メディアから見たESG発信の蓄積が上手い企業

中長期的な企業価値の成長につながる「サステナビリティ発信」。しかし、見せかけの発信ではステークホルダーの不信感をあおることになってしまう。どのような姿勢が企業の信頼獲得につながるのか、メディアの声を聞いた。

※本稿は『広報会議』2023年6月号の「サステナビリティこれからの伝え方」特集より抜粋しています。

会社四季報オンライン編集長
猪澤顕明

─近年、反響が大きかったサステナビリティ関連の記事はありますか。

情報開示が義務化された「人的資本」関連は、『会社四季報オンライン』の場合、まだ記事が読まれにくいというのが現実。これは、読者である投資家にとって、企業の業績や株価にどう結びつくのかが分かりにくいためです。逆に言えば、成長につながるストーリーが提示できれば、投資家に関心を持ってもらいやすいとも言えます。

そんな中でも2020年に公開した「女性出世企業」ランキングは、多くの人に読まれた記事です。編集部では、読者が企業に抱くイメージから想像する「女性が活躍している会社」とのギャップがあったことに加えて、一目で他社との比較検討がしやすい形だったことが好評だったのではと考えています。これを踏まえると、女性管理職の割合など比較しやすい数値項目を一通り抑えておくことも大切だと言えそうです。

また、専門家による寄稿連載では「ESGマネーが集中しそうな企業内容開示の優良銘柄」「給料の高い会社は『投資でも“優等生”なのか』」といった内容も掲載しています。証券業界で注目度が上がっているのは確かですね。

サステナビリティ関連でよく読まれた記事

女性も輝くと会社も伸びる?「女性出世企業」ランキング
「役員」と「管理職」の比率で探る(2020年12月19日公開)

世界に比べてまだまだ男女格差が大きい日本。その中でも積極的に女性役員、女性管理職を登用している企業をランキング形式で記事化した。

独自ランキングで判明!
これが「SDGsで評価される銘柄」だ(2022年7月22日公開)

SDGsの取り組みを行っている企業をランキング形式で発表。「東洋経済CSR調査」で収集している非財務情報から独自の指標でSDGs達成度を可視化した。

─人的資本関連の情報発信が上手だと感じる企業の共通点はありますか?

労災件数といったネガティブなデータも開示している点です。ESGウォッシュといった言葉もよく見かけますが、実態がないのにESGアピールをする企業も出てきています。そのような状況下で、自社にとって良い情報ばかりを開示していると逆にわざとらしく思われますし、疑いの目を向けられかねません。会社の現状をしっかりと開示して、今後どう改善していくのか、不都合な情報も開示したうえで今後のロードマップも示せると、評価される可能性が高いと思いますね。

特に海外の機関投資家はESG関連情報への注目度が高いので、海外専任のESG・IR担当を設けて、発信を強化している先進企業も出てきています。また海外では、企業から集めた独自調査アンケートの回答から、企業価値を判断しているESGファンドも少なくありません。

日本でもESGファンドが増えてきていますが、欧米ほど徹底した評価を行っていないところが多いのが現状ですし、投資家からのファンド自体への信頼度もそこまで高くない。海外ファンドからのアンケートへの積極的な回答もそうですし、IRツールやサステナビリティページの多言語化に対応していくことも大切になってくるのかなと思います。

─広報担当者に向けて、アドバイスを。

そもそもサステナビリティ活動は中長期的な企業の価値に反映されるもの。開示努力をしていてもすぐに結果につながったり、株価が急に上昇したり、メディアからの注目を浴びたりすることは少ないかもしれません。しかし、サステナビリティ発信の話題が脚光を浴びたときに、その場しのぎで準備した企業と、コツコツと発信を積み重ねてきた企業の差は歴然としたものになるはずです。サステナビリティ発信自体を「未来への投資」と考え、ぜひ今から注力していってほしいです。

広報会議2023年6月号

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【特集】
企業のサステナビリティ
これからの伝え方

GUIDE
一貫性ある開示が企業価値高める
保田隆明(慶應義塾大学総合政策学部教授)
 
OPINION1
長期視点で評価される企業のESG情報とは
伊井哲朗(コモンズ投信 代表取締役社長 兼 最高運用責任者)
 
COLUMN
ポイントをしぼったサステナビリティ発信
関 美和(MPower parters ゼネラル・パートナー)
 
共感の輪を広げる「人的資本」の戦略的な伝え方
双日/KDDI/SOMPOホールディングス
 
OPINION2
人的資本の情報開示、広報の役割とは
経済産業省
 
OPINION3
メディアから見た
「ESG」発信の蓄積が上手い企業とは
会社四季報オンライン
 
【第2部】
ESG発信ケーススタディ
 
CASE1
世界初のCO2排出量実質ゼロフライトでメディア露出
日本航空(JAL)
 
CASE2
社会での自社の存在意義打ち出しパブリシティ獲得
アセンド
 
CASE3
未来を創造するための統合報告書
アバントグループ
 
CASE4
サイトでビジョンから商品を一気に紹介
オムロン
 
CASE5
ステークホルダーを巻き込み「本気感」伝える
不二製油グループ
 
CASE6
方針の明文化で従業員の当事者意識を醸成
ポーラ
 
CASE7
明確な目的掲げたインプットと議論の場づくり
TBM
 
CASE8
エアコン業界全体の脱炭素と発展に向けて
ダイキン工業
 
【第3部】
納得感を高めるサステナビリティ発信 実践編
 
OPINION1
ストーリー性のある開示・改善のサイクル
野村総合研究所
 
OPINION2
学生から見た「統合報告書」
一橋大学
 
COLUMN1
評価される「統合報告書」のポイントとは
イチロクザン二
 
COLUMN2
従業員が誇りを持てる取り組みにするには
揚羽

ほか


 

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