キリンHD × ニチレイフーズ これからの「オウンドメディア進化論」(後編)

宣伝会議は、2023年11月29日(水)、30日(木)に九段会館テラスにて「宣伝会議マーケティングサミット2023」を開催しました。2日間で合計34セッションの講演、展示ブースでのプレゼンテーション、マーケター交流会などが開催されました。本稿では、事業活動に寄与するオウンドメディアのあり方について議論したセッションについてレポートします。

前編はこちら

(写真右)キリンホールディングス コーポレートコミュニケーション部 平山高敏 氏
(写真左) ニチレイフーズ マーケティング部 広報グループ 原山高輝 氏

 
─オウンドメディアのコンテンツづくりの方針について教えてください。

 

平山:企業主語、読者の関心、メディアの世界観の3つを意識しています(図2参照)。企業が伝えたいことを伝えるだけでは読み手の共感が得られませんから、流行や世の中の出来事と掛け合わせて「読者の関心」をとらえていきます。ただこれだけだと、ペイドメディアのタイアップ広告でコミュニケーションすればいい、という話になります。

一方で、オウンドメディアで発信する必要があるのは、メディアの世界観に即したコンテンツです。このオウンドメディアは何を伝え、企業の中でどういう機能・役割を果たすのか、どのようなトーン&マナーで運営してるのか。メディアの “所信表明” にあたるような世界観と、企業が伝えたいこと、読者の関心が重なるスイートスポットを見つけるようにしています。

原山:この図は分かりやすいですね。スイートスポットを広げていく活動というのが、オウンドメディアを継続するコツですし、強いメディアにしていくことにつながるのだと思います。

平山:オウンドメディアの理想の状態は何だろうか、というのも常に考えています。私の場合は、社内と社外をつなぐ真ん中の位置にオウンドメディアがあるイメージです(図3)。

 

オウンドメディアは企業の資産を表に出すということですから、内側から「オウンドメディアに情報を出したい」という声が届かない限り、そのメディアは存在価値がないとすら思っています。社外向けに発信しているのだけれども、それを読んだ社員にも企業ビジョンが浸透することが理想です。

一方でコンテンツは読者の関心にフィットする切り口をつくることが重要で、そうした切り口があるからこそ企業が考えていることへの共感が生まれます。このバランスを保ちたいところです。社内に軸足を置きながら世の中に目を向け続ける。これが理想のオウンドメディアの状態なのではないでしょうか。

原山:オウンドメディアは、社内外をつなぐハブの役割がありますし、社内からの声、社外からの関心で育っていくところがありますから、両方を見ないといけませんね。社内だけ見ているなら、社内報で十分になってしまいます。

平山:そのとおりですね。一方で、社外にだけ目を向けるなら、バズや広告でカバーできますから、オウンドメディアならではの立ち位置を意識していきたいです。

ちなみに私たちが新しいオウンドメディアを立ち上げるときには、必ず、次のことを1枚の「早見表」としてまとめるようにしています。内容は8つあって、①機能(社内における役割)②ビジョン(読者に何を持ちかえってほしいか)③読者(ターゲット)④戦略の核⑤活用シーン(社内からどのようなオーダーがあるのか)⑥具体のコンテンツ企画内容⑦評価(KPI)⑧NGラインです。

この中でも①⑤⑧は、オウンドメディアの立ち位置を明確にするために欠かせません。この早見表があると「オウンドメディアでこうした発信をしたい」と社内からオーダーが来たときも、「その情報だと広告と同じコミュニケーションになってしまいませんか」と切り返すこともできるんです。

もちろん社内の要望に応えていくことは大事なのですが、オウンドメディアとしての価値が十分に発揮できるコンテンツも必要ということです。例えるなら、合唱コンクールでいう「課題曲」が前者、「自由曲」が後者。このバランスがとれるとうまくいくというのが私の仮説です。

原山:課題曲だけでも自由曲だけでも偏ってしまいますね。

平山:オウンドメディアが社内外から共感してもらえるようになると、コンテンツのマルチユースも進みます。営業ツールや採用においても活用されるようになってきました。

原山:「ほほえみごはん」では月12~13本の記事を出していますが、そのうち5~10本は集客用のSEO記事と位置づけています。「余った食材の冷凍のしかた」のように、読者が知りたくなる情報です。ただこれだけでは、事業貢献にならないので、「冷凍食品っていいものですよね」というブランディング記事や、社員が出てくるインナーブランディングにつながる記事を入れていて「ニチレイの良さ」を打ち出しています。

生活者一人ひとりがスマホで情報を見ているプライベートの時間に企業の情報を届けようとするわけですから、土足で上がり込んでもうまくいきません。「見せたい」と思うことを「見たい」と思われるように変換してお届けすることが大事なのだと思います。例えば漫画を活用するといったことも「見たい化」するテクニックのひとつです。

平山:コンテンツをつくっていると、どうしても「見せたい内容」に寄ってしまいがちなんですよね。

原山:平山さんがつくられている「早見表」のようにNGラインやメディアの世界観をしっかりと持っていると、「私たちのメディアは、見せたい内容を押し付けるメディアだっただろうか」と立ち戻って軌道修正ができるはずです。

平山:社内に眠っている面白いことを発掘して素直に面白がる情熱と、社会の視座で見たときに、本当に面白いのか、「見たい化」できているのかを判断していく冷静さが必要ですね。(敬称略)

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