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異色の深夜番組 テレビ朝日『〜なぜここにいるの?〜ごみ物語』はなぜ生まれた?

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2023年4月にレギュラー放映をスタートしたバラエティ番組『〜なぜここにいるの?〜ごみ物語』。街に落ちている「ごみ」を話のネタに、マシンガンズの滝沢秀一ら芸人がトークを繰り広げる異色の深夜番組だ。実はこの番組が生まれるきっかけの一つに、書籍『未来の授業』シリーズ(宣伝会議発行)があったという。番組を企画したテレビ朝日の佐藤麻衣氏に話を聞いた。

「ごみ」をテーマに、芸人と楽しく思いを巡らすテレビ番組

テレビ朝日で放映中の『〜なぜここにいるの?〜ごみ物語』は、ごみ清掃員としても活動する芸人の滝沢秀一(マシンガンズ)が、森田哲矢(さらば青春の光)、岡野陽一と3人でごみ拾いをする番組だ。街に落ちているごみを見つけて、「何でここに落ちているんだろう?」「どんな人が使っていたものなんだろう?」と3人で妄想トークを繰り広げていく。これまで訪れた街は、東京の上野・巣鴨・大久保など。海外からごみの写真や映像を送ってもらって妄想トークをすることもある。

『〜なぜここにいるの?〜ごみ物語』。テレビ朝日で毎週木曜深夜2:13〜レギュラー放送中(一部地域を除く)。

この番組、実はテレビ朝日社内の企画コンテスト「そだてれび」で採用されて実現したものだ。企画を出した佐藤麻衣氏は、同社のライツマネジメントセンター所属。普段はライツ関連の業務に当たっている。なぜ、「ごみ」をテーマにした番組の企画を出したのか。そこから企画が採用され、実現に至るまでのストーリーを佐藤氏に聞いた。

 

「テレビ局もごみ問題に何かできないか?」という思いが発端に

——なぜ、「ごみ」をテレビ番組のテーマにしようと考えたのですか?

私がごみに興味を持ったきっかけは、小学生の頃にさかのぼります。クラスメイトに父親がごみ収集員の子がいて、「みんながなりたがる職業じゃないけど、とても大事な仕事なんだ」と言っていたんです。以来、街で清掃員の方を見かけるたびに、彼の言葉を思い出していました。

数年前から「SDGs」という言葉をよく聞くようになり、勉強したいと思っていたタイミングで『未来の授業 SDGsライフキャリアBOOK』を手に取りました。様々な企業のSDGsの取り組み事例が紹介されていて、「テレビ局でも何かできないか?」と考えるきっかけになりました。

未来の授業 SDGsライフキャリアBOOK』(宣伝会議、2020年刊)。SDGsに対する33社の取り組みを掲載。

 

紹介されている事例の中でも、特にごみを減らすためにメーカーが行っている努力が素晴らしいと感じました。私は大学院(知財専攻)の修士論文でアイデアと知財について書いたこともあり、各社が独自の取り組みを考え実行していることに刺激を受けたんです。そんな時に、全社員対象の番組企画コンテスト「そだてれび」に応募してみない?と声がかかり、この番組の元になる企画を出しました。

 

個人活動の「ごみ拾い」が番組企画のヒントになった

——番組の企画は、どのように考えていったのですか?

実は、私はお笑いも大好きなんです。ごみ清掃芸人の滝沢さんの元々ファンで、プライベートでオンラインコミュニティ(滝沢ごみクラブ)にも入っていまして。滝沢さんは、ごみ問題をわかりやすく、楽しく発信している人です。こういう人が少しずつ世の中を良い方に変えていってくれるんじゃないかと思っていたので、番組を通じて滝沢さんの存在を世の中にもっと知ってもらえたら、という気持ちで出しました。

