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エノテカのオートクチュール接客とは? ワイン購入がラフになった時代の戦略

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販売・接客の現場で活躍する、キーパーソンに迫る本企画。今回は、エノテカが2023年10月、ショップ全店のスタッフを対象に開催した社内接客コンテスト「エノテカ・グッドサービス・コンテスト」で優勝し、見事「グラン・コンシェルジュ」の称号を手にした山﨑泰樹氏が登場。「今年に入るまで、接客に全く自信が持てなかった」と語る山﨑氏が飛躍を遂げた理由は一体何だったのか。同氏が心がける“オートクチュール接客”の実像に迫った。
※本記事は、月刊『販促会議』1月号に掲載されています。

今月のキーパーソン

写真 人物 山﨑泰樹氏

エノテカ
ワインショップ・エノテカ
丸の内店
山﨑泰樹氏

大学ではフランス料理とワインのマリアージュの歴史について研究。フランスのブルゴーニュに留学に行って以来、ワインに恋をしました。お客さま一人ひとりに寄り添った接客を目指しています。

実体験が一番の自信に 安心感を与える接客を

──コンテストでの優勝、おめでとうございます!まずは山﨑さんのご経歴を教えてください。

ワインとの出会いは、大学時代に遡ります。フランス語を専攻する中で、ワインや食に触れる機会がとても多くありました。在学中には、ワインの銘醸地であるフランスのブルゴーニュ地方で2ヶ月間の短期留学も経験。そこで飲んだワインに魅了されたことが、ワイン業界を目指すきっかけになりました。

──今回、「グラン・コンシェルジュ」に選ばれた理由を、ご自身ではどのように分析されていますか。

丸の内店で勤務していながら、同コンテストで2位を受賞した店長からは「どの競技者よりも自信があってイキイキとしていたよ」と言葉をかけてもらいました。

やはり、接客する時には私自身に自信がないとお客さまの方が不安になってしまいます。その“自信”こそが評価された点だと思っています。


写真 風景 コンテスト当日の様子
コンテスト当日の様子。丸の内店には過去、決勝まで残ったスタッフが2人いると山﨑氏。格が違う接客を目の当たりにしたことで、大会への挑戦を決めたと話す。

実を言うと、今年の初めまでは、自分の接客に全く自信が持てなかったんです。そんな中、接客に自信を持てたきっかけは、知識をしっかりと身につけて接客する大切さに気づいたことでした。そうすることで、自分の言葉に自信が持てますし、その自信はお客さまにも伝わるような気がします。

実際、今年に入ってからは毎月70種類ぐらいのワインをテイスティングしてきました。自分で体験したことを、自分なりの言葉に整理し、お客さまにわかりやすく伝えてアウトプットする。直接口にするワインに関しては、“実体験”こそが一番の自信につながりますし、接客への信頼度にも関わってくると感じますね。

「ワインとは関係ない話題でもお客さまのニーズは聞き出せる」

──実際の接客の流れと、お客さまと対話する上で心がけている点について教えてください。

当店の特性上、ギフト需要や法人利用など、様々な目的のお客さまがいらっしゃいます。

週末になると、周遊客の方がご自宅用に買われることも多いですね。

例えば「ワインに詳しくはないけど好き」という方には、お客さまに合わせて言葉選びを考えています。

同じワインを説明する時でも、言葉を噛み砕いて“味わい”について説明するのか、それとも“生産者や歴史”について説明した方がいいのかは人それぞれです。その点は十分に意識しています。

普段から好みが明確なお客さまには、自分が飲んだ経験を元に味わいをおすすめし、既に品種の特性や味わいは知っているお客さまには生産者の歴史や受賞歴などを説明しています。

また、「ワインはわからないけれど、詳しい人にプレゼントしたい」という場合もあります。そういった方には、味わいや歴史の話をしても伝わりにくいため、ワイン以外の会話で贈答相手の好みを聞くことにしていますね。

例えば、普段コーヒーを好む方か、紅茶を好む方なのか。私の経験上、コーヒーを好む方は渋みがあるしっかりとしたワインが好きな場合が多く、一方、紅茶が好きな方は、香りが華やかなものを好みます。このように、ワインとは関係のないような話題から始めても、お客さまのニーズや好みを聞き出すことはできるのです。

接客は紹介ではなく会話 ”オートクチュール”な対応

──接客する上で、お客さまに自分の印象を残すために心がけていることはありますか。

いつも心がけているのは、オーダーメイド・オリジナルを意味する「オートクチュール接客」です。お客さま一人ひとりのニーズはそれぞれ違うため、ワインの紹介よりも「どんなワインがほしいのか」「どんな場面で飲みたいのか」といったイメージをしっかり聞き出すことを意識しています。

接客の際に大事なのは、やはり会話だと思います。お客さまのニーズを聞き出す際に質疑応答になってしまってはつまらないですよね。時には雑談も交えながら話すことで、普段はあまり聞き出せない深いニーズまで話してくださるお客さまが出てくると思いますよ。

──ECでのワイン購入も容易になる中で、店舗での接客はどのような意味を持つと思いますか。

自宅で過ごす時間が増えたコロナ禍を経て、ECやスーパーマーケットでのワインのラインナップが格段によくなりました。いつでも質のよいワインが買えるようになった今、エノテカのようなワインショップの価値は「会話をしながら購入できる」こと。

たとえワインに詳しくなくても、食生活や好みなど、専門店だからこその角度で好みを探り、提案できる可能性があります。それこそが、わざわざエノテカまで来てワインを買っていただく意義だと思いますね。


画像説明文
山﨑氏が不在中の来店者の中には「山﨑さんがいないならまた今度」ということも。「そういった瞬間は、接客を通じたお客さまからの信頼を感じます」と山﨑氏。

──今後の意気込みを教えてください。

お客さまがわざわざ当店まで来店する意味を考えると、やはり接客は最も向上すべきスキルだと感じます。

その接客力の根源には、やはり前述のオートクチュール接客があると思うのです。一人ひとりのお客さまの好みを、様々な角度から把握し、次のご来店時には「前回飲んだワインはいかがでしたか?」と聞くなど、一度買っていただいたワインを次回の提案の軸に据える。

お客さまやその好みをしっかりと記憶して「オートクチュール接客」を重ねることが、今後はさらに必要になっていくと思います。

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