成瀬は天下を取りにいく』がザックリとどんなお話なのかを紹介してもらえますか。

宮島:そうですね、まず第1話が「ありがとう西武大津店」という話になっていまして。成瀬という中学2年生の女の子が、地元の西武大津店が閉店してしまうので、夕方のニュースの中継に毎日映りに行くことを目標にする、というお話です。それを、幼なじみの島崎みゆきという子の目線で書き表した内容になっています。それ以降も成瀬とそれを取り巻く人々のお話になっていて、全部で6つのお話が入っています。

澤本:ちなみに、「映り込み」には昔から興味を持っていらっしゃったんですか?

宮島:ローカルニュースとかに映り込んでいる人とかって、いるじゃないですか?(笑)。そういう人たちって、何をしに来ているんだろうな、目立ちたいと思ってきているのかな、と想像をして。そこから、「毎日映っている子がいたらどうだろう」と発想しました。

私は地元が静岡なんですが、 静岡では『まるごと』(静岡第一テレビ)という番組があって、毎日静岡駅から中継をしていたんです。それをイメージしてたんですけど、もしも大津でやるとしたらどこがいいかな?と考えていた時に、ちょうど西武大津店が閉店するという大きなニュースがあって。それで「じゃあ、西武から中継することにしちゃえばいいか」ということで書き始めました。

「降りてきた」ヒロイン・成瀬の新しさとは?

澤本:今回の「成瀬」というキャラクターは、どういったところから思いつかれたんですか? 降りてきた、というか?

宮島:でも、ホントに降りてきた、という感じだと思います。あんまりウンウン考えてこうなったわけではなくて……。ただ、ちょっと変わった女の子の方がいいなと思って、それを見つめるふつうの子、みたいな対比で書き始めました。でも最初のうちは、成瀬がふつうに喋っているところもあったりして。書き進めながら調整を加えていった感じですね。

「どんなことをしたら面白いかな」「どんなことを言ったら面白いかな」と、漫才のボケじゃないですけど、「おもしろ要素」を加えていったらこういうキャラクターになった、という感じです。

権八:どこかのインタビューでも仰ってていましたけど、モデルの子がいるわけじゃない、というのに最初びっくりして。

宮島:そうですね。特定のモデルがいないまま書いていたら、最終的に『こち亀』の両さんみたいなキャラクターになったな、と思っていて。元々『こち亀』がめちゃめちゃ好きで、小さい頃から凄く読んでいたんですね。だから笑いのセンスとかも割とそこから得ているものが多いと思います(笑)。

中村:なるほど!

権八:ふふふふ。

宮島:成瀬は、周りを巻き込んでいくキャラクターになりましたね。「こち亀」も、やはり中川とか本田とか部長とかが巻き込まれていくのが面白い。成瀬に関しても、島崎とか大貫、西浦といった周りの人が巻き込まれていく面白さがあるのかな、と思っています。

権八:うーん! やっぱりこのキャラクター設定が面白い!たとえば、さっき澤本さんに「コレ、絶対に澤本が気に入ると思うよ」って薦めてくれたお友だちもそうだと思うんですけど、澤本さんて昔の「尾道三部作」とか、原田知世ちゃんがデビューした時のキャラクターが大好き、とかがあるじゃないですか?

澤本:はいはい。

権八:で、この成瀬もやっぱり新しく感じるんですよね、キャラクター像が。さっき物語のさわりを話していただきましたけど、どうしてこのキャラクターになったのかが不思議、やっぱり不思議で。なんですかね、コレは(笑)。

中村:あはははは。

宮島:私も「新しいね」ってよく言っていただくんですが、自分としては「新しいものを書こう」と思って書いたわけではなくて……。「そうなのかな?」と思った時に、やっぱりこういうキャラクターって今まで男の子が多かったのかな、と思いましたね。

権八:ああー!

宮島:女の子でこういうキャラクターっていうのは、あまりいなかったのかも。

権八:そうですね。たしかに、言葉数は少ないんだけどグッと来る感じ。漫画家の東村アキコさんが「甘酸っぱくもない、エモくもない、こんな女子中学生爆走物語を私は待ってました!」っていう推薦文を書かれていましたけど、たしかに全然ベタつかないじゃないですか?湿度が低いというか、二人のやり取りがドライなんだけどグッとくるというか。ちょっとハードボイルドな、この感じがカッコいいんですよね。「今だと、誰が演じるんだろう?」って気になったり(笑)。

澤本:ねえ〜。

権八:そういう感じが、すごくワクワクしましたよね。

「頭の中で、登場人物の台詞が聞こえるんです」

澤本:よく聞かれると思うんですけど、宮島さんはどういう経緯で作家になられたんですか?

