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AIの台頭、メディア状況の変化でコミュニケーション業務のプロに求められるスキルは変わる!?(緒方麻弓子氏)

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広報、マーケティングなどコミュニケーションビジネスの世界には多様な「専門の仕事」があります。人事異動も多い日本企業の場合、専門職としてのキャリアを積もうとした場合、自分なりのキャリアプランも必要とされます。現在、企業のなかで広報職として活躍する人たちは、どのように自分のキャリアプランを考えてきたのでしょうか。

横のつながりも多い広報の世界。本コラムではリレー形式で、「広報の仕事とキャリア」をテーマにバトンをつないでいただきます。岡部一志さんからの紹介で今回、登場するのは緒方麻弓子さんです。

写真 人物 プロフィール 緒方麻弓子さん

SAPジャパン
バイスプレジデント グローバルコミュニケーションズ 日本リード
緒方麻弓子氏

これまで7社の多様な業界で多様な業務を経験し、直近約12年はコミュニケーション業務に注力。コミュニケーション業務は社内においては社員のモチベーションに直結する企業文化の醸成や、社外においては企業イメージの向上やビジネス機会醸成のために大変重要で意義のある業務ととらえ、全力で邁進中。


Q1:現在のお仕事の内容とは?

外資ソフトウェア企業の日本法人にてコミュニケーション業務に携わっています。日本法人社長による社内外コミュニケーションのサポート、メディアや業界アナリスト向けのコミュニケーション、企業が管理するソーシャルメディアの運用を中心に業務を行っています。

コミュニケーション部門は社内においても社外においてもスポークスパーソンとなる方々をサポートする黒子役であり、自らが表舞台に立つことはない業務というように個人的にはとらえています。しかしながら、社内においては社員のモチベーションに直結する企業文化の醸成や、社外においては企業イメージの向上やビジネス機会醸成のために大変重要で意義のある業務であると思っています。

Q2:これまでの職歴は?

金融業界、エンターテインメント業界、製造業界、IT業界の日本企業や外資企業で調査アナリスト、政府機関渉外、CSR、マーケティング、営業、コミュニケーションなどの業務を経験してきました。多様な業界の多様な企業で多様な業務を経験できたことはとても良かったと思っています。

同じコミュニケーション業務でも、業界や企業によって、社内コミュニケーション、メディア向けコミュニケーション、危機管理対応など重点分野が異なるのも非常に興味深く勉強になりました。

また企業によって、コミュニケーション部門の組織、レポーティングラインも違い、これも興味深いと思っています。たとえば、大半の外資企業はマトリクス的な組織構造となっているので、コミュニケーション部門の直属上司が日本法人社長(ソリッドなレポーティングライン)である場合は、本社やアジア地域コミュニケーション部門長がサブの上司(ドッテッドレポーティングライン)となり、またその逆の場合もありで、常に2人の上司がいる状況になります。

社長の求める重点エリアと本社やアジア地域コミュニケーション部門長の重点エリアが異なるときはその調整も必要になってきます。また物理的に違う場所にいる上司に対して、どのように効果的、効率的に自分およびチーム全体の業務状況を連携し、達成した結果をアピールし、必要なリソースをタイムリーに獲得するかも非常に重要なスキルになります。

また日本市場のみならず、アジア太平洋地域の社内外コミュニケーションを統括、従事した経験も約5年あります。国や地域によって、メディアの状況、記者とのつきあい方、社内コミュニケーションの方法が異なり、学ぶことの多い非常に良い経験でした。多様な国のメンバーと一緒に業務をするという経験も非常に良かったです。

Q3:転職や社内異動などに際して、強く意識したことは何ですか?

社会人になった当初からあまり長期的なゴールは設定せずに、目の前の業務にその時々で最大限の注力をしてきた感じです。意識して転職活動をしたことはあまりなく、流れに身を任せているうちに、折々に転職の機会が訪れ、新たな職場や業務に挑戦する機会に恵まれたので周囲の方々には本当に感謝しています。

様々な業務を経験するうちに、コミュニケーション業務が自分に最も適していると実感し、直近12年はコミュニケーションに特化した職務に従事しています。コミュニケーション以外の業務を経験したことが、コミュニケーション業務の視野を広げることにも役立ってきたと実感しています。

そして、外資企業のコミュニケーション業務は、業務内容や業務プロセス、求められる業務スキルが、業界を問わずユニバーサルで、転用が可能であることをいくつかの転職を通じて実感しています。

また、外資企業のコミュニケーション業務では、社内のステークホルダーとの交渉の際に高い英語力が不可欠です。当方も20代後半から30代半ばにかけて業務外で相当英語の学習に時間とお金をかけましたが、覚えた英語を日々の業務ですぐに使えるので効率的に習得できたし、投資の価値はあったと思っています。

Q4:国内において広報としてのキャリア形成で悩みとなることは何だと思いますか?

コミュニケーション業務の基本は、伝えたいことをわかりやすくターゲット層に伝え、ターゲット層がそのメッセージを理解、共感し、発信者の企図した行動を起こしてくれるよう目指すことです。社長が社内外に発信するメッセージ、多忙な記者が記事にとりあげてくれるようなプレスリリースなどを、何度も何度も書き直して、失敗を繰り返しながら、経験を積み、自分なりの効果的なメッセージの作り方を習得していくことが非常に重要です。

業界や企業により、コミュニケーション業務の内容や注力分野も異なるので、多様な業界や企業を経験することが役立つのではと思います。さらにコミュニケーション以外の業務も経験することもお勧めします。また日本企業と外資企業の両方の経験を積むことも重要かなと思います。

また、コミュニケーションという職務は、日本企業や外資企業においても、マーケティング業務と混同されやすく、実際の業務内容がなかなか認知、理解されていないという課題を感じます。一般的に、コミュニケーション業務はどのようなもので、マーケティング業務と比較してどこが違うのか、さらにマーケティング部門とどのように連携しているのか、などについて自分なりに資料をまとめています。日々の業務の中で、マーケティング業務との混同が発生した際には、その資料を見せながら説明するように努めています。

さらに、AIの台頭、メディア状況の変化などにより、今後はコミュニケーション業務も大きく変化し、今とは違うスキルや経験が求められるようになるように感じています。

Q5:広報職の経験を活かして、今後チャレンジしたいことを教えてください。

今後も引き続き目の前の業務に注力しつつ、機会がありましたら多様な業界や企業での経験を積みたいと思っています。日本市場にこだわらず、日本以外の市場でのコミュニケーション業務にもどんどんチャレンジしたいです。

コミュニケーション部門は黒子役ではありますが、社員のモチベーションを左右する社内の企業文化醸成、企業のビジネス成長、企業が直面する危機の際の対応などに貢献できる力は大きいと思います。コミュニケーション業務の重要性について日々の業務の中で様々なステークホルダーに粘り強く啓発していきたいと思っています。

【次回のコラムの担当は?】

鴻池運輸 経営企画本部 広報室 担当課長の竺原 薫さんです。竺原さんは新卒で入社され、長年広報業務に尽力されてきました。非常にまじめで誠実なお人柄のかげには、日々の大変な努力があるのかといつも感じています。ぜひ竺原さんの広報への思いをうかがいたいです。

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