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災害時の広報体制、BCPとセットで再点検を

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災害が発生した時、被害状況についての問い合わせに対応できるような情報収集体制ができているだろうか。被災地に人や物資を送る際、行政と事前に連携しレピュテーションリスクを回避できているだろうか。能登半島地震で見えてきた、広報として対処しておくべきポイントを『広報会議』で連載を執筆するジャーナリスト・松林薫氏が解説する。
※本稿は『広報会議』2024年3月号のダイジェスト版を掲載しています。

2024年元日に発生した能登半島地震では、本稿の執筆時点で200人を超える死者・不明者が確認されており捜索が続いている。まずは被災者支援や地域の復旧・復興を急ぐべきだが、「次」の大地震も我々の対策や準備が整うまで待ってはくれない。直接の被害がなかった企業も、今回の地震で見えてきた新しい課題への対処を急ぐ必要がある。

能登半島地震の特徴は、地理的な悪条件が重なり被災地に向かうルートが寸断された点にある。自衛隊などが限られた道路を有効に使えるよう、自治体などが交通規制を実施。市民の間でもSNSなどを通じて、被災地入りを思いとどまるよう呼びかける動きが目立った。正月だったうえ、現地入りしたボランティアやジャーナリストが少なかったこともあり情報発信が従来の震災と比べ遅れた面がある。

被災者側からのSNSを通じた発信も限定的だった。スマホやSNSを使い慣れていない高齢者が多い地域だったことに加え、初期段階で詐欺とみられる投稿やデマが流れて炎上したことで発信をためらった人が多かったのかもしれない。

今回の被害規模は東日本大震災や阪神・淡路大震災などと比べれば規模は小さく、金沢市など近隣の都市機能も失われなかった。道路網の寸断さえなければ、もっと早い段階で各地の被害状況が伝えられ、手厚い救助や支援に繋がったはずだ。今後、同じように現地情報が手に入りにくい状況下で自社の施設や従業員が被災した時、現行の危機管理体制が機能するのか再点検する必要があるだろう。

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広報上の検証ポイントは2つある。一つは、初期段階で施設や従業員の被害状況を把握する体制が整っているかどうかだ。報道機関の取材は災害発生後しばらく、被害状況の把握が中心となる。例えばヘリなどの映像から崩壊したり炎上したりしている工場やビルが確認できれば、企業に状況を問い合わせることがある。地元経済を左右する規模の企業や工場であれば、外観に被害がなくても影響を取材するだろう。

問い合わせがあった際に十分な情報が提供できれば、報道を通じてデマや憶測を防ぐことができる。自社サイトで発表できる情報もあるが、報道機関という第三者を通じて伝わることで信頼性は高まる。震災のニュースは世界に報じられるので、特に上場企業にとっては投資家向け情報開示(IR)の面からも重要だ。

問題は、現場の情報をどう収集するかだ。今回の地震を受けて、道路網や通信網が寸断されて想定していた確認・連絡ルートが使えないケースに備え「プランB」を考える必要がある。

すでに大半の企業は災害時の情報収集について手順をマニュアル化しているはずだ。例えば個々の従業員についてはスマートフォンによる安否確認システムを活用。施設についても、営業時間中に被災した場合には被害のチェック項目や連絡の手順を定めているだろう。しかし、従業員が施設にいない時間帯に地震が発生し、道路網の寸断や交通規制によりアクセスできなくなれば目視による被害の確認は難しくなる。

そうした場合は近隣に住んでいたり、たまたま近くを通ったりした従業員が担当役員などの責任者に報告してくれるのが理想だ。スマホで写真などの記録をとってもらうことで、後々役立つケースもある。

しかし、たまたま施設などの状況を見た従業員が、誰にどんな手段で何を報告すればいいか、共有できている組織はどれだけあるだろう。直属の上司や同僚には自分が見た情報を伝えたとして、それが広報担当までスムーズに伝わる仕組みを持つ企業は少ないのではないだろうか。

続きは広報会議デジタルマガジン(有料)にて

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松林 薫
ジャーナリスト

まつばやし・かおる 京都大学大学院経済学研究科修了。1999年、日本経済新聞社に入社。2014年に退社し独立。著書に『迷わず書ける記者式文章術』(慶應義塾大学出版会)『メディアを動かす広報術』(宣伝会議)がある。