宮島:小学生の時に作文を褒められたのがきっかけですね。「お話を書いてみたらどう?」って先生に言われたので、それから小説のようなものを書き始めました。大人になって「小説家になれるなんて一握りだから」と思って書くのを一旦諦めた時期があるんですね。それが20代半ばなんですけど。30代半ばになって、ちょっとまた書いてみようかな、という気になって応募を続けて、ようやくデビュー出来ました。

澤本:20代までは結構書いていらっしゃったけど、一旦お休みされた、ということなんですね。

宮島:そうです。10代の時はノートに書いたりしていたんですけど、当時はそんなに公募に出したりはしていなくて。本格的に応募をし始めたのは30代半ばなので、5年ぐらい前ですね。

澤本:R-18文学賞の「公募3冠王」って書いてあるじゃないですか。それって、凄いことですよね?

宮島:まぁ、そうですね。今の所、唯一の3冠受賞者ということにはなっています。

中村:今回は、応募時に「結構いけたかも」みたいな自信があったりしましたか?

宮島:う~ん……。実際には、そこまで手応えがあったとかではないですね。この文学賞は、一回につき3作品まで出せるんですが、あとの2つは大人の女性が主人公の話で。それを2つ書いたので、もう一作は10代の女の子の話にしようと思って書きました。

澤本:これ、読んでいてビックリしたのは、台詞がものすごく今の10代のままのものじゃないですか。

宮島:あ、そうですか? それは嬉しいですね。

澤本:こういう台詞って、意外と世代ごとに違うから、こういうナマ台詞を書けていることにまずビックリしたんですよね。

宮島:それはですね……。子どもが9歳だけど、そこはあんまり関係ないのかな。なんか、頭に浮かんだというか、聞こえるんですよ(笑)。台詞が聞こえて、それを文章に書いているという感じです。

澤本:へえ~!作家さんが小説を書く時って、全体のプロットを書いてから書くタイプと、頭から台詞をバーッと書いちゃったりするタイプがいるって聞いたんですけど。

宮島:そうです、そうです。私はプロットは考えずに書きながら考えている感じで。それで、見えたり聞こえたりしてくるんですよ。なんかちょっとヘンな話なんですけど……(笑)。「主人公が動き出す」っていうのは、こういうことなのかもしれないですけどね。映像として見えたり聞こえたりしたものを文章に表す、という形でやっています。

澤本:それで、つくられていないドラマっぽい雰囲気になるんですね。「実際に、そういうことが起こるんだろうな」というある種のリアリティをもって読めたから、すごく読みやすかったし、楽しかったなと思って。ふだん小説を書かれる時は、同じようにキャラクターをつくってその人物が動く、というやり方なんですか?

宮島:そうです。書きながら「次は何が起こる」という時系列順に書いていく感じで。変なところがあれば、後でまた戻ってきて書き直す、みたいな。そういうやり方でやっています。

澤本:筆が動くのがすごいですよね。筆というか、一日に何ページも書けちゃうんですか?

宮島:あ、それは逆です……。私は原稿用紙でいうと一日に2、3枚ずつぐらいしか書けないので、ひとつ書くのに1カ月ぐらいかかります。

澤本:そうなんですね。それでもそのうち、キャラクターが喋りかけてくるんですね?

宮島:そうなんですよ。でも、それがなかなか見えなくて。見えるまでに時間がかかるというか……(笑)。

澤本:じゃあ、「喋りかけてください」って待っている感じなんですかね(笑)。

宮島:そうですね。で、思いついたら「ハッ!書かなきゃ!」って書いておく、みたいな(笑)。

澤本:へえ~! それは面白い。

「類いまれな記憶力」がリアリティを生む

権八:さっき澤本さんが「リアリティがある」と言っていたのは、本当にそのとおりで。たとえば「お母さんって、たしかにこんな感じだよな」とか……(笑)。「部活の子が家に来たらイヤだろうな」とか。その辺の感覚ですよね。友だち同士のなんとも言えない気まずい時間とか、そういうのが「わっかるなぁ〜、コレ!」と(笑)。

