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フィジカルとデジタルをつなぐマーケティング 「Spatial Marketing」としてのOOH

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東急エージェンシー
取締役 常務執行役員
高坂俊之氏

ストラテジックプランナー、ソリューション部門(マーケティング・クリエイティブ・アクティベーション・デジタル)の本部長を経て、現在は同社において東急グループ関連ビジネスを担当する事業共創本部長を務める。上智大学非常勤講師。

Q:デジタル技術の進展、データ活用によりOOHは進化を遂げつつあります。その中で特に注目している領域について教えてください。

A:「フィジカル空間」と「デジタル空間」がつながることで、より自由度の高いマーケティング・コミュニケーションが実現する。

コロナ禍に見舞われたここ数年で生活者をとりまく各種データの取得と活用の基盤整備が進み、分断していたフィジカル空間とデジタル空間が地続きになろうとしています。この地殻変動を捉え「Spatial Marketing(スペーシャル・マーケティング)」という考え方を提言します。Spatial Marketingとは『空間での体験を態度変容のトリガーに生かすマーケティング』です。「テレビやデジタルにOOHをどの程度、足すか」というメディアミックス的発想を超え、「フィジカルとデジタルをつなぐ出来事と共感波及の回路をデザインする」という発想でブランドへの好意を形成します。

では、デジタルでの拡散を見据えフィジカル発の出来事を仕掛ける上で、起点としてどの街を選ぶべきか?

東急グループの拠点でもある渋谷はその筆頭として「駅前に降り立てば360° 迫力ある映像に取り囲まれ、思わずみんなと共有したい衝動に駆られる」との評価を得ています。実績値で見ると渋谷OOHの一次リーチ100に対してSNSでの二次リーチは概ね120。対象ブランドの検索数が出稿前比で150%リフトした例もあります。

「Spatial Marketing(スペーシャル・マーケティング)」概念図。

さらに注目株は新宿です。4月に「ホテル×エンタメ」施設「東急歌舞伎町タワー」が開業。ライブエンタメを楽しみ尽くせる館内のみならず、館外には超大型ビジョンとステージ、またシネシティ広場が広がります。「エンタメ好き」が集う熱量に満ちた空間はコンテンツとコラボしたユニークな仕掛けづくりにも最適です。

一方、デジタル起点でフィジカルへ影響を与える流れも、メタバースの普及もあり加速しています。東急歌舞伎町タワーでは開業時に「リアル歌舞伎町」と「対を成すデジタル歌舞伎町」がシンクロし合う「KABUKICHO BLUE PROJECT」を展開します。映画や音楽などエンタメへの「好き」という思いとメッセージでデジタル空間の歌舞伎町を青く染め、かつリアルの歌舞伎町も青く染まっていく仕組みです。企業がフィジカルとデジタルをリンクさせる展開を考える際のヒントになれば幸いです。

渋谷や新宿など点の話をしましたが、例えば出勤という行動は同時多発で起きます。「休み明け、気が重いけど今週もがんばるか」というモーメントを基軸に点在する街をつなげます。いわばフィジカル空間のアドネットワークです。生活者の行動はGPS、Wi-Fi、カメラ等で捕捉可能であり、このデータをもとにネットワークへのプログラマティック配信を本格化します。属性や時間帯別、対象エリアは東急沿線/都心部/首都圏/全国と戦略に応じ空間設定ができるよう各種マーケットプレイスとも連携していきます。さらにフィジカル・ネットワークとデジタル・ネットワークを地続きにし、自由度が高く効果的なマーコムの実現に貢献したいと考えています。