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東京都でもっとも面積の小さな村「利島村」で、広報の力で「結の心」を育む貢献を目指す 「自治体広報の仕事とキャリア」リレー連載(中川晃介)

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広報、マーケティングなどコミュニケーションビジネスの世界には多様な「専門の仕事」があります。専門職としてのキャリアを積もうとした場合、自分なりのキャリアプランも必要とされます。現在、地方自治体のなかで広報職として活躍する人たちは、どのように自分のスキル形成について考えているでしょうか。本コラムではリレー形式で、「自治体広報の仕事とキャリア」をテーマにバトンをつないでいただきます。東京都東大和市の加藤泰正さんからバトンを受けて、東京都利島村の中川晃介さんに登場いただきます。


Q1 現在の仕事内容について教えてください。

東京から南へ約140㎞に位置する小離島で、東京都で最も面積の小さな村である「利島村」の総務課職員として、企画業務を主としつつ、広報、防災、情報、ふるさと納税など多様な業務を担当しています。

直近の具体的な業務を3点あげると、1点目として、湧き水や河川がない利島では、高額な造水コストが自治体財政を圧迫するとともに、慢性的な渇水リスクを抱えています。そこで、生活排水の98%以上を再生利用可能にする「小規模分散型水循環システム」の島内での活用可能性を探るべく、同システムや太陽光発電システム等を搭載したオフグリッド型居住モジュールを設置して実証事業を行っています。

2点目として、利島村の持続的な発展に向け、島内の深刻な住宅不足に対応した住宅整備事業や農漁業の活性化事業、島内外の人材交流も含めた島の魅力向上事業を推進しています。

最後に、持続可能な利島村を目指す中で子育て環境の改善に向け、「子供の未来を育む拠点」及び「空き家を活用した島内外の人材交流拠点」整備のため、島内の子どもや子育て世帯の意見を聴取しながら施設整備事業を実施しています。

Q2 広報部門が管轄する仕事の領域について教えてください。

広報部門の担当者は1名で、他業務を兼務しており、広報を作成しながら各種事業を実施しています。

利島村は人口に占める移住者の割合が高く、村内にある慣習や昔ながらの言い回しの認知度も様々です。そうした中、多様な背景をもつ方々へ等しく、正しい情報を届ける手段として、広報誌面と誌面への折り込みチラシ、各戸へ配布したタブレット端末を活用しています。発信する情報に求められる即時性や情報提供対象なども加味し、適切なツールを選択した上で、各種事業の案内や意見聴取を行っています。

Q3 大事にしている「自治体広報における実践の哲学」について教えてください。

自治体広報における必要条件に「住民に正しい情報を伝える」ことがありますが、利島村の広報では住民が「伝わった情報をもとに実行に移す」ことを目指しています。具体的には健康分野における取組の実行や各種イベントへの参加促進があげられます。

利島村は1985年以降、人口は約300人を維持し、人口に占める移住者の割合は年々増加傾向にあり、若い世代の移住者が地域活動の担い手となり地域行事を盛り上げています。しかし、地元出身者コミュニティと移住者コミュニティとの交流が希薄化し、地域行事の参加者に偏りが出てきています。そうした中、広報ツールの選択はもちろん、誌面上の表現を工夫した上で、情報を発信するだけではなく、確実に届け、理解していただき、行事へ参加するといった実行に移すところまでが、広報活動に求められています。

利島村では、昔から村民同士で助け合い暮らし、共助の心が根付いており、「結の心」と呼ばれてきました。広報活動を通じて住民の皆さんの交流の懸け橋となり、移住者が多くなった島においても、お互いに支えあう「結の心」を育む島づくりの一助が利島村広報の役割のひとつと考えます。

Q4 自治体ならではの広報の苦労する点、逆に自治体広報ならではのやりがいや可能性について教えてください。

人口規模も小さく、日々大きなニュースがあるわけではないため、誌面情報が単調なものになりがちなところが苦労する点です。しかし、広報で扱う内容は生活に必要な情報や防災情報など命に係わる情報も取り扱っており、住民の生活を守る一つのツールとして、やりがいは大いにあります。また、小さな自治体であることから、広報活動を通じた反応がダイレクトに見えることも成功や失敗体験として、反省を生かし自己研鑽に繋げることができます。

数年後には各戸配布したタブレット端末の更改時期を迎えるため、双方向のやりとりを可能にするなど、様々な分野での活用可能性を検討しています。今後もIoTやAI技術の発展などデジタルの流れを上手く捉え、利島村内における情報提供の在り方の最適化を目指していきます。

一方で、小規模自治体だからこそできる、対面機会を増やすなどフットワークの軽さが300人の自治体における広報活動の強みであると感じており、デジタルとアナログを併用した利島村ならではの広報活動を継続していきます。

加えて、利島村がこれまで注力してこなかった外部への情報発信を強化していきたいと考えており、例えば移住関連情報の発信では、住民ライターの育成など住民視点のリアルな情報提供も行っていきたいと考えています。

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東京都
利島村
総務課
中川晃介氏

学生時代に商店街活性化事業などを経験し、民間企業に入社。地域活性化のやりがいを仕事でも得たいと考え、2012年4月に滝川市役所に入庁し、企画課に配属。10年間の在職中に一般財団法人地域活性化センター(2017年4月~2020年3月)、総務省(2020年4月~2021年3月)への派遣を経験。2022年4月に産業振興課へ帰任した後、第1子誕生を機に新たな環境での生活を求め、2023年4月から利島村役場に入庁して現在に至る。

 
【次回のコラムの担当は?】

東京都利島村の中川晃介さんが紹介するのは、京都福知山市の市長公室秘書広報課シティプロモーション係 係長の宇都宮萌さんです。