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共働きママは朝食メニューを固定化する。思考をアウトソーシングする「考えない戦略」とは?

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いまや17 歳以下の子どもがいる世帯における共働き率は74.2%に上るなど、家族をとりまく環境は大きく変化しています。マーケティングにおいても、変化し続ける家族のインサイトを捉えることが求められています。イマドキの共働き家族は、どのような悩みを抱え、どのような考えで日々の生活や子育てに臨んでいるのか?ジェイアール東日本企画 イマドキファミリー研究所の約8 年にわたる調査データから、その実態の一部をご紹介します。(本記事は、2月27日に発売した新刊『進化するイマドキ家族のニーズをつかむ 共働き・共育て家族マーケティング』から一部を抜粋して転載しています)

 

「朝ごはんはとにかく手軽に」が共働きママの傾向

イマドキの共働き家族は具体的にどのような食事をしているのでしょうか。当研究所は、2018年に朝食・夕食の 日間の写真日記調査を実施し、イマドキ家族の食卓と、そこから見える家事や育児に対するインサイトを探りました。

この調査では、共働きママグループと専業主婦ママグループでそれぞれオンライン上のコミュニティをつくり、食卓写真とともに、つくった際の気持ちや家族の様子について、日記形式で投稿を依頼。集まった共働きママ207件、専業主婦ママ266件の写真データを分析しています。

「イマドキ家族の食事に関する共同研究(朝食・夕食の9日間の写真日記調査)」(2018年度)より ※誌面図版より一部抜粋

 

共働きママの写真データからは、簡単な朝食と品数の増える夕食とのギャップが多く見られました。パンとヨーグルトを朝食に出していた女性からは、「調理時間0分。夫は物足りないようで、パン3本食べていました」との解説コメントがついていました。このコメントからもわかる通り、共働きママから簡便な食卓について罪悪感を持つ様子はまったくと言っていいほど見られません。

続いて、共働きママと専業主婦ママそれぞれのコメントから見えた傾向を紹介します。

共働きママ
・食事の支度を簡単に済ませたことへの罪悪感はない
・「子どもが『食べたい』と言ったバナナを昨日あげるのを忘れたので」「鯵を消費しなければならなかったので」など、タスクをこなすような意見が目立った


専業主婦ママ
・簡単な食卓の日について「自分が早く起きられなかったために」「今日はラクをさせてもらいました」等、何かしら理由をつける人が多かった
・「夫の血圧が高いので」「夫が太り気味なので」等、食事の内容について夫に関する言及があるのも特徴(共働きママからは、夫への言及は見られなかった)

専業主婦ママの中には、夫の健康管理まで「自分の仕事」と捉えている人が一定数いるようでした。しかし、共働きママからは、「夫の健康管理を自分がする」意識は見られませんでした。

 

スムーズな日常のために 朝食のメニューは「考えない」

朝は簡単に済ませる傾向の共働きママに見られた特徴の一つが「パターン化」です。専業主婦ママが「脱マンネリ」を目指す傾向にあるのに対し、共働きママの写真日記調査では、「9日間毎日パンとソーセージとレタスサラダ」「ご飯・みそ汁・納豆に毎日のようにシリアル食品を添える」様子が確認できました。また、「朝食は毎日同じメニュー」というコメントも目立ちました。パターン化することによって、毎日メニューを考えることを省略していると推察できます。

また、写真日記調査で、「ほかの人のメニューを見て取り入れたいと思ったこと」を聞いたところ、専業主婦ママは「ランチョンマットを使う」「おにぎりに使う海苔の飾り切り」など、やや頭を使う作業や見た目の工夫について言及していました。

一方、共働きママは「肉まんを朝食に出せば、炭水化物とタンパク質が一度に取れそう」「野菜が出せないときは果物で代用する」など、考えずにすぐに実行できるメニューに支持が集まっていました。

 

共働きママは「前日まで」にメニューを決める

夕食実態調査によると、「平日の夕食メニューの決定タイミング」の結果も共働きママと専業主婦ママでは異なりました。 専業主婦ママは「当日の日中」が最も多く、35.2%。共働きママは「当日の夕方」が26.8%である一方、前日の夜までに4割強がメニューを決定しています。忙しい当日の夕方に「考えること自体を省略する」行動を取っているのだと推測できます。

 

「考えない」は商品開発やコンセプト訴求の肝

朝食のメニューを固定化する、夕食メニューを当日ではなく事前に決めておくなど、共働きママがあえて「考えない」ようにしているのはなぜでしょうか。家事・育児・仕事などで、脳内メモリが限界を超えそうになっているからです。

現代社会において、情報は取得しようと思えばいくらでも入ってきます。食事のメニューを考える、子どもの保育園の支度をする、宿題を見守るなど最低限こなさなければいけないタスクに加え、予防接種の予約、図工の持ち物準備、次の家族旅行の宿泊先検討など、イレギュラーなタスクも続々と増えていきます。

イマドキの共働き世帯は夫が家事や育児に積極的に関わっているとはいえ、育児に関する日々の情報を入手・整理し、考えて判断するという「隠れた家事」は、妻が中心となっていることがほとんどのようです。そのため、重要なことを考える余力を残せるように日々こなす家事については「考えない戦略」を取っているのです。

(続きは、本書にてご覧ください)

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写真 表紙 『進化するイマドキ家族のニーズをつかむ 共働き・共育て家族マーケティング』

『進化するイマドキ家族のニーズをつかむ 共働き・共育て家族マーケティング』(ジェイアール東日本企画 イマドキファミリー研究所著)/定価2,090円(本体1,900円+税)

家族をとりまく社会環境が大きな変貌を遂げ、従来の昭和型の家族イメージではもはや新しい家族像を捉えられなくなっている。豊富な調査データから「30代子育て家族」のインサイトを読み解き、プランニングのヒントを提案。子育て家族にモノを売りたいマーケターのための一冊。