でも、ふだん生活をしていると忘れているんですよね、そういう瞬間を。でもなんで宮島さんはそういう瞬間をビビッドに切り取れるんだろう。あの、「クラスの中における自分の立ち位置」という妙な感覚と、それを客観的に見ている自分と、それから、なんか向こうの方にいる奴を見ている眼差しとかさ。これは宮島さんの記憶力によるところなんですかね。

宮島:ああ~!自分で言うのもヘンなんですけど、記憶力がすごく良くて(笑)。その時のイヤだった感じとかを、今でも思い出せてしまうんですよ。だから、そこは良し悪しだな、と思いますね。今でも過去のイヤなことをありありと思い出せてしまうので。

権八:すごい、なるほど!

宮島:そういうのが小説に生きているのかもしれないですね……(笑)。

澤本:じゃあメモを取りまくるというよりは、頭の中にそれが入り込んでいる、という感じですか?

宮島:そうですね。で、ふとした瞬間に思い出す、みたいな。「あ~、あの時、ムカついたわぁ~!」みたいなことが今でも結構あるので(笑)。

権八:あはははは!

中村:宮島さんは、「このお話を通じて、私はこれを伝えたいんだ!」みたいなテーマ設定をハッキリとされるタイプですか?

宮島:いや、それは全然ないですね。書いてみたものを読んで「私、こういうこと考えてたんだな……」みたいな発見をすることがあります。

権八:うーん!

澤本:なるほど~!そこはすごく聞いてみたくて。僕もたまに脚本を書いたりするんですけど、「これを通して何が言いたいんだ!?」みたいなことをすごく聞かれるんですよ。

宮島:はい。

澤本:でも、書いている時は意外と何を伝えたいのかわからない状態が多かったりして。どっちかと言うとダメな人っぽいというんですかね……。

権八:はははは。

宮島:いや、でもそういうものだと思いますね。テーマとかも、周りの人が言っていることを聞いて、「ああ、そういう読み方もあるんだ!」と気付くことがよくあります。

澤本:うーん!

宮島:ただ、この作品に関して言えば「先のことはわからない」ということをひとつのテーマとして置いてます。「先のことなんてわからないだろう」っていう台詞は、成瀬が自殺志願者に向かって言うんですけどね。

成瀬が「200歳まで生きたい!」と言い出したら、「それはさすがに……」って私たちは思いますけど、実際にはわからないわけですよね。いつか本当に生きられるようになるかもしれないわけですから。だから私は、そういうことが未来には起こるかもしれないから、希望を忘れずに生きていこう、と思っていました。

同窓会に「行く派」?それとも「行かない派」?

権八:宮島さんが今おっしゃった「先のことなんてわからない」ということと、たぶん真逆のことなんですけど。僕は自分のふるさとに帰りたいとか、小学校の時の友だちに会いたいとかはあんまりなくて……(笑)。

宮島:ああ~、なるほど、なるほど。

権八:良い意味での「過去への執着」というか、自分にとっての「西武大津店」みたいな存在がないな、と。

宮島:それは本当に人それぞれ、ですよね。デパートが閉店した思い出を、自分の地元のデパートに重ねて言ってくれる人もいれば、「こういう経験はなかったけど、なんか懐かしい」みたいに言ってくれる人もいます。

権八:うんうん。宮島さんの場合、「過去への気持ち」が「未来の物語」への推進力になっている感じがあって。記憶力の話とも関係あるのかもしれないんだけど、そこがなんか素敵だな、と(笑)。僕はこんなふうに、自分の人生を大事に生きてこれたのだろうか……とちょっと思ってしまいました(笑)。

そういえば先週末、たまたま大学の「大同窓会」みたいなのがあって。これ、言い方はアレなんですけど、ちょっと無理して行こうと思えば行けたかもしれないけど、まあ、行かなくて……。

澤本:あはははは!

