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初のプライベートブランド開発 協業で困難乗り越え、クラダシ

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フードロスをビジネスで解決

食品ECサイトの運営企業が開発した、初のプライベートブランド商品が注目を集めている。クラダシが1月24日に本格販売を開始した「つくってKuradashi」は、規格外や箱潰れなどで廃棄される可能性がある食材を使った食品ブランド。取締役執行役員CHROの徳山耕平氏は「本事業を成立させることで、フードロスなど社会課題の解決をビジネスで実現していきたい」と意気込みを語った。

2023年11月30日から発売前日まで実施した予約販売では、受注生産で120セットを販売。当初の通常販売分は限定200セットの予定だったが、反響を受けて280セットに増産した。


写真 人物集合 ABCスタイルの関係者
「つくってKuradashi」開発に携わったクラダシとABCスタイルの関係者

クラダシが運営するECサイト「Kuradashi」はフードロス削減を目指し、パッケージの汚れやシーズン終了などの理由で廃棄される商品を一般販売している。購入金額の一部は環境保護や災害支援など社会貢献で使用。主な取引企業は食品メーカーで、これまで約1500社が出品している。会員数は50万人以上で、主要な客層は40~50代の女性となっている。

業務用食材のほか、農作物や漁獲物などECサイトで販売できない食材のフードロス削減が課題となっていた。そこで同社は食材を調理加工し、自社ブランドとして販売することを検討。東京都の「フードテックを活用した食品ロス削減推進事業」に採択されたことで本格的にスタートした。


写真 商品・製品 Cサイトや常設店で販売する「3種の冷凍スープ」
ECサイトや常設店で販売する「3種の冷凍スープ」。

同事業の第1弾として、廃棄される魚、野菜、調味料などを使った「3種の冷凍スープ」を開発した。メインターゲットはクラダシ会員で、開発過程ではコア会員を対象にしたオンラインミーティングによるヒアリングや試食会を実施。レシピ開発は、食関連の人材派遣や商品開発支援などを行う人材総合サービス会社「ABC スタイル」(東京都千代田区)が担当した。

徳山氏は「初のブランド開発で、大変さもあった」と振り返る。反響を確認するための予約販売では具体的な販売数を確定できず、長期保存できない食材をそろえることが難しかったという。フードロス食材を加工する工場の選定も難航した。

こうした中、ABCスタイルの紹介で、弁当工場を運営する「Tokyo Bento Labo」(東京都江戸川区)が参画。同社はフードロス対策弁当なども販売しており、冷凍弁当や冷凍総菜の加工技術を持っていることが決め手となった。


写真 風景 低利用魚「コノシロ」の加工
低利用魚「コノシロ」の加工。ペースト状にすり潰して食べやすくしている

Tokyo Bento Laboの紹介で、江戸前魚介類の販売を手掛ける海光物産(千葉県船橋市)も参画した。同社は食材で使用されることが少ない低利用魚「コノシロ」をスープの材料として提供。幼魚はコハダなどの寿司ネタで利用されるが、成魚になると小骨が多く食べにくくなるため「逆出世魚」とも呼ばれる。

ABCスタイルはレシピ開発において、食材に適さないコノシロを使って栄養と味を両立する工夫を凝らした。ペースト状にすり潰してボール状に加工することで食べやすくしたほか、青臭さはスパイスで打ち消した。

価格は9食セット(3種×3パック)で4980円(送料込み)。ECサイトだけでなく、昨年5月にオープンした初の常設店「たまプラーザ テラス店」(神奈川県横浜市)でも販売している。ECサイトではセット販売のみだが、店舗では1パック(税込553円)からの購入も可能。初の自社ブランド商品としてPRも力を入れ、商品開発の背景を伝える特設ページを開設した。

同社のECサイトは訪れるたびにラインナップが変わるため、ユーザーからは「楽しい」と評価されている一方、ブランドの顔となる商品が存在しないという課題もあった。徳山氏は「当社の定番商品となるプライベートブランドを作りたい」と期待感を示した。今後はプライベートブランドを軸にしたPR戦略も取り入れる考え。ABCスタイルの田丸玲奈社長は「フードロス削減を今まで以上に意識し、世界中の食卓を明るくしていきたい」と話した。

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