出した企画もずばり「滝沢清掃員とゴミ拾い」。滝沢さんと一緒にごみ拾いをしながら、拾ったものの分別を一緒に考えるようなドキュメンタリー番組として出しました。私自身もふだんごみ拾いをしていて、変わったもの…例えばエクステの青い毛などを拾ったりすることがあります。そんな経験から、「これは一体何?なんでここにあるの?」と面白がれる部分はきっとあるだろうと思っていました。

社内コンテストに応募したA4一枚の企画書。ごみ拾いドキュメンタリーの企画として提出した。

 

——「ごみ」を扱うテレビ番組と言えば、長らく「ごみ屋敷」のような切り口が多かったと思います。「ごみ」に対する全く新しいアプローチが出てきたのが、いち視聴者として新鮮でした。

「ごみ屋敷」の企画は、ごみと自分を切り離して考えていると思うんです。この番組では、ごみを自分ごととして捉えてもらいたいと思っていました。ごみをバラエティで扱う、というのも実はあまりなかったと思います。

——「そだてれび」では、どんなポイントが評価されたのですか?

一般の方の投票と社内審査で決まりました。具体的なことは聞かされていませんが、上の人間からは「いろんな街で永遠にできる企画」であることや、レギュラー化の企画書に書いた「ロケした街がちょっと綺麗になる番組」という点が良いね、と言われました。

 

おじさん3人が「あーでもない、こーでもない」

——「ごみ×街歩き」という要素も面白さの一つですよね。最初の企画書を元に、具体的な企画にどう落とし込んでいったのでしょうか。

企画が採用されると、社内で番組制作のプロが担当についてくれるんです。彼らと打ち合わせをする中で、「落ちているごみにはバックグラウンドがあるよね」とプロデューサーがつぶやいて、それを聞いた当時のチーフディレクターが「ごみのストーリーを想像する」というアイデアを出してくれました。

キャスティングは、滝沢さんの話を聞く役を誰にお願いするかという話の中で、誰でもいいから好きなタレントさんを挙げてみて、イケメン俳優でもいいよと言われて。「さらば青春の光 森田さん」と即答したら、「え、おじさん…?」と(笑)。

おじさんたちがしゃがんで、あーでもないこーでもないと言っていたら面白い、もう一人出てもらって3人で囲めるとより面白いということで、「クズ芸人(=借金をするなどだらしない芸人を指す言葉)」と呼ばれている中でも一番、ギャンブルに負けたら下を向いてトボトボ歩いていそうな岡野陽一さんにも出演依頼をすることになりました。森田さんには「いい企画」と言っていただき、岡野さんには「初めて人の役に立った」と言ってもらいました(笑)。

ロケする街は、妄想のヒントになるようなイメージ(このエリアには、どんな人が住んでいる、どんな人が集まっているetc.)がある街を、できるだけ選ぶようにしています。

ごみが少なく綺麗だった銀座ロケの終わりに、出演者の3人と。左から、さらば青春の光 森田さん、テレビ朝日 佐藤さん、マシンガンズ 滝沢さん、岡野陽一さん。

 

「気づいたらごみに関心を持っていた」くらいがちょうどいい

——2023年4月からレギュラー放映が開始しました。視聴者からの反響を教えてください。

「笑って楽しませながら自然にごみ問題を考えさせるいい番組」と言っていただけることが多いです。あとは「おじさんたちが少年みたい」とか(笑)。押し付けがましくなく、面白く見ていたら自然とごみに関心を持っていた、くらいが理想だと思います。

——最後に、番組の今後について一言いただけますか。

街って、日によって落ちているものが違うんですよ。例えば、同じ渋谷でもクリスマスイブと当日はきっと見つかるごみも違うはず。そういう比較も今後できるかもしれません。「ごみを捨てたらダメだよ」と言うのは簡単です。でも、この番組では「こんなごみを捨てたら(落としたら)面白がられちゃうよ〜」というスタンスは今後も崩さずに番組を届けていけたらと思っています。

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