権八:で、Facebookとかに同級生がアップしてる写真がブワーッと出てくるんだけど、それもやっぱりどこか他人事みたいな感じがあって….…。この小説の中に、同窓会の話が出てくるじゃないですか?だから、自分のコンプレックスというか、こういう気持ちを今からどうしていけばいいだろう、と複雑な気持ちで読んでいましたけどね(笑)。

宮島さんは、ご自身が生きてきた小学校時代や、中学、高校時代、大学も含めて、どういうふうに捉えていらっしゃるというか……。

宮島:でも、今おっしゃったように、私も実は「同窓会には行かない派」です(笑)。

権八:ですよね?(笑)。

宮島:はい。なので「行かない派」だからこそ書けるのかな、っていう気もするんですよね。同窓会に行く人たちの気持ちを想像して、「こういう感じの人たちもいるんだろうな」っていう気持ちで書いたのが『階段は走らない』(『成瀬は天下を取りにいく』に収録)なので。そういう意味では、自分の逆を行っている人を書く、というのが小説の醍醐味かな、とはちょっと思ってます。

権八:なるほど~!

「映画化権」を獲得するのは、一体!?

澤本:今は「次回作以降でこんなのを書きたい!」っていうのが頭の中をウロウロしているんですか?

宮島:いや、実はなくて……(笑)。で、『成瀬は~』の続編を書いてほしい、とは言われているので、もちろんそれに取り掛かっているんですけど。でも、ホントに目の前の一作ずつしか出来ないので、コツコツやっている感じです。

澤本:じゃあ、並行して書くのではなくて、一作をバーッと書く、という感じなんですね?

宮島:そうですね。

権八:これは、ちょっと気が早い話なのかもしれないんですけど……。さっき澤本さんが言ったように、まるで映画を観ているような感じで読んでしまう、というか。ホントに生き生きとしているんですよね、登場人物の子たちが。映像がもの凄く浮かぶんですけど、これは映画化されたりはしないんでしょうか?(笑)。

宮島:あははは! 今の所はそのような話は聞いていないですけど、「映画化するとイイね」と言っている人は周りにいますね(笑)。

権八:いや~!これはもう、絶対映画にするべきというか「誰が取りに行くんだ、この映画化権は?」みたいな(笑)。

澤本:もう、新潮社がいってるんじゃないかな、っていうぐらい。

権八:いってますよね、きっとね。

宮島:ただ、懸念しているのは、もう「西武大津店」の建物がないんですよ……(笑)。

権八:まぁ、たしかに。でも、そのあたりはなんとかするんだろうな〜(笑)。

中村:そろそろお別れの時間が近づいておりますが、『成瀬は〜』の続編が読みたい!という話が出ているということなので。今、宮島さんがどんなことを考えていらっしゃるかということをチラッとだけ。

宮島:じゃあ、もう言いますね。続編は『小説新潮』5月号(4月21日発売)に載ります。

中村:なんと!

宮島:で、そこでは成瀬が大学生になっています。

澤本:え!?それは凄い。すぐに読まないといけなくなってきたな……。

権八:本当ですね!

宮島:そちらもぜひチェックしてください。

澤本:いや~!これは本当に従来の文学ファンとは違ったジャンルの方々にも広がっていく小説だと思っているから。いろんな人が読んでくれると嬉しいな、と思いますけどね。

宮島:そうですね。小学生でも読めると思うので。家族で読んでいただくといいのかな、と思います。

澤本:それにしても、成瀬が大学生になってるというのは、凄いな……。大学になると、またいろんなことがありそうだしね。

宮島:あははは!

中村:そうですね。これを聞いて気になったリスナーは、まずはデビュー作の『成瀬は天下を取りにいく』が新潮社より絶賛発売中ですので、こちらを手に取って読んでみてください。そして、4月21日発売の『小説新潮』5月号では、成瀬が大学生になっているらしい、と。宮島さん、他に今後のご予定などはありますか?

宮島:実は『小説新潮』4月号にも、私のエッセイが載っています。こちらは、特別ゲストと『成瀬は〜』の舞台になった滋賀県大津市を歩くエッセイになっていますので、興味があればぜひご覧ください。

澤本:へえ~!もう、凄い「大津愛」ですね。

宮島:今住んでいるところなので、書きやすいというのが一番ですけどね(笑)。琵琶湖もあったり、近江神宮もあったりと良い所ですので、皆さま、ぜひお越しください。

澤本:ぜひぜひ。

中村:というわけで、今夜のゲストは作家の宮島未奈さんでした。ありがとうございました~!

宮島:ありがとうございました~!

〈END〉